今までにも、噂で嫌な思いをしたことがあったけど。
こんな年になって、こんなところで、こんな思いをすることになるなんて思ってなかった。
伝えれば大丈夫だと、言えば気持ちもわかるだろうと、彼らを信頼してた。
今までも一緒にやってきた仲間だし、口が軽い先輩もいたけど引退したし、
その彼らに伝わりさえしなければ、今の代はまだ大丈夫だと、そう信じてた。
のに。
その事実からは、何も気にすることはないと思えるかもしれない。
ただその事実があるだけ。
いつもいるはずの場所にいなかったら、どうしていないの?と聴かれてしまうこともあるでしょう。
だからその人も何気なく言ってしまったのかもしれない。
でも、だからこそ「みんなにOBに聴かれても絶対に言わないように伝えてください」と言った。
一つ上からの代は信用ならない人が大勢いる。嫌いな人も少なからずいる。
彼らに噂話を投入すれば、驚くほど早く近隣で練習している大学にまで広めてくれる。
だから伝えたくないし、
どこかというのもほとんど知ってる人はいないのに、
彼らより少しは信用してた部員にも伝えていないのに、
彼らに伝えるつもりはない。義務もない。
でも、その事実を知ったら、どこ?なんで?と根掘り葉掘り聴いてくるだろう。
だから、その事実さえをも隠しておきたかった。
私は2・26に入院し、手術を受けた。
そのため部活もバイトもとりあえず一ヶ月休みをとった。
比較的簡単な手術だった。
でも、私には未体験のことで、恐怖と不安で、この言葉を口にするたび憂鬱になった。
このことで何も考えたくはなかったし、今でも思い出そうとしたくもない。
私にとってそれは、
「私の感情も決意も時間も、何もかも無視して、
ただやってきて、
ただ来る事実に翻弄されて、
気持ち悪さや苦痛に耐えているうちに、
勝手に過ぎ去って行った事実」
でしかなかった。
今でも、その現実をこれっぽっちも受け止められてはいないんだ。
「ゆっくりして、健康とか身の回りとかを見直す時間を与えられたんだよ」
「早期発見だったから、異常が出る前だったから、それだけでも幸運なんだ」
「おなじ手術でももっと苦しい思いをした人はいっぱいいるんだから」
言っていることはわかります。
その事実に対して共感できます。
まだ幸せなことが私には数多く与えられているんだと。
でもそれは、私が今感じている憂鬱感や息苦しさとは結びつかないの。
なんで息苦しいのか、それは自分でもわからない。
でも、悲劇のヒロインぶってるんじゃないかって言われるのが怖くて口になんか出せない。
もう退院して二週間以上経つのに、まだひきずってるのと言われるのが怖い。
私は非難されるのが怖くて、まだ無意識に逃げ腰になってる。
私は、なぜか、本当になぜだかわからないケド、受け止められていない。
だから「手術」という単語に、恐怖や不安や、痛み止めの気持ち悪さや、
立ち上がるときの痛さや、寝返りや風呂も一人でできなかった日々の記憶、
全てが一気にやってくるような、そんな威圧感を感じて、
無意識に心が縮こまってる。
そんな単語を他人に出されるのは嫌だし、ましてや信用してない人に話題にされるのもってのほかだ。
だから部活で、OBが知っていたと聴いた時は、本当に驚いた。
悔しさと情けなさと怒りと悲しさがあふれてきて、自然に涙が出てきた。
私が言わないでって言うのが甘かったのかな?
直接みんなに一人一人言わなきゃだめだったかな?
男子は部長に言わないように伝えてとちゃんと言ったのに。言うの忘れたのかな?
ちゃんとわたしから一人一人絶対言わないでって送らなきゃだめだった?
女子は、例え部長が彼女らに伝え忘れても、
どこだったのかも知ってるから、そんな場所を知っていて誰かに伝えるなんて、
たとえ場所を言わなくたって嫌だってわかるよね?
本人じゃないとわからなかったかな?
そう思った私が甘かったかな?
誰が言ったの?
外部?
知ってるのは三人だけ。
たしか一人には口止めして、もう一人はぬかったけど、その人から伝わった一人に、
広めたくないから聴いた人やほかの人にも口止めするよう頼んだ。
なんで広まったんだろう。さっぱりわからない。
しかもそのOBが彼にその話題を振ってきたってことは、口止めさえもされてないわけで。
今、どれだけのOBが知ってるんだろう。
誰が知っていて、次は誰が知るのか。
そう思うだけで嫌になる。
とにかく、明日が勝負だ。
まず、マネからもれたのか、漕手からなのかをはっきりさせよう。
そして、もしマネならこれ以上広げないように呼びかけるだけにとどめよう。
一人にだけはちゃんと言ってなかったから、もしマネなら彼女だとおもうんだよね。
漕手なら、部長にちゃんと伝えたのかまず聞いて、伝えてなければ部長を怒って、
伝えてたらみんなの前で怒ろう。
そして、言ってしまった人に口止めして、
どれだけの人に言いふらしたのか、ちゃんと問いただしてもらおうじゃないか。
そしたら彼らがいかに口が軽いかわかるでしょう。
今ちゃんと対処しなくちゃ。
そうでなきゃ、また同じように口止めしなきゃならない時、
同じことを繰り返す。
真実はわからない。
でも少なくとも、広まったという事実は、
誰かの心無い一言で、
それが例え故意でなくても、
私を傷つけたことに変わりはないんだ。