トワ エ モア ♡3♡


ここ数日間のダークな雰囲気を纏っていた人物と同一人物だとは思えないほど上機嫌な担当俳優は休憩に入るなり、いそいそと携帯電話のメール履歴をチェックしていた。社はそれを内心で呆れながらも、蓮に促す。

「ったく。メール見るなとは言わないけどな、とりあえず楽屋に行ってからにしたらどうだ?どうしても見たいんだったらそんな顔を緩ませて見るなよ。ほらみろ!またいたずらに心奪われた乙女があそこで腰砕けになってるじゃないか。」

「…え?」

蓮はメールに集中していて社の言葉が頭に入ってこなかったようで、完全にほわほわと緩んだ顔のまま社に向かって首を傾げた。
そんな蓮を見て社の顔が真っ赤になる。

「だーかーらー!!楽屋でチェックしろって言ってるんだよ!!このアンポンタンっ!!」

「失礼な。アンポンタンはないでしょう。」

社の言葉を受けてパタリと携帯を閉じて苦笑しながら立ち上がった蓮は、敦賀蓮の顔を保とうとするものの、嬉しさと幸せオーラが溢れ出ていて、ちっとも効力を発揮出来ていない。

「キョーコが今から来てくれるそうです。休憩時間は50分間でしたよね?」

「あぁ。キョーコちゃんそんな近くにいるのか?」

「ラブミー部のお使いで同じテレビ局に来てるみたいです。」

「そっか。良かったな。じゃあ俺は適当に他所で時間をーー」

「え?社さんもいて下さいよ。じゃないとキョーコ、周りの目を気にしてすぐ帰ろうとしちゃうじゃないですか。引き止めるの大変なんですから。」

蓮のキョーコちゃん絡みの感情の落差は激しい。
その落差を痛感しているマネージャーの身としては蓮の要望を飲まざるを得ないが、出来ることならどうにかして回避する術はないかと頭をフル回転させる。
しかし、いい案が浮かばないまま、キョーコが現れてしまった。

「キョーコ!」

「蓮…さん。」

楽屋の扉が閉まるやいなや、キョーコを腕の中に閉じ込める蓮。
キョーコもそんな蓮の腕の中で頬を染めながらも嬉しそうに蓮の胸に頬を寄せて背中に腕を回した。

「会いたかった。」

「私も…です。」

目に痛いドピンクツナギのキョーコと蓮は互いに確かめ合うように言葉を交わす。キスこそしないものの、額を付き合わせ微笑み合う二人の姿は、目にするだけで甘々な空気が流れてきて、社は口の中がザラザラしてくるのを感じる。

「お弁当…私の分も持ってきたので一緒に食べましょう?」

「うん。そうだね。一緒に食べよう。」

キョーコを抱き締めたまま、ソファに座った蓮だが、当然のようにキョーコを膝の上に座らせる。
キョーコはアワアワと慌てながら真っ赤な顔で蓮を見た。

ーーーキョーコちゃん、それは逆効果だと思うよ。

そう思わず助言したくなる表情を惜しげも無く晒すキョーコを蓮は蕩けんばかりの笑顔で見つめている。

ーーー俺、こんなところでごはん食べたくない!!

蓮の視線が、キョーコの表情がどちらも甘過ぎて、空気の色は既にツナギに負けないくらいのドピンク色に変わっていた。
それだけでも胸焼けしそうでご飯なんて喉を通らないというのに、キョーコと蓮はいつの間にか食べさせ合いっこを始めてしまい、社は耐えられなくなった。

「あー!!しまった、至急連絡しなきゃいけないところがあるんだった!!ごめん、蓮、キョーコちゃん、ちょっと席外すね!キョーコちゃん、蓮のことよろしくっ!!」

「あ…はい、わかりました。」

言い切ったが早いかそのまま返事もろくに聞かずに部屋を飛び出し、扉を締める。
扉を閉めて遮断したことでフゥ~。と息を吐いた社だったが、寄りかかったドアから何かを感じてチラリと下を見て慌てて飛び退いた。

「ひっ!」

ドアの隙間からもピンク色のオーラが溢れ出していて、社は逃げるように離れた場所へ避難することにしたのだった。



社のいなくなった部屋でも蓮とキョーコは相変わらずベタベタしており、2人っきりになったことで気が緩んだのか二人はキスまで始めてしまった。
最初は軽く徐々に深くしていたところで、二人の思考が甘く溶け出す。
そうして二人が夢中になっていたところで不意にノックの音が響いた。
キョーコは激しいキスに身体の力が抜け夢見心地で蓮にもたれ掛かると、蓮もキョーコを優しく抱き締めたまま、扉の外へ返事をした。

ここで社がいたならば上手く立ち回れたのだろうが、幸か不幸か二人きり。

ガチャリと開いたドアから元気な声が響いた。

「初めましてっ!!敦賀さん!俺同じ事務所のタレントでブリッジロックのリーダーの石橋光と言いますっ!!」

蓮は入ってきた人物が社ではなかったことで目を見開き、キョーコもハッと我に返った。

「たまたま通りかかったら敦賀さんの楽屋を見つけて、こりゃ挨拶しとかなおもいまして…って、え?!」

挨拶しながら、蓮が女性を抱きしめているのに気付いてボフンッと真っ赤になって一瞬固まってしまった光だったが、見てはいけないものを見てしまったと気が動転してドアを閉めようとドアノブを握った。

