僕は誰にも縛られない



これでもかというほど
自分に縛られていますから

これ以上他のものに縛られては
生きていけないのです




恋人はいりません

結婚もしません





僕は僕と生きていくのです




そうでないと
学校生活が
社会が
世の中が
苦痛なものにしかなり得ない


そう思えます






やはり僕は何も変わってなどいません


まわりの人間とは一線、
いや
二線、
三線と距離を置かずにはいられないのです



その線を越えて
踏み込んでくる者に
僕はどう対処すればよいのか
見当もつきません


受け入れるべきなのでしょうか
放置するべきなのでしょうか
殺すべきなのでしょうか







彼は支配者に従順だった


哀れなほどに






彼は支配者のサディズムに
疑問ひとつ抱かずに

ただ身を委ねていた







支配者は言う

「死ね」と




彼は錆び付いたナイフで
首を裂く



錆び付いたナイフは
彼に死を与えない




彼は繰り返す


支配者の前で


無表情のまま







支配者は言う

笑みを浮かべながら



「生きろ」








彼は停止した



無表情のまま




赤い首を
骨ばった手で抑えた





赤が
溢れる






支配者は
嘲笑う





彼の小さく脈打つ心臓は

支配者の手の中に転がっていた





彼の心は凍てついていた


とはいえ決して頑丈ではない

ひどく薄い、水面の氷のよう





彼はずっと
焦げ茶色の前髪で
顔の左半分を覆っている



なにも知らないひとりの男が
彼の鬱陶しい前髪をかき上げる



男は絶句した

男は彼を突き飛ばした



彼の前髪の下は醜く膿んでいる




抉られた眼









彼の心は凍てついていた



何も言わずに
男の前から音もなく消え去る





彼は言葉を持たない


言葉は
彼のアタマから忘れ去られた









彼の心は凍てついていた




彼は無表情のまま
自らを切り刻む






















赤にまみれた彼は
静かに頭を抱える




赤にまみれた彼は
静かに眼を伏せる




赤にまみれた彼の前に

彼の支配者が現れた






美しくも醜い笑顔とともに







彼は
これから幕を開けるであろう惨劇を知っている








それでも
彼の心は凍てついていた