魔人様から頂いたコメント案を密かに参考にさせていただきましたー!!
*****
トワ エ モア ♡4♡
蓮と付き合い始めて愛し愛されることを知ったキョーコは、その可愛さに仄かな色気まで加わり始め、花開き始めた。
問題のドラマの撮影ではアドリブの恋愛アドバイスも大好評で、京子の演技は大絶賛されることになり、それがキッカケでまた京子へのオファーが、次々と舞い込み始めた。
京子の恋愛講座という雑誌の特集コーナーまで組まれたほどだ。
その後オファーが来たドラマでも女性ということもあり恋愛ものが大半で、主役ではないものの大学で知り合った6人の男女が織りなす恋愛ドラマで、メインレギュラーに抜擢された。
ドラマとはいえ、男とベタベタすることになるのを蓮は面白く思ってなくて、キョーコのそのドラマの撮影が始まってからというもの、蓮は時折イライラと機嫌の悪さを表していた。
「お、おい!蓮、顔、顔っ!!」
「なんですか?」
「なんですか?じゃない!!現場の空気が悪くなるだろ?!」
社の指摘にハッとして周りを見回すと己を気遣わしげに見るスタッフや共演者がいて、蓮はグッと唇を噛み締めると、雰囲気を変えた。
「ったく。心配なのはわかるけどさ…」
実は蓮はキョーコと甘い雰囲気を作り出しておきながらもまだ一度も肌を重ねていない。
だからと言ってチャンスがなかったというわけでもなかった。
キョーコは何度も泊りに来ていたし、ホテルを取って二人でスウィートに泊まったことだってある。
しかし、どうしても一歩が踏み出せず、二の足を踏んでしまうのだ。
原因ははっきりしている。初めてベッドにキスをしながらキョーコを押し倒した日、服の中に手を忍ばせた蓮をキョーコが力一杯突き飛ばしたのだ。
『あ…ごめ…なさ…』
真っ赤な顔で狼狽えているキョーコを見て、拒絶されたと思った蓮は内心のショックと動揺を笑顔で隠して、キョーコに再び近付くと怖がらせないように優しく髪に触れた。
『俺こそ、突然ごめん。ビックリ…させちゃったよね?』
赤い顔でコクンと頷くキョーコにそれ以上ことを進めることは出来なくて、蓮はその日はキョーコを抱き締めて眠るだけにとどめたのだった。
それから雰囲気を作っては手を出そうとしたのだが、突き飛ばされた感覚を思い出してしまい、いつも躊躇ってしまって結局は腕枕だけで終わってしまうのだ。
腕の中で幸せそうな寝顔を見せるキョーコが見れればそれでいいかと思い直して、蓮も自身の熱を持て余したまま、キョーコの隣で眠るのだった。
なので恋人ではあるのだが、実質としてはまだ全てを手に入れたわけではない。
だから恋人としての余裕もあるはずがなく、ラブシーンがあると聞くと軽いものでもどうしても許せない嫉妬の炎に妬かれてしまうのだ。
今日の撮影では初のキスシーンがあるのだとキョーコが言っていた。
相手の男がそれ以上の不埒の想いを持たないか心配で、蓮はいても立ってもいられない。
「蓮、出番だってさ!」
「社さん、今日の撮影ってこれが最後でしたっけ?」
「ん?あぁ、そうだぞ。このドラマの撮影が23時まで予定として入ってる。」
ちらりと時計を確認すれば、まだ19時だった。
「巻で…終わらせて見せます。」
「は?!」
キョーコが終わるのは21時半だと聞いている。
スタジオまで迎えに行こう。そしてキョーコを恋人役の目の前で攫ってやる。
蓮は密かな決意を胸に秘め、舞台へと足を踏み入れたのだった。
ーーザワリ
キョーコは不自然なざわめきに首を傾げた。
今はドラマの撮影中なので本番の間の僅かなスタンバイの時間だ。
スタジオの空気は本番特有の緊張感に包まれていて、不用意に音を立てる人もいない。
出演者同士の話し声も息を潜めて会話を交わしているのだ。
そしてざわめきの正体が明らかになったのは、長身の一人の男がスタジオの隅に現れたのをキョーコの瞳が捉えたからだ。
マネージャーの社も後から遅れて入ってきて蓮の隣に並ぶ。蓮は見学する気満々のようだ。
ビックリし過ぎてキョーコの目がまん丸になる。
