夜も11時を過ぎようという頃、ふと窓から外を見ていると、あゆみがうつむき加減で家に向かう方向とは逆方向へ歩いているのが見えた。
(あゆみがこんな時間に外にいるなんて珍しいな…。あゆみの親父さんは結構厳しい人だし、今日はバイトも休みだったしな…?声でも掛けてみるか。)
俺が家を出ると、既にあゆみの姿は見えなくなっていて、携帯を部屋に置いて来てしまった為、俺はあゆみが歩いていた道を早足で追い掛けてみる事にした。
(コンビニにでも行ったのかな?…でも、わざわざこんな時間に…?)
しかし…、
「い、いや…。」
営業時間を過ぎ、既に暗くなっているスーパーの屋上駐車場へ向かう通路から微かに女性の声が聞こえた気がした。
(今の声は…?)
そこをよく見てみると2人の姿があり、その1人の手にナイフのような物を持っているのが月明かりの反射で見えた。
敷地内へ入り、少しずつ近づいて行くとその話し声が聞こえてきた。
「……………お前、『加賀直也』の知り合いだな?」
「えっ?!」
(なんだって?!一体誰だ?)
「確か…あゆみとか言ったかな?」
「…あなたは一体…?」
襲われている女性はなんとあゆみらしい。
「おい…」
その言葉を聞いた俺はたまらず助けに入ろうとしたが…、
「ちっ、誰か来やがったか…。」
「俺に恨みがあると言うのなら、直接俺に来いよ?」
「何?直也なのか?」
「お前は誰だ?」
「ふざけるな!…俺の事を忘れたとは言わせねぇぞ?!」
声とその口調から、1人の男が俺の頭をよぎった。
「そ、その声は武史か?!」
「そうさ…3年ぶりだな。」
さらに近づくと、あゆみとナイフをあゆみに突き付ける武史の姿を確認した。
「な、直也?!…助けて。」
あゆみは震えながら細い声で助けを求めていた。
「そのナイフを離せ!」
「やっぱりこいつがあゆみって奴なんだな?」
「だったら何だと言うんだ?」
「ふん、予想はついてるんじゃねぇのか?」
「だったら…何としてでもあゆみを守ってみせる。」
「けっ!久美子を守ってやらなかったお前がか?笑わせるな!」
「くっ…。」
(久美子…。)
俺は何も言葉を返せなかった。
「久美子は俺と一緒にいる時もずっとお前の話ばかりしてた…それだけお前の事が好きだったんだろう。」
「…。」
「それなのにお前は…。」
「それは仕方ない事だろう?だからってお前があんな事を…。」
俺のその言葉に武史は持っているナイフをさらにあゆみに近づける。
「卑怯だぞ!」
「おっと…あまりデカイ声出すんじゃねぇよ。まさか人を呼ぼうとしてるわけじゃねぇよな?」
「…。」
「いくらカッコつけていても、所詮お前はそんな奴なんだよ。」
「くっ…わかった。上で話そう…。」
「ふっ…まぁいいだろう。」
武史は既に声も出せず無抵抗なあゆみを強引に引き連れ、屋上の駐車場へ上がって行き、俺も黙ったままそれについていった。
(くそっ…いくら時間を掛けた所で状況は何も変わらねぇ。こうなったら危険でも正面から突っ込むしかねぇか…?そうすれば武史も俺の方へ注意が向く、その隙にうまくあゆみを助ける事が出来れば…。)
他に良い考えを思いつく時間も余裕もなく、屋上へと着いてしまった。
「さぁ直也、話って奴を聞かせてもらおうか?」
「武史…俺もあんな事があってこれまでの3年間、何もしてなかった訳じゃない…。」
「けっ…何を言い出すかと思えば、まだそんな強がりを…。」
俺は武史の言葉を無視するように、あゆみに声を掛けた。
「あゆみ…今からそいつに飛び掛かる。絶対、あゆみには手を出させないから。俺の事…信じてくれるか?」
もう既に放心状態なあゆみだったが、なんとか出来る限りの笑顔を浮かべ頷いてくれた。
「いい加減にしろよ…。」
武史が喋っている間に俺は一直線に武史に向かって突進し、一瞬油断した武史のナイフを振り落とす事に成功した。
「あゆみ、今のうちに離れるんだ!」
あゆみは恐怖で震える足でなんとか武史の落としたナイフを拾い、組み合っている俺達から離れた場所で倒れるように座り込んだ。
それを見て少し安心した俺は、逆に武史のパンチを一発受けてしまった。
しかし、ナイフを失った武史は諦めたのか溜め息を一つつき、口を開いた。
「なるほど…まんざらでも無かったようだな。」
「ぐっ…。」
「ふん、これで終わりだと思うなよ…。」
不気味な言葉を言い残し、武史は下へと駆け降りて行った。
俺は即座にあゆみの元へと駆け寄り、あゆみの隣に腰を落とした。
極限の緊張と恐怖から解放された安堵感にあゆみは持っていたナイフを落とすと、俺にしがみついて泣き出してしまった。
俺は何も言わず、そのままあゆみの様子が落ち着くのを待った。
その間に武史はバイクで爆音を響かせ、どこかへ走り去っていったようだ。
[続く]
(あゆみがこんな時間に外にいるなんて珍しいな…。あゆみの親父さんは結構厳しい人だし、今日はバイトも休みだったしな…?声でも掛けてみるか。)
俺が家を出ると、既にあゆみの姿は見えなくなっていて、携帯を部屋に置いて来てしまった為、俺はあゆみが歩いていた道を早足で追い掛けてみる事にした。
(コンビニにでも行ったのかな?…でも、わざわざこんな時間に…?)
