「さっき…あゆみを襲った武史って奴は、警察で言ったように中学での同級生だった奴なんだ。中学に入ってから知り合ったんだけど、なかなか学校にも出てこない相当な問題児で、同じクラスの中でもあまり親しく接する奴がいなかったような存在だったんだ。そんなあいつにとって唯一、普通に話をしてくれる相手が久美子…『渡部久美子』だった。久美子は俺達より1つ年下で、久美子が中学に入学してきた時、俺と武史は同じクラスで、武史に会いに来た久美子と知り合ったんだ。」
「…。」
「久美子は武史と同じ小学校だったんだ。それでよく武史に会いに来てたんだけど。たまたま武史と席が近くてな…武史がいない時には久美子と話をする事があって、その時に武史の話を色々聞いたんだ。小さい頃はごく普通な奴だった事、高学年になっていくに連れて行動が荒れ始めた事とか…。」
「うん…。」
「そうやってよく話をするようになっていく内に、久美子は俺に武史に対する本音を漏らすようになってきたんだ。」
「…どんな?」
「久美子は武史が小さい時…つまり、そんなに悪くなる前から親しいから、武史がそんな感じになった後、武史の周りから離れる奴が多い中、久美子は自分といる時にはどちらかと言えば優しい武史と、評判の悪い武史のどちらが本当の武史なのかという迷いと、自分が武史から離れ、武史が完全に孤立した時にどうなるのか…もしかしたら自分にも何かしてくるのではないかって言う不安から、なかなか武史と距離を置く事が出来なかったらしい。」
「…。」
あゆみは声を出さず、俺の方を向いたまま話を聞いていた。
「その話を聞いた俺は武史との接触を試みたんだ。武史は最初、急に近付いてきた俺の事を疑っているようだったが、その後は3人で話をする事も増えた。」
「…。」
「だけど、そうしてまた時間が経った俺が中学3年の夏休み、久美子は急に俺だけを呼び出し、俺の事が好きだって言ってきたんだ。」
「えっ?!」
あゆみは少し動揺したが、動揺を抑え隠すように俺に向けた視線を外し、うつむくように顔を落として言葉を続けた。
「…それで、どうしたの…?」
「…『久美子の気持ちには応える事が出来ない』と断った。」
「…それで?」
「…。」
俺の様子と話の流れから悪い結果を察知したのか、この時あゆみが俺の腕を掴んで来た。
「それが久美子と会う最後の機会になってしまった…。」
「…?」
「2学期に入る前、久美子は俺の知らない間にどこかへ引っ越してしまったんだ。」
「それは…直也にフラれちゃった…からとか?」
「あぁ…それも少し関係してる…。」
「…どういう事?」
「ここから先はその後に武史から聞いた話になるんだけど、その次の日…久美子は武史にその事を正直に言ったらしいんだ。」
「…。」
「その場では何も無かったらしいんだけど、武史は自分より付き合いの短い俺の事を選んだ事が不快で、久美子が自分を裏切ったと言う感じる気持ちと、俺さえいなければと言う気持ちが日増しに強くなって…。俺をボコボコにするか、それとも精神的なダメージを与えるかで迷った末にあいつは…。」
「…。」
「武史は…久美子を…レイ○してしまったんだ。」
「嘘っ?!…そんな…。」
その言葉にあゆみはショックを隠し切れず、俺の腕を掴む力が増した。
「武史はすぐに学校にその事実を自ら学校へ伝え、俺の前から姿を消した…。しかし学校側はそれを隠し、完全に封印される形になってしまった。」
「そんな…久美子ちゃんって子の両親は何も…?」
「…それは分からない。」
「そう…。」
「もしかしたら、久美子の両親も久美子がそういう被害に遭った事を公に知られるのを避けるため、学校側へ頼んだのかも知れない。中学2年でそんな目に遭わされた訳だから…。だけど、俺には納得出来る訳はなかった…。」
するとあゆみは思い出したように、
「それでさっき、警察の人に『その頃、その男は何かをした事は…』って聞かれた時、ちょっと口ごもってたんだ…。」
「…あぁ。」
「…でも、それにしても…どうしてあの武史って人、私が直也の知り合いって知ってたんだろう?」
「それは…詳しい事は言えないけど、武史はあゆみの存在を知っているんだ…。いつか…いつか絶対に話すから、今はこれ以上聞かないで欲しい。」
「直也…。うん…わかった…。ありがとう、直也にとって苦しい過去を話してくれて…。」
俺のあまりに衝撃的な過去を知り、うつむいていた顔を上げると、あゆみは涙を流していた。
〔♪♪♪…〕
その時、あゆみの携帯が鳴った。
「家からだ…たぶん親からだ。」
〔ピッ〕
「もしもし…。」
“あゆみ!こんな時間まで一体何をやってるんだ?!”
