次のキックオフ、関学は時間を使いたくないか、一発リターンタッチダウンを狙うかの選択を迫られているだろう。私はリターナーの横位置のサイドライン上でロングリターンに備えてセットし、キックを待っていた。時計はリターン側がボールにタッチしてから動き出す。法政にしてみれば、できるだけ時間が消費され、かつリターンが短くて済むことが理想的なはずだ。

キックが蹴られた。空中に高く蹴りあげ弧を描くようなボールを予想していたが、なんと蹴られたのはゴロキック。関学のプレイヤーの間を転がったボールは、関学のリターナーがひざをついてキャッチ、時間は動かずにボールデッドとなった。法政にしてみれば、余りいい形のキックオフではなかった。それでもボールは関学の24yd地点だ。攻める側にとっては長い76ydが残っている。

第1ダウン、QB高橋はドロップバックからDEのチャージを避け、外側に出ながら15yd程でアウトにカットしたSEにパスを投げた。SEはキャッチし、そのままアウトオブバウンズへ。14ydsゲイン、ファーストダウン獲得、しかし12秒消費している。「時計は審判の(計時停止の)指示から4秒ほど進んでしまっていた。それを主審が見逃さず、きちんと残り時間を戻した」(「59秒の真実」より)。主審が場内にアナウンスし、試合再開、再び第1ダウン、エンドゾーンまでは62yds、残り47秒。
関学にはパスしかない。法政もそれは十分承知している。この攻撃は法政守備に軍配が上がり、QBのパスは失敗。時間は残り40秒となって第2ダウン。レシーバーをカバーされていたQBはスクランブルし、2ydsゲイン、時計は動いている。
第3ダウン、「セットしたらメンバー交代のミスでFBが入っていない。この大事な場面で10人しかフィールドにいない」(同)。時間を使いたくない関学はそのままボールをスナップ、QBはロールアウトし、レシーバーを捜す。また法政DBにカバーされている。QBは再びスクランブルし、リードブロッカーの好ブロックにも助けられて13ydsゲイン、ファーストダウンを獲得した。

時計はファーストダウン獲得で停まっているが、次のレディ・フォー・プレイで動き出す。両ベンチから慌ただしくサインが入る。ボールがセットされ、主審がレディ・フォー・プレイをかけようとした時には、攻守ともセットし終わっていた。まだハーフラインを少し法政陣内に入ったところだ。スナップされたボールはすぐにアウトカットしたSEに投げられ、そのままサイドラインを割った。6ydsゲインして、法政陣41yd、残りは16秒。
この41ydのうちの40ydを進まれても、その間に時間がなくなれば、法政の勝利になる。法政守備は長いパスを警戒し、深めにディープを配置、DLはQBにプレッシャーをかけようと殺到する。第2ダウン、ドロップバックしたQBは、きれいにできたパスポケットの中でロングレンジのレシーバーを捜すが、みなピッタリマークされている。右に回り込んだQBは「逆サイドから入ってくるレシーバーを探し、迷わず投げ込んだ」(同)。21ydsゲイン。しかしまたもインフィールドでデッドとなった。QBはボールデッドを確認するやすぐに両手で「T」の字を作り、タイムアウトを請求。ゴール前20ydで関学は最後のタイムアウトを使った。 (続く)


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