審判をしていると、自分が下した判定が、結果的にその試合の行方を決めてしまったということがあります。NFLでは審判の判定についてビデオで審判にリプレイを依頼できる「チャレンジ」という制度がありますが、アメリカのカレッジはもちろん、日本でもリプレイによる判定の見直しはありません。

それでは、誤った判断を下さないために、審判はどうしているのでしょうか。私が心掛けているのは、まぎらわしいプレイの判定には、一度ゲームを止め、判定した審判と彼の近くにいた審判を呼び、そのプレイの再確認をします。例えば反則のイエローフラッグは、一度出しても取り消すことができますが、アピールを受けてからフラッグを出すことはできません。反則の判定のほかにも、TDか手前でのニーダウンか、独走プレイ中のサイドラインを割ったか割らなかったか、パスの成功・不成功などが試合中最も注意を要する局面でしょう。

TDかニーダウンかの協議を再現してみましょう。普段は聴くことができない会話ですよ。

R(レフリー)は、判定に絡んだHL(ヘッドラインズマン=チェーン側)、LJ(ラインジャッジ=HLの反対側)、U(アンパイア=守備側のLBの後)を呼びます。
R「今のプレイ、ボールがゴールラインを越えるのと、ニーダウンはどっちが早かった?」
U「私の位置からはボールはゴールラインを割ってました」
HL「ランナーの膝がついた後にボールを前に突き出してました」
LJ「私の位置からはブロッカーでランナーの膝は見えませんでしたが、ボールはゴールラインを越えていました」
R「OK、ではニーダウンが先ってことで判定します」

この後、Rはメインスタンドに向かって「ただいまのプレイはランナーの膝が先にグランドについていましたので、次のダウンを行います」と説明、ゲームを再開します。

多少時間がかかっても正確な判定を心掛けることが、ベンチや観客からも信頼されることになるのです。

【追記】

アメフトは1回ずつダウンという攻撃を重ねて試合が進行します。従ってプレイの結果や反則の判定、パスの成功・不成功の判定は1つのダウンで完結する決まりになっているのです。先に書いた通りNFLを除いて終了したダウンを見直すことはありません。いくら場内でリプレイの映像が流れようと、終わってしまったダウンを「巻き戻す」ことはないのです。審判はもとより、プレイヤー、ベンチもそのことは十分承知して試合に臨んでいるのですから、OBや父兄を含めた観客の皆さんもそのことは理解して観戦を楽しんでもらいたいですね。