すぐに撮影再開を迎えるため、男優の首に腕を回した状態で、男優には抱きしめられるような形で舞台の中央に立っていたキョーコは居た堪れなくなった。
強い剣呑な眼差しがキョーコに突き刺さる。
それにヒイッと青ざめそうになったところで、振り返って蓮の姿をみた男優がこっそり話しかけてきた。
「ね、あれ、敦賀蓮だよな?なんでこのドラマに見学に来てるんだ?」
「…ふ、不思議デスヨネ?」
「誰か知り合いでもいるのかな?ひょっとして柏木さん目当てだったりして!」
柏木と聞いてキョーコの肩がピクッと震えた。
このドラマのメインヒロインで色白小顔でどこか日本人離れしたハーフのような顔は人形のようだと評される。
可愛くて可憐で…キョーコが持っていないものを沢山持っている人物だった。
女である自分でさえも見惚れてしまう美貌。
蓮は自分の恋人だと思うのに、まだ恋人である自身のもてないキョーコはチラリと男の肩越しに蓮を見た。
バッチリと目が合い、キョーコの顔は朱に染まった。
「よーし!スタンバイ!」
すでに準備満タンなスタジオに監督の元気な声が響く。
「よーい、スターッ」
カチンコの音ともに、煌びやかなシーンが動き出す。
今から撮るのは正にこの目の前の男とのキスシーンだ。
大学のダンスサークルで知り合った6人の恋愛ドラマで、キョーコも腰まで丸見えの衣装に身を包んでいた。
曲に合わせてリズムを刻み、ワルツを踊る。
そうして問題のシーンがやってきた。曲の途中でキョーコがバランスを崩し、それを慌てて抱えた男が、そのままの勢いで口付けるのだ。
キョーコの演じる役も男優が演じる役に元々好意を寄せている設定のため、そのキスを受け入れ、二人はこの日から恋人同士になるというものだった。
カットの声が掛かるまでがどのくらいの長さだったかわからない。
でも早くカットをかけてー!!!!!とキョーコは念じたくなってしまった。
「カーット!」
カットを掛けた監督が少し唸る。カメラの映像を繰り返し確認して撮り直しを支持し始めた。
ーーー何処がいけないの?!
監督は何も指摘しないままもう一度と言う。
蓮が来るまでに既に3回撮り直しているのだ。
流石にこれは…と思いつつも、相手の男優はノリノリだった。
「もっと激しくやってみる?」
「え…?」
そうして短く言葉を発しただけですぐにまたスタートが掛かった。
今度は最初は優しく、そして一度唇を離して再度深く口付けられた。
それに応えるキョーコ。
今度は少し早目にカットが掛かった。
どうやら違うらしい。
そしてもう一度と促される。
撮り直すたび、蓮の機嫌がドンドン悪くなって行くのを感じてキョーコは監督に呪い魂を投げつけたくなってきた。
そしてまたスタートがかかり、今度はいきなり貪られるみたいにキスをされた。
暫くカメラを回してカットと声をかけた監督は、首を振った。
また撮り直しかと思ったところで、監督は信じられない言葉を発した。
「やっぱ最初の使うか…」
ーーーな?!
キョーコは憤慨した。
しかし、男優は残念と耳元で笑った。
「もっと京子ちゃんとキスしたかったな。」
「へ?!」
思わず赤くなったキョーコの背中をザラっとした手が滑る。
それに背筋がゾクっとするような悪寒が走ってキョーコは体を強張らせた。
今日の撮影はここまでだと指示が飛ぶと、皆が片付けに入り始めた。
だが目の前の男優はキョーコを抱き締めたまま甘い言葉を耳元に囁く。
「ねぇ、この後時間あるならーー」
しかし、最後まで言うことは出来なかった。
男優の肩がいきなり後ろから掴まれたからだ。
「うわっ、なにすんだよ?!」
慌てて後ろを振り向いて文句を言おうとした男優は固まった。
190センチを超える男が殺意の篭った目で見下ろしてきていたのだ。
それが敦賀蓮だと気付くのに数秒を要した。
「俺のキョーコからさっさと手を離せ。」
「は?」
見た目の衝撃に自分が一体なんと言われたのかわからなかった。
「離せ と、言っている。」
ギリギリと肩に食い込む手。
「いっ…て…!」
ーーー何だ?!なんなんだ?!
