笑い飯の優勝で幕を閉じました。
スリムクラブの方が面白かった、という声もよく聞きますし、俺自身もそう思うんですが、M-1という大会の締めくくりとしては笑い飯の優勝がふさわしかったんじゃないかと思います。
これだけM-1という大会が大きなものになったことには、笑い飯の9年連続決勝進出ということも少なからず関わっていると思いますし、笑い飯の二人がM-1を盛り上げてきたことは事実ですからね。
最後の松本のコメントも、そのまま受け取れば批判の対象になるでしょうが、松本がそんな単純な審査をする人だとはとても思えないですし、あの限られた時間で自身の審査理由を簡潔に述べるには、ああ言うしかなかったんでしょう、と俺は思ってます。
1.カナリア
正直、とても面白かった。最後の畳み掛けも良かったし、笑いの量という点では今回の9組の中では結構上の方じゃなかったかと思う。
しかしトップバッターという不利が働いてしまった故、最下位に落ち着いてしまったんでしょうね。
そしてやはりネタ自体が漫才の大会にはふさわしくなかった。
コント漫才を漫才じゃないと評する人がいますし、俺も多少そういう考え方を持っていますが、このカナリアの漫才はコント漫才以上に漫才ではない。
ボケとツッコミがない上に、極端な言い方をすれば、ただドレミの歌の替え歌を歌っているだけ。
面白いけど、このネタをM-1でやるべきではなかった、というのが正直な感想ですね。
2.ジャルジャル
なんともジャルジャルらしい漫才。
個人的には高評価をあげたいんですが、カウス師匠の79点が響きましたね。
確かに評価の難しい漫才であるし、いわゆるメタ漫才と言えるような漫才であったことを思うと、非常に実験的かつ挑戦的な漫才だったと言えるでしょう。
これを漫才と言っていいのか、というようなことを審査員の誰かが述べていましたが、正直そのコメントにはかなり疑問を抱きました。
漫才という線引きがどこでなされているのか。
これを漫才でないというならば、過去のM-1にも漫才でない漫才が多数存在していました。
いったい、審査員の人にとって漫才か否かの境界はどこにあるのかな、ということを思った漫才でした。
また、何よりもジャルジャルがコント師という印象が非常に強くなっていることも多少は影響したのかもしれないですね。
個人的には、もう少し評価されても良かったんじゃないかと残念な気持ちが強いです。
3.スリムクラブ
まず、あまりの斬新さに度肝を抜かれました。
まさにダークホースというにふさわしい会場のかき回しっぷり。
4分という短い時間にいかにボケ数を詰め込むか、ということがM-1での定石になっていましたし、それはこの最後のM-1までずっと受け継がれてきた考えでした。
おそらくほとんどのコンビの頭の中には、とにかくボケ数を詰め込むということが第一にあったように思います。
そんな考え方を破壊し、さらに爆発的なウケまでさらってのけたスリムクラブ。
この段階で強烈な印象を残したことは間違いないですね。
間を効果的に使うコンビは他にPGBがいますが、PGBよりも間の使い方が極端ですね。
できれば10分くらいの長尺でみたいな、と思わせるネタでした。
4.銀シャリ
スリムクラブの後の割にはかなり頑張ったな、という印象。
ようやくでてきた正統派漫才。
前の3組が変化球ばかりだったので、割と好意的に受け入れられたのではないかと思います。
もし来年もM-1が続いていたのならファイナリストの常連組になっていたんじゃないでしょうか。
橋本のツッコミが相変わらず冴えており、審査員からも好評価。
ただやっぱり、単なる昭和の漫才じゃなくて、昭和のテイストを残しながらも新しい何かとしてプラスアルファがあるような漫才ができるようになれば、もっと上に行けるでしょうね。
baseの中でも、最も今後の伸びしろがありそうなコンビではあります。
5.ナイツ
紹介VTRで、ネタのつくりを変えたというようなことを言っていたので期待したんですが、いまいちでしたね。
確かに巧いことには巧いんですが、うますぎるんですよね。
最初のフリを後半でうまく活用するという構成は面白かったんですが、それほどウケはなかったように思います。
今年にしろ、去年にしろ、毎年面白い試みを正統派漫才の中に組み入れているナイツなんですが、結局のところ初登場時を超えることが出来ていないというのが個人的な印象です。
変化球漫才が多い今大会で、さらに前の銀シャリがドストレートの正統派漫才をやってのけたので、この変わった構成の正統派漫才でさえ、変化球ととられてしまったんじゃないでしょうか。
銀シャリの点数にあと一歩及ばなかったのも納得はいきます。
技術面では銀シャリに勝っていますが、少し勝負に出過ぎましたね……。
6.笑い飯
去年の成功に味を示して、的なネタ選択。
当然去年の鳥人のインパクトには欠けます。
しかし単なる二番煎じではなく、しっかりとしたネタとして仕上げてきているのはさすがに笑い飯、といったところですね。
サンタとミノタウルスが合わさって、サンタウロスという発想はやっぱりすごい。
もし去年鳥人じゃなくて、このサンタウロスネタを見ていたらもっと強い印象を受けていたんじゃないかと思います。
去年の鳥人ネタをベースにしているだけ合って、改善面はちゃんと改善されているし、活かすところは活かされており、総じて出来はよかったです。
7.ハライチ
全体的に空回りしていましたね。
かなり期待していたんですが……。
去年にはなかった、かぶせも多かったんですが、それがすべて空回りしていて、途中から見ていられなかったです。
去年はめちゃくちゃ笑った記憶があるんですが、今年はそんなに笑えませんでした。
最近見たハライチのネタでも、十分笑わせてもらったので、これは単にこのネタのパターンに飽きたからじゃなくて、彼らがM-1用になした試みが単にうまくいかなかったからでしょうね。
もっと伸びしろのあるネタではあると思うんですが、去年から改善、どころかむしろいじくりすぎて改悪されているんじゃないかとさえ思ってしまうネタでした。
8.ピース
これは点数が高すぎですね。
これならジャルジャルの方が上じゃないかと思うんですが、カウス師匠が95点もいれちゃったのでこんな点数になりました。
特にこれといって書くこともないような極々普通の漫才。
仮にカウス師匠がジャルジャルとピースに同じ点数、85点をつけたとしたら
ジャルジャル→606+6=612
ピース→629-10=619
と、まあ許容できるくらいの点差になるんですよね。
今回はとにかくカウス師匠が思い切った審査をした大会にはなりましたね。
個人的には、そもそもこのピースのネタは決勝に残るレベルのものでさえないとは思ったんですが。
タイムマシーン3号とか磁石とか他にも選択肢はあったろうに、なぜピース?
