感想を書くのがむずかしい作品でした。女友達の万引き癖を知ったあと、美術館で盗んだ彫刻を「あげるから、もう泥棒はやめな」と渡したとき、もう乾は井戸から出ることをあきらめたのだと感じました。
こいつらみんな東京に行くのか。いいなあ。「ああオレも太陽が見てえ」…不愉快な本の続編は、不愉快というよりはやるせないものでした。
読了日:2月29日 著者:絲山秋子
軽めの文体ですが、読み進めるうちに味わいや奥深さが出てきて、心地良い作品でした。大往生で人が逝くと、お葬式も納骨も涙より生き抜いた爽やかさの方が勝るのかもしれません。わたし自身は、事故や病気での別ればかりでただただ悲しいだけでしたが。
そういう死は別にして、ひきこもりや介護、家族の関係などは、思いつめたり深刻になったりするよりも、「そういうのもありかも」とおっとり受け入れてもいいのかもしれません。世間の常識に合わせるのではなく、家族が生きやすいように生きるー、なるほどです。ただ、( )の多い文体は読みづらい…。
読了日:2月25日 著者:長嶋有
誰かを憎んだり拒んだりして生きていくのはつらいものです。弱く見えても、はがゆくても、相手の気持ちをくみ取って受け入れて生きる方が自分も生きやすいと、7編の登場人物たちが語っているようでした。
「片葉の葦」「胸突坂」の意地っ張りな女たちが見せるやさしさ。こういう友情もいいかもしれません。
北原亜以子の作品を読むと、木戸番小屋のお捨さんに会いたくなります。
読了日:2月22日 著者:北原亞以子
複雑な読後感です。ぐいぐい読ませるおもしろさはありましたが、一人の少年の死がこんなふうに扱われていいのか、人が死ぬということの重さがもっと描かれてもいいのではないかと思いながら本を閉じました。残された家族の悲しみはもちろんですが、失われた未来に対する思いが誰かの言葉を借りて語られてもよかったのではと。
でも、加害者家族の我が子を守りたいという気持ち、苛められていた子に何も問題がなかったわけではないという同級生たちの言い分など、きれいごとだけではない部分からも目をそらさずに、ということでしょうか。
読了日:2月17日 著者:奥田英朗
見開きのから思い出したのは「だれも知らない小さな国」そして「エルマーのぼうけん」。こういう手書きの地図は、そこがとてもすてきなところに思えてしまいます。物語は、葦の繁った湖を小さなボートが音もなく進むように、静かに始まります。少しだけ心配になる場面もありますが、鳥の巣穴や地中の家に住み、家族と仲良く暮らす小さな人たちは、賢くて穏やかで、会話はまるで詩や哲学のようです。
こんな素晴らしい世界を誰もが心の中にもっていて忘れないようにしていれば、大きな人たちも暮らしやすいのに。コロボックルもムーミンもヤービたちも
読了日:2月13日 著者:梨木香歩
同じ夢を見ているはずの、しかもたくさんの場数を踏んできたはずの男たちに亀裂が生じ始めたとき、当然なことだが、プロスポーツにはスポーツ以外のものもいろいろと絡まっているのだと、改めてその厳しさを感じました。それでも、自分の納得のできる「いつか」を求めて挑み続け、一瞬に倒れて…。
生きていくということは、勝者になるよりも敗者になることの方が多いのだけど、その寂しさを受け入れてまた歩き出すのは勇気のいることです。 「ハッピーエンド、かな。」 「そうだと… いいけど。」 そうだといいけど、答えはわかりません。
読了日:2月11日 著者:
平成25年32刷の文庫本。表紙がちがいますが、出版社は同じ。 新聞小説をきっかけにこの作家が好きになり、「ボクシング」という今まで全く知らなかった世界におもしろさを感じて読みました。
深夜特急の旅から帰国して、また次に賭けるものを求めたルポライターの、夢を追う喜びと苦悩が伝わってきます。
新聞小説の「春に散る」というタイトルもなんだか寂しい結末を予測してしまうのですが、「一瞬の夏」というタイトルが、夢を追う男たちの、夢の終わりを感じさせて、先へ進むのが不安 です。
沢木 耕太郎
写真を中心とした旅の本かと思っていたのですが、文章(作者の思い)がぎっしりと濃く詰まった本でした。
島の自然の美しさ、暮らしの奥深さだけでなく、過疎や観光化などの課題についても書かれてあって、「あゝ、そうだよな。」と考えさせられると場面もたくさんありました。
便利になることがそれほど大切で幸せなことなのか、右肩はどこまで上がれば満足できるのかー。もちろん、必要なものもたくさんあるけど、人は自然に育まれ、人や動物たちと共に生きてきたことを忘れてはいけないと、改めて教えられます。
読了日:2月5日 著者:斎藤潤





