本気で戸惑った男優の腕の中でキョーコが身動ぎをしてやっとハッとして男優は手を緩めてキョーコの拘束を解いた。
「敦賀さんっ!」
腕の中から抜け出したキョーコはそう敦賀蓮に呼び掛けた。蓮は男の肩から手を離し、キョーコを腕の中へ引き寄せ抱き締めた。
「きゃっ!」
「キョーコ…」
その名前の呼び方一つの響きにどれだけ想いが深いのかが現れていた。
「蓮…さんっ」
キョーコは戸惑っているようだった。
周りからの注目を浴び、真っ赤な顔でワタワタしている。
スタジオ内もざわめき立ち、三人の様子を生唾を飲んで見守っている。
「あ、あの!皆さん見てますっ!!」
「だから?さっき君が抱き合ってるの散々俺も見てたんだよ?」
「あ、あれは…役で…」
「わかってる。わかってるけどっ!」
ギュウギュウに抱きしめてくる蓮に、仕方ない人ですね。と息を吐き出したキョーコもそっと蓮の背中に腕を回す。
そして蓮にだけ聞こえるようにそっと囁いた。
「愛してるのは貴方だけですよ。」
それを聞いて、蓮はゆっくりとキョーコを抱きしめる腕の力を抜いて、はにかんだような笑顔でキョーコを見つめた。
コツンと額同士を合わせてそっと囁く。
「うん。知ってる。」
そう答えた蓮にキョーコも花のように微笑んだ。
先ほど何度も撮り直した映像よりも絵になる二人に圧倒され、皆ポカンと二人の様子を眺めていた。
「着替えないと帰れないね。」
「そうですね。」
「じゃあ行こうか?」
「はい!」
蓮は自分のジャケットを脱いでキョーコの肩に掛けると、そのまま肩を抱いて頭に一つキスを落とすと、キョーコを促して歩き始めた。
二人がいなくなった後のスタジオが大騒ぎになったのは言うまでもなく、さてこれをどう収集つけようかと一人げっそりしている社がいたのだった。
キョーコの楽屋に戻った蓮とキョーコは、扉を閉めるやいなや深く口付けあっていた。蓮の手がまだ触れることを許されてなかった背中をまさぐる。
夢中で口付け合いながら、備え付けのソファに沈んだ二人だったが、蓮の動きがピタリと止まった。
キョーコは不思議そうに蓮を見上げる。
蓮はじっと自分の胸元を凝視していた。
「………下着は…?」
大魔王が降臨して地を這うような声にキョーコは身を震わせながら素直に述べる。
「え?あ…このドレス…ブラトップになってるので…」
「付けてないの?」
「あの、ですから、ドレスがブラみたいなもので…」
「ドレスが…ブラ…?」
蓮は一瞬頭にカァッと血が上った。
あの男のために?そう思ったのだ。
「れ、蓮さんっ!これは衣装で…」
そんな蓮に慌ててキョーコが弁明する。
蓮はその言葉にハッとした。
「用意されてたので、着るしかなくて…」
申し訳なさそうに眉尻を下げるキョーコに蓮こそ申し訳ない気持ちになった。
「そう…だよね。俺こそ…ゴメン…。」
そうは言っても、やっぱり面白くはない。
自分の愛しい彼女がドレスとはいえ下着姿で男の腕の中にいたのかと錯覚してしまいそうになる。
「そ、それと…あの、着替えたいので…」
モジモジと申し訳なさそうに言うキョーコにここにいたいとか手伝いたいとか言いそうになる自分を必死に抑えて、蓮は無表情で立ち上がった。
「外で…待ってるから…」
「…はい。」
恥ずかしそうに俯くキョーコに背を向けて蓮は廊下へと出るのだった。
楽屋の前で腕を組んで壁に寄りかかっていると、先ほどキョーコを抱きしめていた男優が二つ隣の楽屋から出てきた。
「「あ…」」
お互いなんとも気まずい空気になる。
「さっきは…」
「すみませんでした!!」
蓮が先ほどのことを謝罪しようとしたところで先に男優の方が頭を下げた。
「え?」
「京子ちゃんが敦賀さんと…その、そんな関係とは思わなくて…。」
「…………。」
「俺、元々京子ちゃんのこと可愛いなって思ってたからこれからこのドラマで仲良くなれたらいいなって下心もあって…」
「…………。」
「調子にのってあんなに何度も…わざとやり直しになるようなキスを…」
「……………。」
「でも俺、元々敦賀さんのこともスッゲーファンで、ちょっとさっきは怖かったッスけど…あの、嫉妬に塗れた敦賀蓮とか滅多に見れないもの観れて…なんかラッキーとか思ったり…」
「……………。」
「何て言ったらいいかわかんないんすけど、お会いできてよかったですっ!俺、これから京子ちゃんと何度かラブシーンあるみたいなんすけど、全力で頑張りますんで!!これからも頑張ってください!!」
「……………。」
「あ、じゃあ俺はこれで…!お疲れ様っした!!」
男優はきちんと頭を下げるとそのまま足早に立ち去って行った。
ーーーわざとやり直しになるようなキス?
