(ふぁ~、もう朝か…。そう言えば明日、神社で夏祭りがあるんだったな。本当はあゆみと2人で行きたいけどそんな事出来無いしな…今年も修司と雅恵と4人で行くか。)

そこで俺は『PIT・IN』にいつもより早く行き、着替えを済ませた後、あゆみがくるのを待った。そしてあゆみがやって来たのだが…。

「…おはよう、直也。」
「よう。明日の夏祭りだけど、また4人で行かないか?」
「…うん、行く。」
「じゃ、夜の7時位で良いか?」
「…うん、いいよ。」

あゆみらしくもなく、ずっと下を向いたまま俺の話を聞いていた。

「どうしたんだ?具合でも悪いのか?」
「えっ?…うん、大丈夫。…心配しないで。」
(どうしたんだ?明らかに様子がおかしいぞ?)
「…それじゃ私着替えてくるね。」
「あ、あぁ…。」
(俺に何か隠し事でもあるのかな…?なんだか態度がよそよそしいような…。)

あゆみが着替えに行った後すぐ、鈴音さんが店にやって来た。

「おはよう、直也君。」
「おはようございます、鈴音さん。」

突然鈴音さんは小声で話し掛けてきた。
“ねぇねぇ、明日の夏祭りは当然あゆみちゃんを誘うわよね?”
“はい、もう誘いました。”
“へぇ…直也君って意外と積極的なんだ?”
“別に積極的って程じゃ…。”
(それに2人きりでって訳じゃないし…はぁ。)

鈴音さんならあゆみの事を何か知っているかと思い、一応聞いてみる事にした。
“鈴音さん、何だかあゆみの様子がおかしいみたいなんですけど…何か知りません?”
“さあ…?私は知らないわ。それに知っていてもたぶん教えないと思うけど。”
“あっ…そうですよね。すみません。”
(うかつな事を聞いてしまったな…。)
“ううん…でもね直也君、悩みを全部自分で抱え込んじゃう子もいるから。もしかしたら、あゆみちゃんもそうなのかも知れないわよ?”
“そっか…。”
“直也君、優しく包んであげなさい。そうすれば…ね?”
“はい。”

鈴音さんに励まされ、自然と気合いが入ってきた。

「じゃあ、今日も頑張ろうね。」
「はい。」

バイト中、あゆみの様子はいつもと変わらない様に見えた。

(どうなんだろう…?)

しかし、バイトが終わるとあゆみは俺に声も掛けずに、さっさと店を出ていってしまった。

(昨日までこんな事一度も無かったのに…絶対変だよな。)

俺は帰る途中、修司と雅恵に携帯で電話を掛けることにした。

(まずは修司だな。)
〔♪♪♪…〕
“もしもし。”
「誰だ…お前は?」
“お前なぁ…。全く…珍しく電話を掛けてきて久しぶりに声を聞けば…。それで一体何の用だ?”
「明日の夏祭り、また4人で行かないか?」
“お前…本気で言ってるのか?!去年、お前を連れて行く為にあゆみと雅恵がどれだけ苦労していたか覚えてるか?”

俺はこの時に去年の夏祭りの事を思い出した。

「はっはっは。あの時ははっきり言って怖かったぜ。あの2人、無理矢理にでも連れて行こうと本気で引きずって行くんだからな。」
“そんなお前から誘って来るなんてな?”
「ふん…悪かったな。今年は高校最後の夏休みだからな。時間がもったいなく感じるんだよ。」
“ほう、たまには筋の通った事を言うじゃないか?”
「『たまに』は余計だ。それより明日どうなんだ?」
“別に構わないぜ。”
「じゃあ夜7時に神社でな。」
“あぁ、わかった。”
「じゃあな。」
〔ピッ〕

(あとは雅恵にも…どうせ同じ事を言われるだろうけど…。)
〔♪♪♪…〕
“わっ!!”
「うわっ?!」
“わーい、驚いた驚いた。”
「おいおい…冗談きついぜ…。」
“ごめ~ん。で、どうしたの直也?”

いつでもマイペースな雅恵にペースを狂わされていた。

「あっ、そうそう。明日の夏祭り、また4人で行かないか?」
“え~っ?!直也から誘って来るなんてびっくり!”
(ははは…やっぱりな。)
「去年は悪かったな。」
“あぁ、あれね…覚えてたんだ?…で、何時に?”
「夜7時に神社で会おうぜ?」
“うん、分かった。楽しみにしてるね。”
〔ピッ〕
(よし、これでOKだな。)

そして夜、寝ようとした時、

〔♪♪♪…〕

あゆみから電話が掛かってきた。

(何だこんな時間に?)
〔ピッ〕
「どうしたんだ?こんな時間に?」
“ごめんね。もしかして寝てたかな?”
「いや、まだ寝てなかったけど。どうかしたのか?」
“明日なんだけど、何着ていけば良いかと思って。”
「何でも良いんじゃないか?」
“浴衣にしようかな?”
「いいねぇ。まぁ俺はいつも通りの格好で行くけど。」
“じゃあ浴衣にするね。明日神社でね。おやすみ。”
〔ピッ〕
(電話でも別にあゆみの様子は普通なんだけどな。…さてと、もう寝るか。)

そして翌日、俺は携帯の着信音で目を覚ました。

[続く]