Timo Lassy 『The Soul & Jazz Of Timo Lassy』 | 小川充オフィシャルブログ

Timo Lassy 『The Soul & Jazz Of Timo Lassy』

先週「HARD BOP & MODE」が無事に発売となりました。

本屋や大型CDショップなどに並べられているようですが

僕はまだ見に行ってません。

今までも発売日に見に行ったことは一度もなくて

人からこんな感じでディスプレイされてたよと

話をされる始末です。


近い内に見に行こうとは思ってますが

それより、次の仕事が色々と入ってるので

今はそれを仕上げる方が重要度は高くなっているのです。


なお、毎月DJチャートでお世話になっている

PLUG INのWEBで本に関するインタヴューが掲載されてます。

http://sp-plugin.jp/information/index.html#20070702-2

ここでは、僕がライナーノートを書いた

Timo Lassyのインタヴューもやってます。

http://sp-plugin.jp/information/archives/2007/06/20070622.html


Timo Lassyのアルバム

『The Soul & Jazz Of Timo Lassy』ですが

以前、ブログでも紹介したように

今、最もホットなジャズ・アルバムです。

ティモ・ラッシー, ユッカ・エスコラ, アンチ・ロジョネン, テッポ・マキネン
ザ・ソウル・アンド・ジャズ・オヴ・ティモ・ラッシー

北欧ジャズと言うと

クールで知的なイメージなのですが

Timoに関して言えばその正反対。

とても情熱的でパワフル。

そして、魂がこもったスピリチュアルな音塊。

僕達、日本人が勝手に抱く北欧幻想を

見事なまでに打ち砕いてくれます。


もちろん、Koopなどに代表される幻想的な世界も

北欧ジャズの一面ではありますが

でも、それだけではないのですよね。

Timoのアルバムにはアフロ・ジャズやラテン・ジャズが多いのですが

かつてSabu Martinezが居着いてアルバムを残したように

アフロやラテンが結構盛んな地でもあるのです。


クラブ・ジャズっていうのは

本来、スクエアなメインストリーム・ジャズに対するアンチテーゼとして

メインストリームでは無視されていたようなジャズ・ファンクや

ラテン・ジャズ、アフロ・ジャズをプレイする

というものだったと思います。

つまりレベル・ミュージック(革命・反抗の為の音楽)なのです。

レコードも500円とかで叩き売られているものから

いかに使えるものを見つけるか

それがDJにとっての腕の見せ所であったのです。


ただ、最近の若い人は

どうも権威に弱いというか

有名DJのプレイ・リストそのままのレコードを

高いお金で買ったり

(そうしたレコードには大体高い値段がつけられているものです)

それこそ『Jazz Next Standard』で紹介されているものを

名盤だと思って買ったりするのです。


言っておきますが

『Jazz Next Standard』は世に言う名盤選ではありません。

メインストリームの世界では

それほど評価されていないものも多く掲載されています。

沢山のレコードが載っていて

その紹介も大切なことなのですが

それとは別に、個人個人が自発的に

自分にとっていい音楽を探せるよう

その手引きになればと意図しているところもあるのです。


今、ジャズをレベル・ミュージックだなんて思って

聴いている人はいないでしょう。

大体、レベル・ミュージックって言葉自体

死語かもしれません。

でも、僕にとってジャズとは

レベル・ミュージックであり

僕の好きになった音楽とは

全てレベル・ミュージックでした。


周りを見渡してみると

昔に比べて冒険をしない人が多いというか

皆、世の中の評価が安定している安牌しか狙いません。

別にDJでなければそれもいいでしょう。

でも、DJを目指すのなら

自分の耳で確かめて買って欲しいと思うのです。


Timo Lassyの話からそれましたが

北欧ジャズに対するイメージというのは

最近の若い音楽ファンの保守化を象徴している

と僕は危惧している部分もあります。


ある一部のイメージが強烈だと

そのイメージが特定の人の中では権威となり

それ以外のものを受けつけようとしない。

誤解を招くといけないのですが

僕は強烈なイメージそのものを否定しているのではなく

それを受ける側の意識について

?を感じるのです。


どうも最近は自由な発想をする人が少なくなり

一つのイメージが蔓延してしまうと

何もかもその中に押しこめてしまう。

そこから外れるものに対しは

一切の興味を抱かない。

これって権威主義以外の何物でもないです。

本当に面白いものとは

そこからはみ出しているものなんですけどね。


だからこのTimo Lassyのアルバムは

仮に北欧の音楽=お洒落生音クラブ・ジャズ

なんて権威主義に冒されている人がいれば

是非とも目を覚ます意味で聴いてもらいたいですね。