ーーー仲良く慣れたらいいなって下心?
ーーー何度もあるラブシーン…全力で頑張る?
ブチっ!!
蓮の中で何かが切れた。
バタンと扉を開け、キョーコの楽屋に飛び込むと、キョーコはキャッと叫び声を上げた。
「れ、蓮さっ?!」
キョーコは慌ててボタンを止めかけていた服をかき合わせる。
まだ下は履いていないので下着姿だ。
ワタワタと慌てるキョーコに構わずに蓮は楽屋に鍵をかけてキョーコに近付くと後ろからギュウと抱き締めた。
「れ、蓮さん…?」
真っ赤な顔で困惑して見てくるキョーコ。
蓮は、そんなキョーコの止め損ねた服の隙間から手を差し込み、その肌に手を這わすと、そっとその胸の膨らみに手を添えた。
ビクッとキョーコの体が震える。
潤んだ瞳で見上げてくるキョーコの唇に蓮は己の唇を重ね合わせた。
下着の上から触れただけだが、口付けを受け入れてくれたことでそれが許されたように感じて、蓮の中で黒く渦巻いていた気持ちがゆっくりと身を潜めて行くのだった。
それを確かめるようにそっと啄ばむようなキスを送る。
蓮の胸をつかむ手の上にキョーコはそっと己の手を重ね合わせた。
「あ、そういえばもうすぐ蓮さん誕生日ですね!」
「うん。そうだね。」
キョーコと二人、帰路についた蓮は、車を走らせマンションへと向かっていた。
キョーコが食事を作ってくれるというのだ。
「何か、欲しいものってありますか?」
「欲しい、もの…?」
「はい。」
蓮は思わず鸚鵡返しで聞き返した。
「あることは…ある…けど…」
なんとも歯切れが悪くなるのは怖いからだろう。これを言ったらこの子は離れて行くんじゃないかとか、この子はどんな目で自分を見るのかと思ってしまうのだ。
しかし、蓮の心中など知らないキョーコは目を輝かせた。
「え?!何ですか?!」
キラキラと輝く瞳に抗えず、でも本音を言うことなんて出来なくて、咄嗟に出たのはほんの少し同じようでとらわれ方によっては違う本音。
「君との…時間…」
キョーコはキョトンとして蓮を見た。
まん丸に目を見開き心底不思議そうなキョーコに蓮は苦笑を零す。
「キョーコと一緒に過ごせる時間。もっとキョーコと仲良くなりたい。」
「今は、仲良く…ないですか?」
「いや…今よりもっとってこと。」
「なんだか…謎解き、みたいですね。」
蓮の言葉を受けて怪訝な顔になったキョーコは、難しい顔をしてウンウンと頭を捻って考え始めた。
そんなキョーコを横目に見つつ、自分のことを一生懸命考えてくれるキョーコを見れているだけでも幸せかもしれないなと思うことにするのだった。
(続く)
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これで漸くプレゼントに繋がるかな?!(汗)
魔人様からのコメントで撮影がうまく行きキョーコのシーンが増え~ってあったので、ブレイクで全く違うドラマの役に抜擢ってことにしちゃいました♪
相手役の名前…多分蓮様にとっては知りたくもないかなー?と思ってとりあえず出さないままにしちゃいました(笑)
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トワ エ モア ♡4♡
蓮と付き合い始めて愛し愛されることを知ったキョーコは、その可愛さに仄かな色気まで加わり始め、花開き始めた。
問題のドラマの撮影ではアドリブの恋愛アドバイスも大好評で、京子の演技は大絶賛されることになり、それがキッカケでまた京子へのオファーが、次々と舞い込み始めた。
京子の恋愛講座という雑誌の特集コーナーまで組まれたほどだ。
その後オファーが来たドラマでも女性ということもあり恋愛ものが大半で、主役ではないものの大学で知り合った6人の男女が織りなす恋愛ドラマで、メインレギュラーに抜擢された。
