ダウンテンポのススメ | 小川充オフィシャルブログ

ダウンテンポのススメ

ここ数年のクロスオーヴァー・シーンは

ハウスやテクノの影響が強くて

BPMは大体120~130というのが多いです。

ブロークンビーツにしても

ダブステップにしてもそう。


確かにこのあたりのBPMは

踊るにはちょうどいいところで

何しろリスナーのダンスに対する

アドレナリンを放出させる効果もあります。


ただ、あまりにそうしたBPMのものばかり聴いていると

音楽的な部分からは逆に遠ざかってしまうことも事実です。

音感が麻痺していくというか・・・。

特にハウスやテクノなどの中でも

ミニマルなタイプの作品に没入していくと

いわゆるグルーヴからは離れていくことがあります。


さて、よく耳にしますが

グルーヴってそもそも何?

元来それはレコードの溝のことを指し

溝をレコード針がトレースしている状態を

「In The Groove」と言っていたのでした。

溝をしっかりととらえた針が通過する時に発生する強い音

それがグルーヴのある音なのです。


そうしたところから発展し

主にジャズとかファンク、ソウルといった

ブラック・ミュージックの世界で用いられるようになりました。

ここでのグルーヴ感があるというのは

ノリがある

うねる感じがあるというもので

それも横にスライドする感じのものです。

ブギーとか2ステップなどは

この横ノリのグルーヴが軸となっています。


James Brownの傑作ライヴ盤に

『In The Jungle Groove』というのがありますが

これはまさに音塊がグルーヴとなって

レコード針から汗と熱気をほとばしらせる

そんなアルバムです。

ブレイクビーツの概念もこのアルバムには存在しており

そうした意味でブレイクビーツとは

グルーヴを増幅させる為に編み出されたもの

ということができます。


最初にBPM120~130のものばかり聴いてると

グルーヴから離れていくということを書きましたが

正確に言えばこれは誤りです。

グルーヴとは別にBPMに左右されるものではなく

もちろんハウスやテクノにだって

グルーヴを感じさせる曲はたくさんあります。


人によって同じ曲でもグルーヴを感じたり

感じなかったりということもあります。

なのであくまで個人的なグルーヴ感についての話です。

僕自身は最近のハウスやテクノもチェックしてますし

DJの時にかけることもあります。

でも、個人的にはどうもグルーヴを感じさせる曲が少ないなと思っています。


恐らく今この手の曲が非常に多くて

それを右から左にどんどん聴いていくと

グルーヴに対する感覚が麻痺していくのではないかな

と思ったりします。


うねりとか波というのは

ビートとビートがぶつかり合う

そんな一種の異種混合作用の中から生み出されるものです。

ブレイクビーツにしても

ブロークンビーツにしてもそう。


僕自身は基本的に

ブレイクビーツの概念を持つ音楽が好きです。

ブレイクビーツとはBPMに縛られるものではなく

あらゆる音楽形態に入りこむことが可能です。

そして自分がBPMに縛られているなと感じた時は

なるべくそのBPMから外れたものを聴くようにしています。


だから最近は結構BPMが遅いダウンテンポものを

よく聴いたりしています。

アブストラクト・ヒップホップ

ジャジー・ソウルとか・・・

さらにビートダウン・ハウス

ダブなどもそれに属するでしょうか。

まあ、どれも今そんなに人気のあるものじゃないですけど。

でも、考えてみればいつも流行からちょっと外れたものを

好んで聴いてきたような気がするな・・・。


Simbadの「Soul Fever」がここ数年では決定的でした。

そして昨年から今年にかけても

良質なダウンテンポ・ソウルが色々出てます。

Break ReformのSimon S主宰の

Futuristica Musicから出ている

Replife

Kira Neris

Electric Conversation


オランダの4 Luxのダウンテンポ専門レーベル

4 Lux Whiteからの

Daru & Reggie B

Daru & Rena

OliverDaySoul


スウェーデンから登場した

ポストErikah Baduと言われる

Kissey Asplund


彼らに共通するのはスモーキーなソウル

J Dilla以降の世代に顕著なザラついた音質

未来的でコズミックな感覚の融合。

Tru ThoughtsのMilez Bengiman

(Gerd + Delgui + Colonel Red)も

ややブーティーでサイバー過ぎるきらいはありますが

同じ空気感を感じさせます。


マンチェスターのTrus'Meとか

その関連でいけばLinkwood Family

またSonar KollektivのSoulphictionなど

ハウス寄りのアーティストにも

こうしたスモーキーなダウンテンポに共通する

ベクトルを感じさせる作品はあります。


まあ、昔で言えばMo'Waxみたいな音(かなり大雑把)なのですが

一時期はこの手の音が主流みたいな感じになり

(と言っても随分と過去のことですが)

僕自身はちょっと覚めた目で見ていたこともありました。

でも、今のようにBPM120~130が主流となっている時代では

逆にこの手のダウンテンポものが自分的には新鮮で

グルーヴを感じさせてくれるのです。