アルト・サックスのハシゴ <その2> | 小川充オフィシャルブログ

アルト・サックスのハシゴ <その2>

丸の内のコットン・クラブから

南青山のブルーノートへ。

67才のGary Bartzのステージの次は

47才のKenny Garrettのステージです。

何とか21:30の2ndステージに間に合いました。


同じアルト・サックス奏者ですが、

老獪という言葉が似合いそうなBartzに対し

Garrettは今、一番演奏者として脂が乗り切っている状態。

音楽に対するストイックな姿勢は

Coltraneのそれに通じるものでもあります。


最新作『Beyond The Wall』では

Pharoah Sanders

Bobby Hutcherson

という御大2人の参加が話題を集めましたが

残念ながら今回のツアーには同行せず。

そりゃそうですよね。

ギャラがとんでもないことになるのは当然ですが、

2人が来てしまったら

Garrettの公演じゃなくなってしまいますからね(笑)。

Hutchersonは今月末にSF Jazz Collectiveでブルーノートに来ますが)


今回のメンバーは

Benito Gonzalez(p)

Nat Reeves(b)

Jamire Williams(ds)

という面々。


Nat ReevesはGarrettと何度かやっていて

Harold Mabernのトリオのメンバーでもあります。

即ち矢野沙織さんのアルバムで

バックも務めていたのです。

日本通で知られるGarrettですが

Reevesもそうした点では日本と馴染み深い人。


Benito Gonzalesはヴェネズエラ出身で

元々はラテン・バンドで弾いていたのですが

McCoy TynerとChick Coreaを聴いて

ジャズの道に入ってきた人物。

04年にソロ・アルバムもリリースしていて

Christian McBridgeとも共演してます。

Garrettのバンドには昨年頃から加わっているようです。


Jamire Williamsは

僕は全く知らない人でした。

聞けば、何とまだ22才ということです。

(巨大なドレッド・ヘアーが印象的)

Jacky Terrassonとも共演経験があるようですが

この若さなので当然ジャズだけじゃなく

色々なクラブ・ミュージックも好きみたい。

案の上、彼のMyspaceを覗いてみたら

Waajeed

J Dilla

Lupe Fiasco

等がFriends登録してました。

今回初めて演奏を見たのですが、

この人、要要要チェックですよ。


ステージですが

Calling」

Beyond The Wall」と

最新アルバムの冒頭の2曲でスタート。

バンド・メンバーが全体に若いということもあってか

もう最初からグイグイ飛ばしていきます。

Garrettも上下に振り子のように体を振って

アグレッシヴに吹きまくりです。

観客も含めて

もう音に皆でガッと集中する

そのパワーは凄いものがあります。


1曲1曲がとても長い演奏で

Calling」では後半に

Williamsのドラムとの掛け合いが。

これが凄い。

Garrettが若いWilliamsを挑発し、

Williamsも決して臆することなく

Garrettに食らい付いていくのです。

もう根競べともいうべきバトルが

延々と5分くらい続いていたのではないでしょうか。


Williamsは全身を使ってダイナミックに叩くドラマーで

ジャズだけでなくロックや他の音楽の要素も感じさせる超攻撃派。

顔を歪めて

体をのけぞらせて

もうヘロヘロな感じなのですが、

でも、この鬼気迫るドラムによって

Garrettの闘争心に火がついたことは確か。

どちらかがぶっ倒れるまでやる、

そんな感じに僕の目には映りました。


ひとしきりスピリチュアル系の演奏が続いた後は

Garrettのオハコでもある日本と韓国の歌メドレー。

「赤とんぼ」

「アリラン」

「翼をください」

とピアノの伴奏のみで演奏。

激しい演奏の後、

しみじみと心に染み入るこんな演奏をやられたら

もう脱帽するしかないでしょう。


最後は「Happy People」。

これが超ファンキーな感じで

Gonzalezはアコースティック・ピアノからローズに変え

ガンガンに弾きまくり。

力漲る演奏というか、

この人はこうしたファンキーでソウルフルな演奏が

一番合ってそうな気が。


Garrettもコルグのシンセとアルトを併用し

そしてアルトにはエフェクターをバリバリに掛け

もうかなりイってる演奏。

そしてGonzalezがステージを降り、

Reevesもステージを降り、

残ったGarrettとWilliamsで

またもやバトルが・・・。

バトルが終わってWilliamsが降りた後、

1人残ったGarrettのアルト・ソロで幕。

もう、壮絶としか言いようのないステージでした。


Gary Bartz

Kenny Garrett

同じアルト・サックスでも

夫々違った良さがあって、

う~ん、久々に素晴らしいものを観た

そんな1日でした。