翌日、奈央は、“開かずの階”という人気のない四階の室井ホーム長がいる階に向かった。

室井は、デスクトップのパソコンに向かいあい、両手を後頭部に当て考え事をしてるようだった。

「ホーム長。」と声をかけた。

「...。」返事かない。

奈央はもう一度、声をかけた。

すると慌てて手を下ろし横にいた奈央を見た。

室井の目は三重にも4重にもなっててどうやら眠っていたらしい。

奈央は「すいません。あの...ちょっと津村さんのことでお話ししたいんですけども。」

「あぁ。ちょっと吉田さんから聞いてるけど。」と、あの事か。などと言う口調で話した。

奈央は「私が入った時から入居者さんに対する口調がきついし、最近私にもきつい口調です。」と、自分にもスタッフにも汚い言葉を発していることを伝えた。

室井は、顔を歪め「津村さんはベテランだしね。正しいことをしてるからね。きっちり仕事をしてくれてるし。」


「じゃあ入居者さんにも私と同じ口調で、怒鳴ったり、ヒステリックにケンカしてるのもいいんですか?」

「でも、やはり、たきさんも大変な人だしね。怒られてもしょうがないことをしてるしね。いちがいに津村を責められないよ。」

奈央は呆れた。なんで、こんな人がホーム長なんだろうと。やはりみんなの言う通り当てに出来ない人だと改めて悟った。すっきりしないモヤモヤな気持ちを残したまま
奈央は四階を後にした。


それからしばらくして、本社にいる青田裕子という、管理職の女性が奈央のホームに現れた。青田は他のホームでホーム長をしていたことがあるが、ホーム拡大のため、今はホーム長の座を降りて、本社のヘルプの仕事をしている。

青田はもう50才の中肉中背の女性で、わりにさっぱりした性格のようで、ホーム長の室井のことも、「室井」と呼び、親しげに話しをしたりしている。

室井がホーム長になったのは青田の後押しがあってのことらしい。青田は何しろ人を育てて、ホームなどの重要なポストに就かせているらしい。

会社のあるプロジェクトのため、部下である、室井に何やら話しをしにきている。

奈央も高田から、「どう頑張ってる?」と爽やかに声をかけらて悪い気はしなかった。ただ引っ掛かるのは室井や津村やリーダーたちの部下?というか、可愛がっていたことを山田から聞いていたのでうかつに相談できないことは、頭の片隅にはあった。奈央は何度か高田から津村たちのことについて相談してほしいと言われたことが、あったが、本音などは絶対に話せなかった。