車が無い!
ツアーから戻ってきたばかりの僕を、不運が待っていた。僕の車が、ニューヨークのガソリンスタンドに置きざりにされているという事実だった。
冬休みが始まる前、僕はある友人から「車を貸してくれ」と頼まれ、引き受けたのだ。彼は、実家が同じニューヨーク方面のクラスメート数人と一緒に車で帰省し、飛行機代を浮かせようと計画していた。ところがニューヨーク到着後にガソリンスタンドで給油をした際、店員にシャーシーのサビを指摘され、「この状態でハイウェイを運転したら空中分解する」と言われてそのまま置いてきたそうだ。
冗談じゃない、必死でアルバイトをして貯めた金でやっと買った150ドルの車だ。せめて40ドルもした新品のバッテリーだけでも持ち帰って欲しかった。彼は責任を感じたのか、「お詫び」として僕に40ドルを差し出した。少し気が引けたが、妥当な額だろうと、僕は受け取った。
ところが、彼と一緒にニューヨークに帰省した女学生たちからは、ごうごうの非難を浴びた。
「彼からお金を受け取るなんて何と言う神経をしているの? 私たちはあなたのボロ車のせいで、帰路は止む無く飛行機よ。もう財布はスッカラカン。こちらが損害賠償を請求したいぐらいだわ!」
というのが彼女たちの理論だったが、ボロ車かどうかは余計なお世話だ。借りたいと言ったのはそっちだし、それで帰省するのは自己責任だろう。こちらは友人の頼みをきいたばかりに大切な車が無くなった。キャンパスで静かに乗っていれば、まだまだ使えたはずだ。