しかし…、
「い、いや…。」
営業時間を過ぎ、既に暗くなっているスーパーの屋上駐車場へ向かう通路から微かに女性の声が聞こえた気がした。
(今の声は…?)
そこをよく見てみると2人の姿があり、その1人の手にナイフのような物を持っているのが月明かりの反射で見えた。
敷地内へ入り、少しずつ近づいて行くとその話し声が聞こえてきた。
「……………お前、『加賀直也』の知り合いだな?」
「えっ?!」
(なんだって?!一体誰だ?)
「確か…あゆみとか言ったかな?」
「…あなたは一体…?」
襲われている女性はなんとあゆみらしい。
「おい…」
その言葉を聞いた俺はたまらず助けに入ろうとしたが…、
「ちっ、誰か来やがったか…。」
「俺に恨みがあると言うのなら、直接俺に来いよ?」
「何?直也なのか?」
「お前は誰だ?」
「ふざけるな!…俺の事を忘れたとは言わせねぇぞ?!」
声とその口調から、1人の男が俺の頭をよぎった。
「そ、その声は武史か?!」
「そうさ…3年ぶりだな。」
さらに近づくと、あゆみとナイフをあゆみに突き付ける武史の姿を確認した。
「な、直也?!…助けて。」
あゆみは震えながら細い声で助けを求めていた。
「そのナイフを離せ!」
「やっぱりこいつがあゆみって奴なんだな?」
「だったら何だと言うんだ?」
「ふん、予想はついてるんじゃねぇのか?」
「だったら…何としてでもあゆみを守ってみせる。」
「けっ!久美子を守ってやらなかったお前がか?笑わせるな!」
「くっ…。」
(久美子…。)
俺は何も言葉を返せなかった。
「久美子は俺と一緒にいる時もずっとお前の話ばかりしてた…それだけお前の事が好きだったんだろう。」
「…。」
「それなのにお前は…。」
「それは仕方ない事だろう?だからってお前があんな事を…。」
俺のその言葉に武史は持っているナイフをさらにあゆみに近づける。
「卑怯だぞ!」
「おっと…あまりデカイ声出すんじゃねぇよ。まさか人を呼ぼうとしてるわけじゃねぇよな?」
「…。」
「いくらカッコつけていても、所詮お前はそんな奴なんだよ。」
「くっ…わかった。上で話そう…。」
「ふっ…まぁいいだろう。」
武史は既に声も出せず無抵抗なあゆみを強引に引き連れ、屋上の駐車場へ上がって行き、俺も黙ったままそれについていった。
(くそっ…いくら時間を掛けた所で状況は何も変わらねぇ。こうなったら危険でも正面から突っ込むしかねぇか…?そうすれば武史も俺の方へ注意が向く、その隙にうまくあゆみを助ける事が出来れば…。)
他に良い考えを思いつく時間も余裕もなく、屋上へと着いてしまった。
「さぁ直也、話って奴を聞かせてもらおうか?」
「武史…俺もあんな事があってこれまでの3年間、何もしてなかった訳じゃない…。」
「けっ…何を言い出すかと思えば、まだそんな強がりを…。」
俺は武史の言葉を無視するように、あゆみに声を掛けた。
「あゆみ…今からそいつに飛び掛かる。絶対、あゆみには手を出させないから。俺の事…信じてくれるか?」
もう既に放心状態なあゆみだったが、なんとか出来る限りの笑顔を浮かべ頷いてくれた。
「いい加減にしろよ…。」
武史が喋っている間に俺は一直線に武史に向かって突進し、一瞬油断した武史のナイフを振り落とす事に成功した。
「あゆみ、今のうちに離れるんだ!」
あゆみは恐怖で震える足でなんとか武史の落としたナイフを拾い、組み合っている俺達から離れた場所で倒れるように座り込んだ。
それを見て少し安心した俺は、逆に武史のパンチを一発受けてしまった。
しかし、ナイフを失った武史は諦めたのか溜め息を一つつき、口を開いた。
「なるほど…まんざらでも無かったようだな。」
「ぐっ…。」
「ふん、これで終わりだと思うなよ…。」
不気味な言葉を言い残し、武史は下へと駆け降りて行った。
俺は即座にあゆみの元へと駆け寄り、あゆみの隣に腰を落とした。
極限の緊張と恐怖から解放された安堵感にあゆみは持っていたナイフを落とすと、俺にしがみついて泣き出してしまった。
俺は何も言わず、そのままあゆみの様子が落ち着くのを待った。
その間に武史はバイクで爆音を響かせ、どこかへ走り去っていったようだ。
[続く]