(これまでせっかく高校最後の夏休みなのに、ずっとバイトばかりで…休みの日もあまり出掛ける事もしなかったしな…。とにかく今日は楽しむぞ。)
荷物を持ち、約束通り9時30分に駅に着くと既にあゆみが待っていて、少し膨れた表情を見せていた。
「遅い!女の子を待たせるなんて…どういうつもり?」
「悪い悪い…ギリギリになって。」
「うふふ…な~んてね、私が張り切って早く来ちゃっただけ。…でも、直也を待ってる間に、1人だけ男の人に声を掛けられたよ。」
(げっ…。)
「直也、聞いてる?」
「…。」
俺はこの時、修司の言葉を思い出していた。
(『あゆみがお前以外の誰かと付き合う事になったら~』か…。あゆみは『校内No.1美少女』だぜ?…のんびりしてたら、すぐにでもあゆみは誰かと付き合う事になってしまうかもな…。)
「直也?」
「えっ?あ、あぁ…何でもない。」
(何をやってるんだ俺は…今日は2人で楽しむと決めてきたじゃないか。)
「もうすぐ電車が来るよ。」
「よし、今日は全部俺がおごるよ。」
「そんな…悪いよ。」
「気にするなって。」
俺は切符を2枚買い、予定の電車に乗り込んだ。
その電車の中、あゆみが『PIT・IN』の話を切り出してきた。
「ねぇ直也、せっかくの休みに『PIT・IN』の話で悪いんだけど…。」
「ん?」
「もうすぐバイト終わっちゃうけど、お店を継ぐ事…どう考えてるの?」
「あぁ…その事か。どっちにしてもそろそろ結論を出さないといけないな。」
「私がこんな事を言うのも変だけど、私は直也にあのお店続けてもらいたいな…。」
「どうして?」
「う~ん…なんとなく。」
あゆみはうつむき、自信無さげに言った。
「なんだそりゃ…。」
「今直也はどういうつもりでいるの?」
「そうだな…。働いてて苦痛と感じる事は無いし、『他に何かしたい事があるか?』と聞かれても、別に無いと答えるだろうけど。」
「じゃあ、継いじゃいなよ?」
「ただなぁ…親父がパチンコで稼いでなんとか続いているような店だからなぁ…。」
「でも、最近はお客さんも増えてきたんじゃない?最初の頃に比べたら随分忙しくなってるよ。」
「そうらしいんだ。確かに今は夏休みだから、学生客が増えているってのもあるんだろうけど、親父の話だとそれ以外の客層も全体的に増えているらしい。」
「それは可愛い私が目当てなのよ。」
今度は先程とは違って、あゆみは得意気に言い放った。
「…。」
「ち、ちょっと…だから無視しないでってこの前も言ったでしょ~?」
「いや、悪い。あゆみは確か大学に…。」
「うん。まぁお父さんがうるさくってね。私も何になりたいってのはまだ具体的には見えてこないんだけど…。」
「ふ~ん、意外だな。あゆみはちゃんと将来の事とかきちんと考えてるのかと思ってた。」
「う~ん…いろいろあってね。」
またもあゆみはうつむき加減に話している。
(なんか落ち着きが無いな…?)
電車に揺られる事15分、絶好駅へと着いた。
さらに10分程歩き、ちょうど10時頃に遊園地【ハロー!ワールド】に着く事が出来た。
夏休みではあったが平日と言う事もあり、特に混んでいる訳でも無く俺達はホッとした。
俺は2人分の入園料を支払い、パンフレットを見ながら中へと進んでいった。
午前中はいろんなアトラクションやゲームコーナーで遊びまくり、遊園地内のレストランで昼食を食べ終わると昼の1時になろうとしていた。
冷房の効いたレストランから外へ出ると、暑さにたまらずあゆみが、
「あっつ~い!倒れそう…。ねぇ、こんなに暑いし、プールに行って泳ごうよ?」
「そうだな。せっかく水着も持ってきたし。」
「そんな事言って…最初からプールが目的だったんじゃないの?」
「ど、どうしてだよ~ぅ…。」
「何を情けない声出してんの?…図星なんでしょ?」
「とほほ…言われるがままだなぁ…。」
「あはは…それじゃ早く行こう。」
プール施設へと向かい、俺は更衣室で水着に着替えると中で軽い準備体操を済ませるとプールへと向かった。
しばらくプールサイドのデッキチェアに座っていると、着替えを終えたあゆみが更衣室から出てきた。
「お待たせ、直也。」
「…。」
あゆみの水着姿に俺は言葉を失ってしまった。
「…ど、どうかな?」
「に、似合ってるよ…すごく。」
(さすがに目のやり場に困るな…あまりじっと見てたらまた何か言われるだろうし…。でも本当に綺麗だ。)