ドラマとはいえ、男とベタベタすることになるのを蓮は面白く思ってなくて、キョーコのそのドラマの撮影が始まってからというもの、蓮は時折イライラと機嫌の悪さを表していた。
「お、おい!蓮、顔、顔っ!!」
「なんですか?」
「なんですか?じゃない!!現場の空気が悪くなるだろ?!」
社の指摘にハッとして周りを見回すと己を気遣わしげに見るスタッフや共演者がいて、蓮はグッと唇を噛み締めると、雰囲気を変えた。
「ったく。心配なのはわかるけどさ…」
実は蓮はキョーコと甘い雰囲気を作り出しておきながらもまだ一度も肌を重ねていない。
だからと言ってチャンスがなかったというわけでもなかった。
キョーコは何度も泊りに来ていたし、ホテルを取って二人でスウィートに泊まったことだってある。
しかし、どうしても一歩が踏み出せず、二の足を踏んでしまうのだ。
原因ははっきりしている。初めてベッドにキスをしながらキョーコを押し倒した日、服の中に手を忍ばせた蓮をキョーコが力一杯突き飛ばしたのだ。
『あ…ごめ…なさ…』
真っ赤な顔で狼狽えているキョーコを見て、拒絶されたと思った蓮は内心のショックと動揺を笑顔で隠して、キョーコに再び近付くと怖がらせないように優しく髪に触れた。
『俺こそ、突然ごめん。ビックリ…させちゃったよね?』
赤い顔でコクンと頷くキョーコにそれ以上ことを進めることは出来なくて、蓮はその日はキョーコを抱き締めて眠るだけにとどめたのだった。
それから雰囲気を作っては手を出そうとしたのだが、突き飛ばされた感覚を思い出してしまい、いつも躊躇ってしまって結局は腕枕だけで終わってしまうのだ。
腕の中で幸せそうな寝顔を見せるキョーコが見れればそれでいいかと思い直して、蓮も自身の熱を持て余したまま、キョーコの隣で眠るのだった。
なので恋人ではあるのだが、実質としてはまだ全てを手に入れたわけではない。
だから恋人としての余裕もあるはずがなく、ラブシーンがあると聞くと軽いものでもどうしても許せない嫉妬の炎に妬かれてしまうのだ。
今日の撮影では初のキスシーンがあるのだとキョーコが言っていた。
相手の男がそれ以上の不埒の想いを持たないか心配で、蓮はいても立ってもいられない。
「蓮、出番だってさ!」
「社さん、今日の撮影ってこれが最後でしたっけ?」
「ん?あぁ、そうだぞ。このドラマの撮影が23時まで予定として入ってる。」
ちらりと時計を確認すれば、まだ19時だった。
「巻で…終わらせて見せます。」
「は?!」
キョーコが終わるのは21時半だと聞いている。
スタジオまで迎えに行こう。そしてキョーコを恋人役の目の前で攫ってやる。
蓮は密かな決意を胸に秘め、舞台へと足を踏み入れたのだった。
ーーザワリ
キョーコは不自然なざわめきに首を傾げた。
今はドラマの撮影中なので本番の間の僅かなスタンバイの時間だ。
スタジオの空気は本番特有の緊張感に包まれていて、不用意に音を立てる人もいない。
出演者同士の話し声も息を潜めて会話を交わしているのだ。
そしてざわめきの正体が明らかになったのは、長身の一人の男がスタジオの隅に現れたのをキョーコの瞳が捉えたからだ。
マネージャーの社も後から遅れて入ってきて蓮の隣に並ぶ。蓮は見学する気満々のようだ。
ビックリし過ぎてキョーコの目がまん丸になる。
すぐに撮影再開を迎えるため、男優の首に腕を回した状態で、男優には抱きしめられるような形で舞台の中央に立っていたキョーコは居た堪れなくなった。
強い剣呑な眼差しがキョーコに突き刺さる。
それにヒイッと青ざめそうになったところで、振り返って蓮の姿をみた男優がこっそり話しかけてきた。