9.パンクブーブー
敗者復活組はパンクブーブー。
まあ予選順位で9位だったんですから、順当っちゃ順当ですよね。
でも最後の大会なんだから決勝未経験のコンビにチャンスを与えてあげてもよかったんじゃないかと思います。
どうせファイナリスト選びも、視聴率の影響を考慮して、ジャルジャルとかピースを選んだという部分も多少はあるんでしょうし、敗者復活組の選考でも、結果をそのまま反映しない優しさがあってもよかったんじゃないかとは思ってます。
パンクブーブーのネタは去年とはガラッと変わって、正統派ながらも変化球の漫才。
個人的には去年よりも数段出来がよかったんじゃないかと思いました。
笑い飯と同点でしたが、実際のところ+10くらいで考えてもいいでしょう。
笑い飯の部分ではインフレが起こったという面もあるでしょうし。
実際、点数ではパンクブーブーが1位、という審査員のほうが多かったので。
これぞ王者の貫禄、という漫才でした。
去年のノンスタではそれほども感じ無かったものが、ここにはありました。
[最終決戦]
スリムクラブはパターンこそは同じだったんですが、部分部分を変えてきていて、総じて言えば一本目よりもうけていたんじゃないかと思います。
これで思い出すのが2年前のオードリー。
敗者復活かどうかの違いこそはあれ、非常に両者のM-1での立ち位置は似ていますね。
ウケはあるが、優勝させるべきじゃない、という空気がどことなく流れているコンビ。
最終審査でも最初の二人くらいはオードリーに入れていて、本当にオードリーが優勝しちゃうんじゃないの、と一瞬思ってしまったことまで今回のスリムクラブに似ています。
カウス師匠と宮迫がスリムクラブに入れていて、もしかすると、なんて一瞬思ってしまいましたからね。
優勝はしなくとも、印象は十分に残しましたし、仕事のオファーもグッと増えるでしょう……。
彼らも優勝できるといいな、くらいの考えだったと思いますし、ある程度空気を読んでいた部分もあるんじゃないかと思います。
笑い飯はやはり一本目には劣るネタを最終決戦でぶつけてきますね。
しかし去年と違って、今年は本気で勝負に来ているな、ということを感じさせるネタでもありました。
いつも最終決戦では変化球をぶつけてきていた笑い飯がはじめて本気で勝負したということが感じられ、そういう意味ではちょっとジーンときました。
パンクブーブーは一本目とどこが違うのか全くわからない。
パターンが同じだけなら別にいいんですが、一本目のネタのワードを少しいじって、再演したかのようなネタでがっかり。
ネタ時間もちょっと短く感じられたし、そもそもやる気がないんじゃないかとさえ思いました。
M-1最後のネタがこれって、ほんとに興醒め。
まったく勝負の意識が見えない漫才で、もうM-1に対する冒涜としか思えませんでした。
こんなくそ下らないことをするコンビを敗者復活からあげるのなら、本気で決勝に何かを賭けようとしているコンビたちにチャンスを上げて欲しかった。
オンバト時代からパンクブーブーは割と好きな方だったんですが、もう今回のことばかりはほんとにがっかりですね。
もう、今後俺は漫才師として彼らを評価できないようにさえ思います。
それくらいがっかりだった一ネタ。
最終的には笑い飯の優勝で安心。
スリムクラブも準優勝という位置のほうが、もしかすると後々のためにはいいかもしれませんね。
西田の「やっとやー」という言葉が、その時点での彼らの心境をストレートに表した言葉のようで、見ているこちらもジーンと来ました。
確かにスリムクラブも面白かったんですが、やっぱりM-1ファンは笑い飯の優勝を望んでいたんじゃないかと思います。
一瞬、スリムクラブに気持ちが傾いたこともあったんですが、やっぱり笑い飯の二本目のネタに心意気を感じて、最後は笑い飯の優勝を願っていました。
ただ、スリムクラブの今後の活躍にも十分期待したいです。
ショートネタブームの終焉を感じさせるネタではありましたね……。
最後に個人的評価を。
評価は一本目のネタのみです。
1.パンクブーブー 96点
2.スリムクラブ 95点
3.笑い飯 94点
4.銀シャリ 92点
5.ナイツ 89点
6.ハライチ 88点
7.ジャルジャル 86点
8.ピース 85点
9.カナリア 84点
カナリアは点数こそは低いですが、ただただ面白かった、ということだけは付け加えておきたいです。