今回の2本はとても感動してどちらも観てよかったと思ったもの。
その1 神々と男たち
公式サイト http://www.ofgods-and-men.jp/
1996年にアルジェリアで起こった実際の事件の映画化。
僻地のイスラム教徒の村に平和に共存していた
清貧に生きる修道士たちに
テロリストたちの無差別の暴力がふりかかる。
撤退するべきなのか、村人たちを見捨てずに
とどまるべきなのか。
貧しい村に、診療所を開き、自給自足しながら地域の一員として
築いてきた信仰を超えた信頼。
彼らは悩み苦しみ、話し合い、神と対話する。
幾つかの覚書を。
まず、この映画には典礼の聖歌以外の映画音楽が一切ない。
たった一回だけクラシックの曲が流れる。
チャイコフスキーの『白鳥の湖』から「情景」。
今まで何回聴いたかわからないこのメロディーが
これほど扇情的に美しく聞こえたのは
初めてだった。
修道士たちの「白鳥の歌」を象徴しているように思えたから。
存在と愛と神について語るとき
フランス語はとても力強く美しい響きを持つものだと
感じ入った。
村の少女に「恋」についてたずねられた医師でもある
ひとりの修道士のあたたかみのある返答が
心に残る。
マイケル・ロンズデールの存在感と出色の演技。
修道士たちのリーダーは、コーランを学び彼らの神のことばを
書き留める。
真の理解と寛容は、相手を知ろうとすることにはじまる。
テロリストたちに押し入られたとき、彼はコーランの言葉を
返す。
「あなたがたの神の声をきけ!」という心の中の叫びとともに。
ラストシーン近く
テロリストたちに拉致された彼らは吹雪の山岳地帯の
険しい道を必死で進む。
鞭と嘲笑の代わりに酷寒の中を一歩ずつ
ゴルゴダの丘を目指す神の子と同じように。
ぽつりと4行の字句が暗い画面に浮かんで終わる。
押し寄せる想いと涙でしばし席を立てなかった。
その2 イヴ・サンローラン
公式サイト http://www.ysl-movie.com/
Y S L
歴史に燦然と輝くファッション・アイコン。
モードについては女性でありながら恥ずかしくも最も疎い世界。
それでも彼が創造したデザインの数々が不滅に輝くものだと
いうことがストレートに理解できる一本。
回想のシーンで流れるシンプルでかなしく美しいピアノのメロディーが
今、頭から離れない。
公私にわたるパートナーだったピエール・ベルジェが
イヴ・サンローランの追悼ミサで弔辞を読むところから
映画は始まる。
彼の人生は、若くして成功ののち
日々創造の苦しみと一瞬の栄光と称賛の喜び
あるときは失意のどん底。そして、連綿とした華やかな孤独。
素晴らしい才能とは、支える人あっての開花だということがベルジェの
インタビューからうかがえる。
ひとつひとつ選んでイヴについて語る言葉が、すべて誠実さに満ちていて
愛とか絆という言葉も陳腐に聞こえるような、魂同士の結びつきに
人は羨望をおぼえるかもしれない。
深くかなしみの淵に沈み、自分に引きこもる天才に寄り添い
苦楽・・・苦を分け合うことに大きく時をさかれたが
それを全うした人の誇り高く、静かなベルジェの表情に心打たれる。
モードは、単なる服飾デザインというより芸術なのだと
つくづく思った。
野外スタジアムの中心に描かれた『 Y S L 』のロゴから、
ラベルのボレロに合わせて
素晴らしい服に身を包んだモデルたちが
フィールドに散る場面には鳥肌が立った。
ベルジェはサンローランの没後、ともに集めた美術品のコレクションを
クリスティーズで競売にかけ
全ての落ち着き先を見届ける。
最愛の人との思い出の行く末を見届ければ
これで彼の後を追うことができるとでも言いたげに。
美を創造する人は
やはり美へのすごい見識と執着があるものだと
集めた美術品の数々にため息が出た。
初めて知ったが、遺言によってサンローランの遺灰は
愛したモロッコ・マラケシュの別荘にまかれ
シンプルな墓標には「クチュリエ」とだけ刻まれている。
ベルジェが、自分と出会わなければ彼は別の仕事を
したはずだと断言していた。
ジジ・ジャンメールが有名なピンクの豪華なオストリッチを
着て、ドライアイスの中をにこやかにパド・ブレしている
ワンシーンがあった。
イヴ・サンローランのサインとジジ、ローラン・プティのために
とデザイン画の下に書き込みがあって
プティの舞台のための衣装もたくさん手がけたから
もしメゾンを持たなかったら舞台衣装の世界でも
間違いなく傑出した偉業を成し遂げたであろう人と思った。
おまけ
映画館の前で茫然。
草刈民代さん主演「ダンシング・チャップリン」
満員札止めで出直しに・・・。
大ヒットおめでとうございます。