「ね、あれ、敦賀蓮だよな?なんでこのドラマに見学に来てるんだ?」
「…ふ、不思議デスヨネ?」
「誰か知り合いでもいるのかな?ひょっとして柏木さん目当てだったりして!」
柏木と聞いてキョーコの肩がピクッと震えた。
このドラマのメインヒロインで色白小顔でどこか日本人離れしたハーフのような顔は人形のようだと評される。
可愛くて可憐で…キョーコが持っていないものを沢山持っている人物だった。
女である自分でさえも見惚れてしまう美貌。
蓮は自分の恋人だと思うのに、まだ恋人である自身のもてないキョーコはチラリと男の肩越しに蓮を見た。
バッチリと目が合い、キョーコの顔は朱に染まった。
「よーし!スタンバイ!」
すでに準備満タンなスタジオに監督の元気な声が響く。
「よーい、スターッ」
カチンコの音ともに、煌びやかなシーンが動き出す。
今から撮るのは正にこの目の前の男とのキスシーンだ。
大学のダンスサークルで知り合った6人の恋愛ドラマで、キョーコも腰まで丸見えの衣装に身を包んでいた。
曲に合わせてリズムを刻み、ワルツを踊る。
そうして問題のシーンがやってきた。曲の途中でキョーコがバランスを崩し、それを慌てて抱えた男が、そのままの勢いで口付けるのだ。
キョーコの演じる役も男優が演じる役に元々好意を寄せている設定のため、そのキスを受け入れ、二人はこの日から恋人同士になるというものだった。
カットの声が掛かるまでがどのくらいの長さだったかわからない。
でも早くカットをかけてー!!!!!とキョーコは念じたくなってしまった。
「カーット!」
カットを掛けた監督が少し唸る。カメラの映像を繰り返し確認して撮り直しを支持し始めた。
ーーー何処がいけないの?!
監督は何も指摘しないままもう一度と言う。
蓮が来るまでに既に3回撮り直しているのだ。
流石にこれは…と思いつつも、相手の男優はノリノリだった。
「もっと激しくやってみる?」
「え…?」
そうして短く言葉を発しただけですぐにまたスタートが掛かった。
今度は最初は優しく、そして一度唇を離して再度深く口付けられた。
それに応えるキョーコ。
今度は少し早目にカットが掛かった。
どうやら違うらしい。
そしてもう一度と促される。
撮り直すたび、蓮の機嫌がドンドン悪くなって行くのを感じてキョーコは監督に呪い魂を投げつけたくなってきた。
そしてまたスタートがかかり、今度はいきなり貪られるみたいにキスをされた。
暫くカメラを回してカットと声をかけた監督は、首を振った。
また撮り直しかと思ったところで、監督は信じられない言葉を発した。
「やっぱ最初の使うか…」
ーーーな?!
キョーコは憤慨した。
しかし、男優は残念と耳元で笑った。
「もっと京子ちゃんとキスしたかったな。」
「へ?!」
思わず赤くなったキョーコの背中をザラっとした手が滑る。
それに背筋がゾクっとするような悪寒が走ってキョーコは体を強張らせた。
今日の撮影はここまでだと指示が飛ぶと、皆が片付けに入り始めた。
だが目の前の男優はキョーコを抱き締めたまま甘い言葉を耳元に囁く。
「ねぇ、この後時間あるならーー」
しかし、最後まで言うことは出来なかった。
男優の肩がいきなり後ろから掴まれたからだ。
「うわっ、なにすんだよ?!」
慌てて後ろを振り向いて文句を言おうとした男優は固まった。
190センチを超える男が殺意の篭った目で見下ろしてきていたのだ。
それが敦賀蓮だと気付くのに数秒を要した。
「俺のキョーコからさっさと手を離せ。」
「は?」
見た目の衝撃に自分が一体なんと言われたのかわからなかった。
「離せ と、言っている。」
ギリギリと肩に食い込む手。
「いっ…て…!」
ーーー何だ?!なんなんだ?!
