海外ドラマ『ヤング・ポープ』観ました。
ドラマの感想はネタバレ含みます。
保守派の枢機卿だったレニー(ジュード・ロウ)は、
アメリカ人として初の教皇・ピウス13世となりました。
あまりに若い教皇の誕生は、
コンクラーベでの権力争いによる逆張りのせい…
彼の師であるスペンサー枢機卿(ジェームズ・クロムウェル)が過激なので、
みなさん、御しやすそうなその弟子に投票したらしい…
しかし、実のところ、
この若い教皇はかなり過激な人物でした…
スカパーのスター・チャンネルで放送していたHBOのドラマです。
予告で使われている映像がどれもこれも絵画のようにバシッとキマッてて、
観てみることにしました。
どうやって撮影したんだろうと思う、
ヴァチカンのいろんなショットは、
ほとんどセットを組んだそうで、
スター・チャンネルで放送していたメイキング映像もおもしろかった!
サッカーをするシスターや、
祭壇や宗教画とネオンが合わさったオープニングショットなど、
モダンな演出もユーモラス。
一番は、レニーが待ちに待った宝冠を取り戻し、
最高の教皇の礼服に着替えるシーンに、
LMFAOの『I'm sexy I know it』がかかるところ。
爆笑したwww
(≧▽≦)アハハ
レニーの若くてハンサムな野心家という雰囲気とはうらはらに、
めちゃくちゃ過激な保守勢力だというのがね…
きっとこのドラマが撮影されていた頃よりも、
今の方がずっとこの危険な内容が実感できてしまって怖い部分もありましたね…
カトリック信者の中絶禁止の話題とかね。
なにを根拠に…とずっと思ってましたが、
意外な聖書の引用から来ていて、
ほとんど言いがかりやないか…と驚きました。
そんな問答から一周まわって、後半に向かって、
彼が標準的なクリスチャンの若者なんだとわかる感じが、
個人的にはちょっとおもしろかったです。
彼が両手を広げて本気で祈ると、
ときどき奇蹟が起きるんですけど、
そのことについて、
本当に保守の野心家ならめちゃくちゃ自慢してまわると思うんですよ。
でもそうしない。
「理解できないことについて話したくない」と彼は話を遮るのです。
何度か枢機卿や司祭たちから、
彼は信仰を失っていると言われますが、
実のところ、信じてなければ祈ることはないわけで、
信仰を失っているというより、
反抗期のこどもみたいなんですよね。
だから、祈るときも、ああしてください、こうしてくださいではなく、
「⚪⚪についてあなたと話をする必要がある!」と、
まるで天を脅迫するように叫ぶ。
そこがおもしろかった。
レニーがこどもの頃、友達のお母さんが重い病気に罹ったとき、
「祈っていいですか?」と言って祈るシーンがあるんですが、
いつもの、両手を広げて胸を反らすポーズで、
この人、ちっちゃい頃からこのポーズでお祈りするんやwwwとウケました。
(≧▽≦)アハハ
そして、このお祈りがきっかけで、
レニーが列聖される(聖人に認定されること)という話題の時。
奇蹟を起こしたことよりも、
「困ったときに、当局に訴えるのではなく、神様にお祈りした」から、
聖人なんだという表現があって、
わ~、わかるわ~ってなって。
たとえば、クリスチャンは復讐を自分でしちゃいかんのです。
神様にお祈りして、あとは任せる。
前にも書いたけど、
キリスト教徒は屠られる羊、
災難にも虐殺にも身を委ねるしかないのです。
自分でなんとかできると思うのは傲慢なんです。
ジーザスが無実の罪で処刑されてからずっと、
初期教会から本格的なクリスチャンとはそういうもの。
レニーがやりたかった、
「本格的なヴァチカン改革」はまさにそれ…
でもそういう教義は権力者に利用されやすい。
お上に逆らわないってことだから。
それで中世のキリスト教は世俗の権力者と結び付いて、
あり得ないくらい堕落したんです…
だから、基本に戻りたいという意気込みはわかるが、
歴史からはちゃんと学ばないといけないよと思ってさ。
こういう“逆張り”が真実だと思いたいお年頃ってありますが、
失敗例から学ぶ謙虚さはいつでも必要だよ!
ほかにも、いろんな事情のある神父や枢機卿が出てきて、
台詞では説明されない、
いろんな生活がヴァチカンにあるのも興味深かった。
敵か味方かヴォイエッロ枢機卿、いい味だしてた。
レニーの師匠のスペンサー枢機卿も、
最初はクソ野郎と思ってたけど、
話を聞いたら意外にしっかりした考えの持ち主で、
彼の死の床でレニーがこどものように泣いてしまうシーンはめちゃくちゃ良かった。
レニーが信頼しているグティエレス神父もとても良かったです。
善良だけど臆病な彼は、はじめは無害という点でレニーに気に入られますが、
ニューヨーク教区のセクハラ神父の調査に派遣されて、
ひとまわりも、ふたまわりも成長します。
アパートの大家さんと親交を深めたり(ヴァチカンの外を知らないと言ってた彼はたぶんよくわからないままにこの古い安宿に泊まることになったんだろうなあと想像できる)、
スケートに行ったり(スケート靴のブレードを磨くシーンなかなか驚いた。
マイシューズかよ(≧▽≦)アハハ)、
セクハラ神父に狙われてる若者と仲良くなったり(美人局を持ちかけるという狡猾さもあったり。よくないけど!)。
そして、レニーに同性愛者への弾圧をやめるよう忠言できるくらい強くなる!
レニーとは別の方向に未熟な彼でしたが、
みんなが彼をなんとなく慕う感じも良かった。
ほんとうに善良なんですよね…
引きで考えてみたら、
この物語で一番善良な人物がゲイだというのも興味深いな。
レニーはヴァチカンからゲイの人を一掃しようとしたのに、
それは間違ってると、
あらすじの方向からツッコミをいれてるみたいでさ。
こんなふうに、
主人公と物語の流れとのあいだに距離があることを文学用語でアイロニーというのですが、
このドラマはそれが極まってるせいで、
一見するとこの主人公はなにがしたいのかわからない。
そこがちょっとおもしろいなと思いました。
欲を言えば、ダイアン・キートン扮するシスター・メアリーにもうちょっと活躍してほしかったかな。
わりと、ふさわしいエンディングを迎えたかと思われるこのドラマ、
なぜか続編があるそうです。
そっちもスター・チャンネルでやってたので、
また観てみたいと思います。
へっぽこハンターコトワでした!
(^o^ゞ
しかし、このドラマ…
クリスチャン以外に需要があるんだろうか…と思わなくもないよ!
(≧▽≦)アハハ