Karizma / A Mind Of Its Ownのライナーを書き終えて | 小川充オフィシャルブログ

Karizma / A Mind Of Its Ownのライナーを書き終えて

今、やっと書き上げました。

Karizmaのアルバム

『A Mind Of Its Own』のライナーを。



日本盤CDはヴィレッジ・アゲインさんから3/21に発売。

なお、日本盤はボーナス・トラック2曲入りで

しかも、それがまたいいときてるからお勧めです。


18:00頃から書き始めて、

終わったのが明け方5:00近くだから

延々と11時間も書き続けていたのですね。

でも、それを忘れるくらいに没頭したライナーでした。


書いた文字数は約8000字。

400字の原稿用紙にして20枚分。

本当はライナーというのは

もっとコンパクトにするべきなのでしょうが

でも、書かずにはいられなかったというか。

久々に自分から書きたいと思った1枚でした。


去年だとSleep Walkerと沖野修也さんのアルバムが

自分としても特に力が入り、

書き終えた達成感のあったライナーだったのですが、

それでいくと今年はまずこのアルバムですね。

(もちろん、他のも全て真剣に書いてますよ)


今回のライナーは

いつになく個人的な感情が出てしまいました。

感情とはちょっと違いますか、

日頃感じていたことですね。

僕はこの音楽シーンの現状に対し、

例え不満を感じたとしても

あまりそれを出さないようにしています。

物事のネガティヴな面をつつくのではなく

なるべくポジティヴな面を引き出し、

伸ばしたいと思うからです。


でも、今回このアルバムを聴いたら

そうした不満というか

もどかしさというか

喉のつかえが一気に落ちました。

そうだ、これが自分の今一番欲していた音なのだと。

だから、それを伝えたいために、

結果として現状に対し

ちょっと辛辣なことも書いています。

どうか、愛のムチだと思ってください(笑)。


でも、音楽評論というのが

いつの間にかレコード会社やアーティストの

太鼓持ちのようになってしまっている現在。

仲良し小良しで

感想文レベルの論評。

それ、評論家じゃないですよね。

宣伝担当です。


今、音楽ジャーナリズムに

批評性は存在しているのでしょうか?

公平性は存在しているのでしょうか?


かつての音楽雑誌にしても

ライナーノートにしても

時にボロクソにけなしたりする記事がありました。

それでアーティストと論争になったりして

またアーティストはそうした批評に対し

音楽で答を出したりしたものです。

音楽ジャーナリズムには

もっと骨があったと思うのです。


もちろん、

何でもかんでもこきおろせばいい

ということではありません。

基本的に僕は

そうしたくはないです。

だから短所には目をつむり

長所を誉める文章を書きます。


でも、それは批評という目を通した上での話。

音楽というものの文化性、芸術性

大袈裟ですけど社会性を鑑み

その上で誉めるなり

時に苦言を呈したりするのです。


もちろん、現在でも気概を持って

音楽ジャーナリズムの仕事に取り組み

素晴らしい記事を書いてらっしゃる方はいます。

ただ、そうじゃないケースを目にすることが多いし

そんな文章しか読めない音楽ファンが

あまりにも可哀想だと思うのです。


また、これは自分自身への問い掛けでもあり

僕自身が音楽評論をする上において

一番に考えなければいけない点でもあると思います。


戦後の日本の庶民生活を支えた

『暮らしの手帖』の編集長

故花森安治さんは

徹底した編集の人でした。


新商品を紹介する際、

例え大手メーカーのものでも

徹底したテストを行い

本当に実用的なものかどうかを確かめる。


編集長をやっていれば

当然顔が広くなるのですが、

でもそうした人達と必要以上に

呑みにいったりとかお付き合いをしない。


それは編集の仕事に

私情や付き合いといったものを

持ち込まないようにした為です。

あるのは、ただ

庶民、生活者の目線でした。


僕はこの花森さんの姿勢を

自分が物を書く上で

いつも心掛けたいと思います。


そう言えば

Karizmaのアルバムの内容について

ほとんど触れてませんね(笑)。


内容はライナーに

嫌というくらい書き綴りましたので

ここでは長くは語りません。

一言二言で言えば、

今のクラブ・ミュージックが失いかけている何か

僕はライナーでそれを初期衝動性ととらえているのですが

その何かを久々に感じさせてくれたアルバムです。


そして、驚くべきことに全てインストです。

普通、今のダンス系だと

大体は歌ものを幾つか入れるのですが

彼の頭には歌もの入れて売ろうとか

そんなことは一切無かったようです。

う~ん、潔い。

男ですね。