静寂に包まれている中、あゆみの親父さんの怒鳴り声がはっきりと聞き取れる。
「ごめん、お父さん…もう帰るから…。」
あゆみは涙で震える声で言葉を返した。その様子にあゆみの親父さんも気が付いたらしく、急に声を落とし、
“…早く帰って来なさい。”
と、一言だけ続けて電話を切った。
〔ピッ〕
あゆみは携帯をポケットに入れると、ゆっくりと立ち上がった。
「…帰ろっか?」
無理をして笑顔を作ろうとするあゆみを見て、俺は黙ってうなずいた。
そして無言のままあゆみを家の近くまで送り、
「さすがに…俺と一緒にいるのが分かるとマズいからここで…。」
「うん。…今日は…。」
「もう…いいから。今日はゆっくり休みな…。」
「わかった…おやすみ…。」
「あぁ…おやすみ。」
あゆみは駆け足で家へと帰って行った。
俺も家に帰り、気付かれないように部屋へと戻った。
(武史の奴…急に姿を現したかと思えば、あゆみの事を完全に突き止めていたとは…。最後の一言も気になるし…厄介な事になる前になんとかしないと…。)
いろいろ考えているうちに俺は眠りについていた。
すると、どうやら夢を見始めたようだ。
[続く]
「…。」
「久美子は武史と同じ小学校だったんだ。それでよく武史に会いに来てたんだけど。たまたま武史と席が近くてな…武史がいない時には久美子と話をする事があって、その時に武史の話を色々聞いたんだ。小さい頃はごく普通な奴だった事、高学年になっていくに連れて行動が荒れ始めた事とか…。」
「うん…。」
「そうやってよく話をするようになっていく内に、久美子は俺に武史に対する本音を漏らすようになってきたんだ。」
「…どんな?」
「久美子は武史が小さい時…つまり、そんなに悪くなる前から親しいから、武史がそんな感じになった後、武史の周りから離れる奴が多い中、久美子は自分といる時にはどちらかと言えば優しい武史と、評判の悪い武史のどちらが本当の武史なのかという迷いと、自分が武史から離れ、武史が完全に孤立した時にどうなるのか…もしかしたら自分にも何かしてくるのではないかって言う不安から、なかなか武史と距離を置く事が出来なかったらしい。」
「…。」
あゆみは声を出さず、俺の方を向いたまま話を聞いていた。
「その話を聞いた俺は武史との接触を試みたんだ。武史は最初、急に近付いてきた俺の事を疑っているようだったが、その後は3人で話をする事も増えた。」
「…。」
「だけど、そうしてまた時間が経った俺が中学3年の夏休み、久美子は急に俺だけを呼び出し、俺の事が好きだって言ってきたんだ。」
「えっ?!」
あゆみは少し動揺したが、動揺を抑え隠すように俺に向けた視線を外し、うつむくように顔を落として言葉を続けた。
「…それで、どうしたの…?」
「…『久美子の気持ちには応える事が出来ない』と断った。」
「…それで?」
「…。」
俺の様子と話の流れから悪い結果を察知したのか、この時あゆみが俺の腕を掴んで来た。
「それが久美子と会う最後の機会になってしまった…。」
「…?」
「2学期に入る前、久美子は俺の知らない間にどこかへ引っ越してしまったんだ。」
「それは…直也にフラれちゃった…からとか?」
「あぁ…それも少し関係してる…。」