この時、周囲の男どもの視線が一気にあゆみに集中した。
(学校で普通にいるだけで注目を集めるんだ、水着姿で注目されない訳無いよな…。)
「ありがと…。でも、ちょっと恥ずかしいな。」
「もっと自信持てよ。それだけの身体、隠す方がもったいないよ。」
「…言ってくれてる事は凄く嬉しいんだけど、なんか言葉がいやらしくない?」
「あ、あのなぁ…。」
(結局言われてしまうようになっているらしい…。)
「ははは…直也ったらおもしろ~い。」
(完全に遊ばれてるな…まぁ、こんなに楽しんでるあゆみを見るのも随分久しぶりだし、今日はあゆみのペースで楽しませてあげよう。)
プールはさすがに遊園地よりは混んでいたが、泳げない程ではなく楽しむには十分だった。
しばらくのんびり並んで泳いでいると、
「ねぇ、どっちが長く潜っていられるか勝負しない?」
「お約束な勝負だな…いいぜ?」
「じゃあ行くよ…せ~の。」
俺は集中する為に目を閉じて潜っていると、あゆみはそれを良い事に俺の身体をくすぐってきた。
「ぐぁっ?!」
驚いた俺は水を飲んでしまい、慌てて浮き上がった。
「はぁはぁはぁ…ぜぇぜぇぜぇ…。」
「わ~い、勝った~!」
「こ、殺す気か…?ゲホッ…。」
「悔しかったら捕まえてみなさいよ~だ。」
あゆみは眩しい笑顔を見せながら、俺から逃げるように泳いでいた。
しかし、その笑顔が苦しそうな表情に急変した。
「うっ…痛いっ!」
どうやら足をつってしまったらしく、あゆみは必死でもがいていた。
俺はあゆみの元へと急ぎ、あゆみの身体を抱きかかえた。
「あ、ありがとう…。」
「い、いや…。それより体操してなかったのか?」
「うん…。ちょっと浮かれ過ぎてたかも…。」
「まったく…まぁ、あゆみらしいよ。」
「…少しだけこのままでいて貰っていいかな?」
「…あぁ。」
周囲からは当然注目を受けたが、俺はその視線を無視してあゆみを抱きかかえたままじっとしていた。
するとあゆみは遠くを見つめ、小さい声で話し始めた。
「直也とこうやって2人で遊ぶのって、本当に久しぶりだよね。」
「そうだな。」
「小さい頃にはホント、毎日のように一緒に遊んでたのにね。」
「あぁ。そう言えばあの頃のあゆみは凄くわがままで、少しでも気に入らない事があったらすぐ不機嫌になって…俺も大変だったなぁ。」
「そ、そんな事思い出さないでよ~。…でも直也にはその頃からいろいろ迷惑を掛けてたよね。」
「そうだったか?」
あゆみは少し恥ずかしそうにその頃の事を話し始めた。
「うん。だって一緒に幼稚園に行ってて頃に、私が男の子にぶつかって、その男の子がケンカ腰になって向かってきた事があったの覚えてる?」
俺は細い記憶の糸を辿り、なんとか思い出した。
「その時、直也ったら私の代わりに何度も何度も謝ってくれたんだよね?」
「そうだった。今考えたら『何してんだ?』って感じだよな?」
「でも、嬉しかったよ。その後は…あっ…。」
何かを思い出したような反応を見せ、さらに恥ずかしそうにうつむくあゆみを見て、俺もその後の事を思い出した。
「その後、なんとなくあゆみが落ち込んでるみたいだったから、元気づけようと思って…。」
(ファーストキスを奪ってしまったんだった…。)
「…。」
「言い訳する訳じゃないんだけど、あゆみだったら俺の頬を叩いたりしてきたり、少しでも気が紛れるんじゃないかとあの時は思ったんだよ…。」
「…。」
「今、冷静に考えたら俺って本当にどうしようもない馬鹿だったな。」
「…ホントに馬鹿よ、私の事をかばってみんなに笑われて、馬鹿にされたりしても絶対に私の事を責めなかったし。ずっと今みたいに私の前では、どんな事も笑って話を聞いてくれて…優しい…ホントに優し過ぎる馬鹿だよ…。」
そのあゆみの言葉の後、しばらく沈黙が続いた。
(さっきのファーストキスの話…俺は相手があゆみだったから、そういう意識で覚えている訳だけど、まさかあゆみも?…ははは、それは随分自分勝手な想像だよな。)
「な、なぁ…もうその話はやめないか?」
「そ、そうね。…ありがとう、もう足大丈夫だから。」
そう言うとあゆみは俺から離れ、プールサイドへ座りしばらく何かを考えていたが、その後あゆみから思いもよらない言葉が飛び出した。
「ねぇ…今から直也の家に行ってもいいかな?」
(?!)
