大好きって、大事 | NEWSの風

大好きって、大事

「大好きって大切なこと」


 山元加津子(石川県立小松瀬領養護学校教諭)

『致知』1997年11月号  特集「一道を拓く」より

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かおりちゃんは、精神薄弱児(この言葉も私は好きではありませんが)の

養護学校に変わったばかりのときに出会ったお子さんで、

笑ったり、泣いたり、怒ったりといった表情が、全くないといわれているお子さんでした。


つまり、話し言葉としての言葉を持っていないお子さんでした。



A君やBちゃんは、話したいのに上手に話せなくて自分の気持ちを

伝えられないというハンディを持っていましたから、

かおりちゃんが、口の機能が何ともないのに話さないというのは

何ともったいないんだろうと、私はそのとき思いました。



いまから思うと、私はそのとき、何もわかっていなかったなあと思います。



例えば体育の時間のときなど、私は体育には出ませんから、

「かおりちゃん、ここでバイバイね」と言うと、

あんなに笑ったり泣いたりしなかったかおりちゃんが、

涙をポロポロ流すようなこともあったのです。

そして、私のそばにいると、いつもニコニコと、笑顔でいるのです。



私とかおりちゃんはいつの間にか

お互いに真似をするほど親しくなっていきました。



ある日私が机の上から本を落として

「あーあ」と言ったとき、

そばにいたかおりちゃんも私の真似をして、

「あーあ」と言ったのです。


「すごい、かおりちゃん、お話した」と思って

私はうれしくてたまりませんでした。


かおりちゃんもとても喜んでくれました。


それは、お話ができたからではなくて、

私に喜んでもらえたことがうれしかったんだと思います。



それからかおりちゃんは「あ」も「い」も「う」も、

そして「ママ」という言葉も言うようになりました。

そのときにかおりちゃんのお母さんが連絡帳に

次のような言葉を書いてくれました。



「かおりに障害があるとわかった日から、

 いつか私のことをママと呼んでくれる日が来さえすれば、

 と思っていました。

 何も望まないから、せめて一度でいいから、と。





 でも町中で迷子になっても、泣くでもなく、私を探すでもなく、

 一人ポツンと立っていたかおり。

 そんなかおりを見て、私は、ママと呼んでくれることなど

 もう夢にも見なくなりました。 考えもしなくなりました。



 十四歳の誕生日の前に、先生とかおりの愛情が

 奇跡を生んだと思います。

 先生、大好きってこんなに大切なことなんですね」



私はこのお母さんの言葉を読むまで、

どうしてかおりちゃんがお話ができるようになったのか

わかりませんでした。



そうだったんだ。


好きっていうことがこんなに大事だったのかと

私は思いました。

私たちは簡単に人に気持ちを伝えようとするけれども、

本当はそうじゃないんだ、とても大変なことなんだな、

と思いました。



人に気持ちを伝える、ということは、

相手もきっと聞いてくれるだろう、こっちも話したい、

そういう発する側と受け止め手が、本当にお互いに信頼し合わないと、

そして、平等にならないと、気持ちは伝え合わないんだな、

ということをかおりちゃんから教えてもらったと思います。

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最近、「優しい」という言葉に、惹かれますが、

「大好き」も良い言葉だなと思います。

大好きでなければ、何事も本気になれませんものね。


大好き、信頼、社会ではどうなのでしょう。

信頼なんて言葉は、年を追うごとに無くなっていき、

もし、耳で聞いた場合、なんの気持ちも込められていない、

言葉になっていると思うのですが。社会生活ではね。




あなたのことが大好き!の絵本50冊/赤木 かん子

ずーっと ずっと だいすきだよ (児童図書館・絵本の部屋)/ハンス ウィルヘルム


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