本気で戸惑った男優の腕の中でキョーコが身動ぎをしてやっとハッとして男優は手を緩めてキョーコの拘束を解いた。
「敦賀さんっ!」
腕の中から抜け出したキョーコはそう敦賀蓮に呼び掛けた。蓮は男の肩から手を離し、キョーコを腕の中へ引き寄せ抱き締めた。
「きゃっ!」
「キョーコ…」
その名前の呼び方一つの響きにどれだけ想いが深いのかが現れていた。
「蓮…さんっ」
キョーコは戸惑っているようだった。
周りからの注目を浴び、真っ赤な顔でワタワタしている。
スタジオ内もざわめき立ち、三人の様子を生唾を飲んで見守っている。
「あ、あの!皆さん見てますっ!!」
「だから?さっき君が抱き合ってるの散々俺も見てたんだよ?」
「あ、あれは…役で…」
「わかってる。わかってるけどっ!」
ギュウギュウに抱きしめてくる蓮に、仕方ない人ですね。と息を吐き出したキョーコもそっと蓮の背中に腕を回す。
そして蓮にだけ聞こえるようにそっと囁いた。
「愛してるのは貴方だけですよ。」
それを聞いて、蓮はゆっくりとキョーコを抱きしめる腕の力を抜いて、はにかんだような笑顔でキョーコを見つめた。
コツンと額同士を合わせてそっと囁く。
「うん。知ってる。」
そう答えた蓮にキョーコも花のように微笑んだ。
先ほど何度も撮り直した映像よりも絵になる二人に圧倒され、皆ポカンと二人の様子を眺めていた。
「着替えないと帰れないね。」
「そうですね。」
「じゃあ行こうか?」
「はい!」
蓮は自分のジャケットを脱いでキョーコの肩に掛けると、そのまま肩を抱いて頭に一つキスを落とすと、キョーコを促して歩き始めた。
二人がいなくなった後のスタジオが大騒ぎになったのは言うまでもなく、さてこれをどう収集つけようかと一人げっそりしている社がいたのだった。
キョーコの楽屋に戻った蓮とキョーコは、扉を閉めるやいなや深く口付けあっていた。蓮の手がまだ触れることを許されてなかった背中をまさぐる。
夢中で口付け合いながら、備え付けのソファに沈んだ二人だったが、蓮の動きがピタリと止まった。
キョーコは不思議そうに蓮を見上げる。
蓮はじっと自分の胸元を凝視していた。
「………下着は…?」
大魔王が降臨して地を這うような声にキョーコは身を震わせながら素直に述べる。
「え?あ…このドレス…ブラトップになってるので…」
「付けてないの?」
「あの、ですから、ドレスがブラみたいなもので…」
「ドレスが…ブラ…?」
蓮は一瞬頭にカァッと血が上った。
あの男のために?そう思ったのだ。
「れ、蓮さんっ!これは衣装で…」
そんな蓮に慌ててキョーコが弁明する。
蓮はその言葉にハッとした。
「用意されてたので、着るしかなくて…」
申し訳なさそうに眉尻を下げるキョーコに蓮こそ申し訳ない気持ちになった。
「そう…だよね。俺こそ…ゴメン…。」
そうは言っても、やっぱり面白くはない。
自分の愛しい彼女がドレスとはいえ下着姿で男の腕の中にいたのかと錯覚してしまいそうになる。
「そ、それと…あの、着替えたいので…」
モジモジと申し訳なさそうに言うキョーコにここにいたいとか手伝いたいとか言いそうになる自分を必死に抑えて、蓮は無表情で立ち上がった。
「外で…待ってるから…」
「…はい。」
恥ずかしそうに俯くキョーコに背を向けて蓮は廊下へと出るのだった。
楽屋の前で腕を組んで壁に寄りかかっていると、先ほどキョーコを抱きしめていた男優が二つ隣の楽屋から出てきた。
「「あ…」」
お互いなんとも気まずい空気になる。
「さっきは…」
「すみませんでした!!」
蓮が先ほどのことを謝罪しようとしたところで先に男優の方が頭を下げた。
「え?」
「京子ちゃんが敦賀さんと…その、そんな関係とは思わなくて…。」
「…………。」
「俺、元々京子ちゃんのこと可愛いなって思ってたからこれからこのドラマで仲良くなれたらいいなって下心もあって…」
「…………。」
「調子にのってあんなに何度も…わざとやり直しになるようなキスを…」
「……………。」
「でも俺、元々敦賀さんのこともスッゲーファンで、ちょっとさっきは怖かったッスけど…あの、嫉妬に塗れた敦賀蓮とか滅多に見れないもの観れて…なんかラッキーとか思ったり…」
「……………。」
「何て言ったらいいかわかんないんすけど、お会いできてよかったですっ!俺、これから京子ちゃんと何度かラブシーンあるみたいなんすけど、全力で頑張りますんで!!これからも頑張ってください!!」
「……………。」
「あ、じゃあ俺はこれで…!お疲れ様っした!!」
男優はきちんと頭を下げるとそのまま足早に立ち去って行った。
ーーーわざとやり直しになるようなキス?