[続く]
荷物を持ち、約束通り9時30分に駅に着くと既にあゆみが待っていて、少し膨れた表情を見せていた。
「遅い!女の子を待たせるなんて…どういうつもり?」
「悪い悪い…ギリギリになって。」
「うふふ…な~んてね、私が張り切って早く来ちゃっただけ。…でも、直也を待ってる間に、1人だけ男の人に声を掛けられたよ。」
(げっ…。)
「直也、聞いてる?」
「…。」
俺はこの時、修司の言葉を思い出していた。
(『あゆみがお前以外の誰かと付き合う事になったら~』か…。あゆみは『校内No.1美少女』だぜ?…のんびりしてたら、すぐにでもあゆみは誰かと付き合う事になってしまうかもな…。)
「直也?」
「えっ?あ、あぁ…何でもない。」
(何をやってるんだ俺は…今日は2人で楽しむと決めてきたじゃないか。)
「もうすぐ電車が来るよ。」
「よし、今日は全部俺がおごるよ。」
「そんな…悪いよ。」
「気にするなって。」
俺は切符を2枚買い、予定の電車に乗り込んだ。
その電車の中、あゆみが『PIT・IN』の話を切り出してきた。
「ねぇ直也、せっかくの休みに『PIT・IN』の話で悪いんだけど…。」
「ん?」
「もうすぐバイト終わっちゃうけど、お店を継ぐ事…どう考えてるの?」
「あぁ…その事か。どっちにしてもそろそろ結論を出さないといけないな。」
「私がこんな事を言うのも変だけど、私は直也にあのお店続けてもらいたいな…。」
「どうして?」
「う~ん…なんとなく。」
あゆみはうつむき、自信無さげに言った。
「なんだそりゃ…。」
「今直也はどういうつもりでいるの?」
「そうだな…。働いてて苦痛と感じる事は無いし、『他に何かしたい事があるか?』と聞かれても、別に無いと答えるだろうけど。」
「じゃあ、継いじゃいなよ?」
「ただなぁ…親父がパチンコで稼いでなんとか続いているような店だからなぁ…。」
「でも、最近はお客さんも増えてきたんじゃない?最初の頃に比べたら随分忙しくなってるよ。」
「そうらしいんだ。確かに今は夏休みだから、学生客が増えているってのもあるんだろうけど、親父の話だとそれ以外の客層も全体的に増えているらしい。」
「それは可愛い私が目当てなのよ。」
今度は先程とは違って、あゆみは得意気に言い放った。
「…。」
「ち、ちょっと…だから無視しないでってこの前も言ったでしょ~?」
「いや、悪い。あゆみは確か大学に…。」
「うん。まぁお父さんがうるさくってね。私も何になりたいってのはまだ具体的には見えてこないんだけど…。」
「ふ~ん、意外だな。あゆみはちゃんと将来の事とかきちんと考えてるのかと思ってた。」
「う~ん…いろいろあってね。」
またもあゆみはうつむき加減に話している。
(なんか落ち着きが無いな…?)
電車に揺られる事15分、絶好駅へと着いた。
さらに10分程歩き、ちょうど10時頃に遊園地【ハロー!ワールド】に着く事が出来た。
夏休みではあったが平日と言う事もあり、特に混んでいる訳でも無く俺達はホッとした。
俺は2人分の入園料を支払い、パンフレットを見ながら中へと進んでいった。
午前中はいろんなアトラクションやゲームコーナーで遊びまくり、遊園地内のレストランで昼食を食べ終わると昼の1時になろうとしていた。
冷房の効いたレストランから外へ出ると、暑さにたまらずあゆみが、
「あっつ~い!倒れそう…。ねぇ、こんなに暑いし、プールに行って泳ごうよ?」
「そうだな。せっかく水着も持ってきたし。」
「そんな事言って…最初からプールが目的だったんじゃないの?」
「ど、どうしてだよ~ぅ…。」
「何を情けない声出してんの?…図星なんでしょ?」
「とほほ…言われるがままだなぁ…。」
「あはは…それじゃ早く行こう。」
プール施設へと向かい、俺は更衣室で水着に着替えると中で軽い準備体操を済ませるとプールへと向かった。
しばらくプールサイドのデッキチェアに座っていると、着替えを終えたあゆみが更衣室から出てきた。
「お待たせ、直也。」
「…。」
あゆみの水着姿に俺は言葉を失ってしまった。
「…ど、どうかな?」
「に、似合ってるよ…すごく。」
(さすがに目のやり場に困るな…あまりじっと見てたらまた何か言われるだろうし…。でも本当に綺麗だ。)
この時、周囲の男どもの視線が一気にあゆみに集中した。