「…どういう事?」
「ここから先はその後に武史から聞いた話になるんだけど、その次の日…久美子は武史にその事を正直に言ったらしいんだ。」
「…。」
「その場では何も無かったらしいんだけど、武史は自分より付き合いの短い俺の事を選んだ事が不快で、久美子が自分を裏切ったと言う感じる気持ちと、俺さえいなければと言う気持ちが日増しに強くなって…。俺をボコボコにするか、それとも精神的なダメージを与えるかで迷った末にあいつは…。」
「…。」
「武史は…久美子を…レイ○してしまったんだ。」
「嘘っ?!…そんな…。」
その言葉にあゆみはショックを隠し切れず、俺の腕を掴む力が増した。
「武史はすぐに学校にその事実を自ら学校へ伝え、俺の前から姿を消した…。しかし学校側はそれを隠し、完全に封印される形になってしまった。」
「そんな…久美子ちゃんって子の両親は何も…?」
「…それは分からない。」
「そう…。」
「もしかしたら、久美子の両親も久美子がそういう被害に遭った事を公に知られるのを避けるため、学校側へ頼んだのかも知れない。中学2年でそんな目に遭わされた訳だから…。だけど、俺には納得出来る訳はなかった…。」
するとあゆみは思い出したように、
「それでさっき、警察の人に『その頃、その男は何かをした事は…』って聞かれた時、ちょっと口ごもってたんだ…。」
「…あぁ。」
「…でも、それにしても…どうしてあの武史って人、私が直也の知り合いって知ってたんだろう?」
「それは…詳しい事は言えないけど、武史はあゆみの存在を知っているんだ…。いつか…いつか絶対に話すから、今はこれ以上聞かないで欲しい。」
「直也…。うん…わかった…。ありがとう、直也にとって苦しい過去を話してくれて…。」
俺のあまりに衝撃的な過去を知り、うつむいていた顔を上げると、あゆみは涙を流していた。
〔♪♪♪…〕
その時、あゆみの携帯が鳴った。
「家からだ…たぶん親からだ。」
〔ピッ〕
「もしもし…。」
“あゆみ!こんな時間まで一体何をやってるんだ?!”
静寂に包まれている中、あゆみの親父さんの怒鳴り声がはっきりと聞き取れる。
「ごめん、お父さん…もう帰るから…。」
あゆみは涙で震える声で言葉を返した。その様子にあゆみの親父さんも気が付いたらしく、急に声を落とし、
“…早く帰って来なさい。”
と、一言だけ続けて電話を切った。
〔ピッ〕
あゆみは携帯をポケットに入れると、ゆっくりと立ち上がった。
「…帰ろっか?」
無理をして笑顔を作ろうとするあゆみを見て、俺は黙ってうなずいた。
そして無言のままあゆみを家の近くまで送り、
「さすがに…俺と一緒にいるのが分かるとマズいからここで…。」
「うん。…今日は…。」
「もう…いいから。今日はゆっくり休みな…。」
「わかった…おやすみ…。」
「あぁ…おやすみ。」
あゆみは駆け足で家へと帰って行った。
俺も家に帰り、気付かれないように部屋へと戻った。
(武史の奴…急に姿を現したかと思えば、あゆみの事を完全に突き止めていたとは…。最後の一言も気になるし…厄介な事になる前になんとかしないと…。)
いろいろ考えているうちに俺は眠りについていた。
すると、どうやら夢を見始めたようだ。
[続く]