ーーー仲良く慣れたらいいなって下心?
ーーー何度もあるラブシーン…全力で頑張る?
ブチっ!!
蓮の中で何かが切れた。
バタンと扉を開け、キョーコの楽屋に飛び込むと、キョーコはキャッと叫び声を上げた。
「れ、蓮さっ?!」
キョーコは慌ててボタンを止めかけていた服をかき合わせる。
まだ下は履いていないので下着姿だ。
ワタワタと慌てるキョーコに構わずに蓮は楽屋に鍵をかけてキョーコに近付くと後ろからギュウと抱き締めた。
「れ、蓮さん…?」
真っ赤な顔で困惑して見てくるキョーコ。
蓮は、そんなキョーコの止め損ねた服の隙間から手を差し込み、その肌に手を這わすと、そっとその胸の膨らみに手を添えた。
ビクッとキョーコの体が震える。
潤んだ瞳で見上げてくるキョーコの唇に蓮は己の唇を重ね合わせた。
下着の上から触れただけだが、口付けを受け入れてくれたことでそれが許されたように感じて、蓮の中で黒く渦巻いていた気持ちがゆっくりと身を潜めて行くのだった。
それを確かめるようにそっと啄ばむようなキスを送る。
蓮の胸をつかむ手の上にキョーコはそっと己の手を重ね合わせた。
「あ、そういえばもうすぐ蓮さん誕生日ですね!」
「うん。そうだね。」
キョーコと二人、帰路についた蓮は、車を走らせマンションへと向かっていた。
キョーコが食事を作ってくれるというのだ。
「何か、欲しいものってありますか?」
「欲しい、もの…?」
「はい。」
蓮は思わず鸚鵡返しで聞き返した。
「あることは…ある…けど…」
なんとも歯切れが悪くなるのは怖いからだろう。これを言ったらこの子は離れて行くんじゃないかとか、この子はどんな目で自分を見るのかと思ってしまうのだ。
しかし、蓮の心中など知らないキョーコは目を輝かせた。
「え?!何ですか?!」
キラキラと輝く瞳に抗えず、でも本音を言うことなんて出来なくて、咄嗟に出たのはほんの少し同じようでとらわれ方によっては違う本音。
「君との…時間…」
キョーコはキョトンとして蓮を見た。
まん丸に目を見開き心底不思議そうなキョーコに蓮は苦笑を零す。
「キョーコと一緒に過ごせる時間。もっとキョーコと仲良くなりたい。」
「今は、仲良く…ないですか?」
「いや…今よりもっとってこと。」
「なんだか…謎解き、みたいですね。」
蓮の言葉を受けて怪訝な顔になったキョーコは、難しい顔をしてウンウンと頭を捻って考え始めた。
そんなキョーコを横目に見つつ、自分のことを一生懸命考えてくれるキョーコを見れているだけでも幸せかもしれないなと思うことにするのだった。
(続く)
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これで漸くプレゼントに繋がるかな?!(汗)
魔人様からのコメントで撮影がうまく行きキョーコのシーンが増え~ってあったので、ブレイクで全く違うドラマの役に抜擢ってことにしちゃいました♪
相手役の名前…多分蓮様にとっては知りたくもないかなー?と思ってとりあえず出さないままにしちゃいました(笑)
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