(学校で普通にいるだけで注目を集めるんだ、水着姿で注目されない訳無いよな…。)
「ありがと…。でも、ちょっと恥ずかしいな。」
「もっと自信持てよ。それだけの身体、隠す方がもったいないよ。」
「…言ってくれてる事は凄く嬉しいんだけど、なんか言葉がいやらしくない?」
「あ、あのなぁ…。」
(結局言われてしまうようになっているらしい…。)
「ははは…直也ったらおもしろ~い。」
(完全に遊ばれてるな…まぁ、こんなに楽しんでるあゆみを見るのも随分久しぶりだし、今日はあゆみのペースで楽しませてあげよう。)
プールはさすがに遊園地よりは混んでいたが、泳げない程ではなく楽しむには十分だった。
しばらくのんびり並んで泳いでいると、
「ねぇ、どっちが長く潜っていられるか勝負しない?」
「お約束な勝負だな…いいぜ?」
「じゃあ行くよ…せ~の。」
俺は集中する為に目を閉じて潜っていると、あゆみはそれを良い事に俺の身体をくすぐってきた。
「ぐぁっ?!」
驚いた俺は水を飲んでしまい、慌てて浮き上がった。
「はぁはぁはぁ…ぜぇぜぇぜぇ…。」
「わ~い、勝った~!」
「こ、殺す気か…?ゲホッ…。」
「悔しかったら捕まえてみなさいよ~だ。」
あゆみは眩しい笑顔を見せながら、俺から逃げるように泳いでいた。
しかし、その笑顔が苦しそうな表情に急変した。
「うっ…痛いっ!」
どうやら足をつってしまったらしく、あゆみは必死でもがいていた。
俺はあゆみの元へと急ぎ、あゆみの身体を抱きかかえた。
「あ、ありがとう…。」
「い、いや…。それより体操してなかったのか?」
「うん…。ちょっと浮かれ過ぎてたかも…。」
「まったく…まぁ、あゆみらしいよ。」
「…少しだけこのままでいて貰っていいかな?」
「…あぁ。」
周囲からは当然注目を受けたが、俺はその視線を無視してあゆみを抱きかかえたままじっとしていた。
するとあゆみは遠くを見つめ、小さい声で話し始めた。
「直也とこうやって2人で遊ぶのって、本当に久しぶりだよね。」
「そうだな。」
「小さい頃にはホント、毎日のように一緒に遊んでたのにね。」
「あぁ。そう言えばあの頃のあゆみは凄くわがままで、少しでも気に入らない事があったらすぐ不機嫌になって…俺も大変だったなぁ。」
「そ、そんな事思い出さないでよ~。…でも直也にはその頃からいろいろ迷惑を掛けてたよね。」
「そうだったか?」
あゆみは少し恥ずかしそうにその頃の事を話し始めた。
「うん。だって一緒に幼稚園に行ってて頃に、私が男の子にぶつかって、その男の子がケンカ腰になって向かってきた事があったの覚えてる?」
俺は細い記憶の糸を辿り、なんとか思い出した。
「その時、直也ったら私の代わりに何度も何度も謝ってくれたんだよね?」
「そうだった。今考えたら『何してんだ?』って感じだよな?」
「でも、嬉しかったよ。その後は…あっ…。」
何かを思い出したような反応を見せ、さらに恥ずかしそうにうつむくあゆみを見て、俺もその後の事を思い出した。
「その後、なんとなくあゆみが落ち込んでるみたいだったから、元気づけようと思って…。」
(ファーストキスを奪ってしまったんだった…。)
「…。」
「言い訳する訳じゃないんだけど、あゆみだったら俺の頬を叩いたりしてきたり、少しでも気が紛れるんじゃないかとあの時は思ったんだよ…。」
「…。」
「今、冷静に考えたら俺って本当にどうしようもない馬鹿だったな。」
「…ホントに馬鹿よ、私の事をかばってみんなに笑われて、馬鹿にされたりしても絶対に私の事を責めなかったし。ずっと今みたいに私の前では、どんな事も笑って話を聞いてくれて…優しい…ホントに優し過ぎる馬鹿だよ…。」
そのあゆみの言葉の後、しばらく沈黙が続いた。
(さっきのファーストキスの話…俺は相手があゆみだったから、そういう意識で覚えている訳だけど、まさかあゆみも?…ははは、それは随分自分勝手な想像だよな。)
「な、なぁ…もうその話はやめないか?」
「そ、そうね。…ありがとう、もう足大丈夫だから。」
そう言うとあゆみは俺から離れ、プールサイドへ座りしばらく何かを考えていたが、その後あゆみから思いもよらない言葉が飛び出した。
「ねぇ…今から直也の家に行ってもいいかな?」
(?!)
[続く]