「すっ、すいませんでし…」

そして光の手が止まったのは、蓮の肩越しに頭しか見えてなかった人物が顔を上げたことで、相手がキョーコだと気付いたからだ。
まん丸と目を見開き、そのまま固まる。

「ひっ、光さんっ!」

キョーコが慌てて呼びかけた声に反応したのは何故か蓮だった。
ピクリと耳が動いて、キョーコに視線を移す。

「え…?」

でもキョーコはそれに気付かず慌てて光に蓮の名誉を守るため弁明しようとしていた。

「こっ、これは…あのっ…」

蓮の腕の中で顔を真っ赤にしてアワアワとしているのは密かに想いを寄せていたキョーコで、光は頭の中が真っ白になってしまった。

「キョーコ?」

しかし、そんな光に気付かぬまま蓮はキョーコを抱き締めた腕を逆に強めて問い詰めるような声を発した。
責めるような怒ってるような声の響きに、漸くキョーコのブラックアンテナが働き、ビクッと身体を震わせて恐る恐る蓮を見る。

「浮気?」

「へ?!ち、ちがっ!!」

蓮の言葉にビックリしてキョーコは慌てて否定する。

「同じ事務所の先輩でお世話になってるだけで…」

「だったらなんで下の名前で呼んでるの?」

「それはっ!あの、光さんと同じ苗字の方が他にもいらっしゃって…」

蓮の機嫌が急降下したことでキョーコは必死に蓮の誤解を解こうと言い募る。

「ふーん?」

明らかに納得していない蓮の声の響きに、キョーコは声を張り上げた。

「わ、私が好きなのはこの世の中のどこを探しても敦賀さんだけですっ!!」

それを聞いた蓮は一瞬目を見開いてかたまったが、その後空気が一気に緩み、嬉しそうにキョーコの頬を撫で始めた。
光はキョーコの言葉にガーンという音が聞こえそうな程のショックを受けた。

「本当に?」

「本当ですっ!!」

堂々とそういうキョーコが可愛くて蓮はギュウギュウに抱き締める。
蓮の腕の中でアワアワしながら、キョーコは光と目が合った。

「あ…えっと…あの…」

なんと声をかけたらいいのか分からずに戸惑っているキョーコを見兼ねて、光は笑顔を作って何も見なかったというのを装った。

「あ、じゃあ敦賀さん、また今度機会ありましたら改めて挨拶させて下さい。」

「うん。ごめんね。今ちょっと手が離せなくて…。」

「いえ。突然お邪魔してすみませんでした。京子ちゃんも…また。」

「は、はいっ!お見苦しいところをお見せしてしまって…」

「いや。俺は何も見なかったから!!じゃあね、次の収録でもよろしく!」

そう言ってバタンと扉が締まり、キョーコは肩の力が抜けたようにヘナヘナと力を失い蓮の腕の中で崩れた。

「もうっ!光さんだったから良かったものの…こんなの見つかったら大変じゃないですか…。」

ブツブツと呟くキョーコとは対照的に蓮はニコニコと嬉しそうだ。

「俺はキョーコの熱烈な告白が聞けて嬉しかったけどな。」

「へ?!熱烈?!」

「世の中の何処を探しても俺だけが好きだって公言してくれただろ?」

「あ、あれは…思わず…」

キョーコは真っ赤になって俯いてしまった。

「ね、キョーコ…」

蓮が呼び掛けながら、キョーコの顎をすくい上げる。

「俺が本気で好きなのもこの世のどこを探してもキョーコだけだよ。」

トキンと胸が高鳴って、二人はまるでそれが自然なことのように唇を合わせたのだった。


(続く)
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風月の話でやたらと蓮キョと光君を遭遇させちゃうのは、早く光君に新しい恋に向かって欲しいからなのですっ!!
だっていくらキョーコちゃんを想い続けてもキョーコちゃんは蓮様のものなんですものー。
光君に現実を見せてさぁ!次の恋よっ!!と言ってあげたくなるのです。


このまま終わったら…本当にハッピープレゼントと無縁のお話になってしまう!と続きにしちゃいましたが…書けるのか…?!
本当に?!

…と自問自答ちゅー!!

ここ最近お話書く時間が作れなさ過ぎてますー!!
時間があるかもって時は大抵記事編集で時間使っちゃいますからね!
そのくせ新着メロキュンの更新遅くてすみませんー!
リンクが上手く貼れないことが多くって困っちゃいます。何がダメで貼れなかったのか謎のまま。どうしてもできない時は魔人様やピコ様の記事から一部コピペして貼り付けて編集してます。

本当はバレンタイン用にトワ エ モアとは違うメロキュン用の話を書きかけてたんですが、書き終わる前にバレンタインが終わってしまいました(泣)
もう二日過ぎちゃったなぁと思いつつ、トワエモア終わってからUP出来る期間が残ってたらUP出来るかなぁ?という感じです。
とりあえず2月も後半に入りましたね!あっという間!!

残りも楽しみましょー!!


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