円形競技場
教壇を中心にぐるりと階段状の椅子と机が配置されたその教室は、古代ローマの円形競技場を思わせる。文字通り、そこでは学生どおしの議論の戦いが繰り広げられるのだ。
それは日本の大学とは全く異なった授業風景で、教授はテーマを提示し、次々と学生を指名しては発言させ、他の学生に反論させ、議論の方向を誘導していく。著名な学者でもあるが自前の理論を講義することはなく、そんなのはあらかじめ自分で調べて来い、という暗黙の了解があった。
CCMOのクラスもCorporate Marketingのクラスも、ディスカッションの内容が異なるだけで、大量のケーススタディと「円形競技場」は全く同じだった。学生の発言も常にヒートアップ状態だった。(おいこら、人の話は最後まで聞け)などと躊躇する僕の心境など全く察する気配も無く、ひとりの発言の途中からクラスの半数ぐらいが手を挙げ始める。発言が成績の50%にカウントされるというこのビジネススクールでは、試験でいくら高い得点を出しても、クラスで黙っていては落第してしまう。
Art of Class Participation、つまり「クラス参加(=発言)の奥義」などという理論を展開している級友もいて、どの教授の場合にはどこの席に座るのがいいのか、彼の自前の理論は何で、どんな話題だと興味を示すか、禁句は何か、などについて、先輩からのヒアリングをもとに、教授ごとに詳細なデータを収集したりしていた。