Gilles Peterson@Yellow | 小川充オフィシャルブログ

Gilles Peterson@Yellow

今日も中々ハードな一日でした。
まず、ランブリング・レコーズさんから発売となる
ドイツのGOGO MUSICのコンピのライナーを仕上げ、
その後マーキー誌のレヴュー5本を完成。
それからもう1本、Pヴァインさんから発売となる
キンドレッド・スピリッツのコルトレーン・トリビュート・アルバムのライナーを書いて送信。

これらが完了したのが深夜0時を回った後で、
でも今夜は色々なパーティーが目白押しなので、
出掛ける準備を。



今夜のメイン・イベントは、
Yellowで行われる松浦俊夫さんpresents Gilles Peterson Japan Tour 2006。
1時過ぎにYellowに着いたのですが、既に入場制限を行っているという盛況ぶり。
Yellowは今日からメイン・フロアの営業も出来るようになったみたいで、
ラウンジ、フロア、バーカウンター共に満杯状態。

そして、本日のスペシャル・ライヴということでSleep Walkerのステージがスタート。
ライヴ・ハウスとは違い、Sleep Walkerにとって万全の音響環境とは言えなかったけど、
でも、メタモルフォーゼでのファラオ・サンダースとの共演を通じ、
一回りも二回りも大きくなった、その雄姿を見せてくれました。


クラブ・イべントということもあってか、全体的にファンキーな演奏と堅めの音色でした。
僕的にはジャズ・ロック風のインプロヴィゼーションが展開された「Southern Cross」が良かったかな。
あと、マサやんのテナーはリヴァーヴを掛け過ぎてたきらいがあったけど、
ソプラノ・サックスの音色は突き抜けた感じで良かったです。
吉澤さんのフェンダー・ローズに比べ、藤井さんのドラムの音が大きかったけど、
そこはクラブでのライヴに設定された音響によるところが大きいからということでしょうか。



そして、その後はお待ち兼ねのジャイルス・ピーターソン。

まず、ジャイルスがプレイする前に、

僕の『スピリチュアル・ジャズ』の本をプレゼント。

僕がスピリチュアル・ジャズを聴くきっかけになったのが

ファラオ・サンダースの「You've Got To Have Freedom」で、

それを初めて聴いたのはジャイルスのコンピ『Jazz Juice』でのこと。

なので、ジャイルスがいなかったらこの本は無かった訳です。

言ってみれば、ジャイルスは僕にとっての恩人でもある訳です。

今日はジャイルスに本を渡すことが目的の一つでもあり、

それを無事完了。

あとはジャイルスのDJを楽しむだけ。



僕はDJブースにずっといたのですが、
やっぱりジャイルスのDJは凄い。
完全にエンターテイナーとしてのDJを体現していると言うか、
いつも以上にオーヴァー・アクションで、
またお得意の『Worldwide』ジングルやMCを入れ、
とにかく盛り上げる。

華がある。





ブラジルものの旧譜を延々とかけるパートがあったのですが、

ミルトン・ナシメントの「Para Lenon E McCartney」のイントロでお客さんが沸いた後、

一旦音を止めてMCを入れ、その間レコードを逆回し。

もちろん、スピーカーからはバックスピン・ノイズが。

そしてまた頭のイントロからかけ、

リズムが入るところで縦フェーダーを一気に上げ、

フロアは大盛り上がり。



シヴーカの「Ain't No Sunshine」では、

頭のワン・フレーズを延々とループさせ(CDRに焼いてかけてたので)、

それはまるでCDが音飛びしてるような状態だったのですが、

これまたやけに盛り上ったのでした。

でも、実はそれはハプニングで実際音飛びしてたらしいのです。

そんなハプニングもパフォーマンスの一環としてプレイしてしまうところが、やはり凄い。



あと、今、日本でこれだけブラジリアンをかけるDJがいるのだろうかとも思いました。

一時、日本では猫も杓子もブラジリアンというような時期もあったのですが、

そんなブームが過ぎたら手のひらを返したように誰もかけなくなってます。

でも、ジャイルスにしても、パトリック・フォージにしても、

そんな流行は自分には全く関係ないよ、という感じで、

自分の好きな音をずっとかけ続ける。


彼らは飛び切りトレンディーなんだけど、

でも決して自分がそのトレンドに飲み込まれることはありません。

トレンドを生み出す人は、

そのトレンドに対し極めてクールで、

トレンドとは関係のない自分自身のアンテナや信念を持っているのです。


アフロ・ハウスも結構かけてましたが、

今、日本ではこの手の音はあまり支持されていません。

でも、この日はアフロ・ハウスでメチャクチャお客さんは踊ってました。

アフロものは今流行から外れてるからダメとか、

自分も含め勝手に決め付けてる日本の音楽シーンですが、

かけるDJが良ければ、

うまいタイミングで挟み込めば、

皆踊るんだなと
改めて思った次第です。



意外な選曲もジャイルスの魅力で、

昨夜はダビーなキューバものをかけてるなと思ったら、

マーヴィン・ゲイの「Sexual Healing」の歌詞が出てきて、

あっ、カヴァーなのかと。

これ、一体何だろう。

で、訊いたらHot 8というニューオーリンズのブラス・バンドもの。

音が無茶苦茶分厚く、

ベースはまるでレゲエのサウンド・システムみたい。

CDが出てるみたいなので、早速チェックせねば。


Hot 8
Rock With the Hot 8


それから、電気処理されたチープな声がコラージュされた

ファンクともロックともエレクトロともテクノ・ポップとも判断がつきかねる、

不思議な、でもとってもカッコいい曲をかけてて、

何だろう、ひょっとしてサー・ラーあたりかなと思ったら、

これが何とポール・マッカートニー。

80年発表の『MacCartney Ⅱ』に入ってる「Check My Machine」という曲で、

元々は「Waterfalls」というシングルのB面に収録され、

アルバムには未収録だったのが、

CD化に際してボーナス・トラックとして収録されたらしい。

この当時のポールはテクノ・ポップに行ったなんて酷評されてたけど、

今聴くと意外とイケてるのかも。

これも早速チェックです。


Paul McCartney
McCartney II



あと気になったところでは

CDRでかけてたカナダのKarizmaの「Twist This」という曲。

デトロイト・テクノっぽいアンダーグラウンドな曲なんだけど、

ビートがわざと引っ掛かるような変則的なもので、

ジワジワと行きながらもピークまで持っていける

とてもカッコいい曲でした。

更に、Simbadの「Soul Fever」に、
自分のラジオ番組である『Worldwide』のジングルを乗せて作った
特製トラックなんかもかけてました。


ということで、もっとジャイルスを聴いていたかったのですが、
Loopで福富幸宏さん・富田恭弘君・瀧澤賢太郎君のやってる
『A New Dimention』にも顔を出す約束があったので、
4時半頃にYellowを後にしてLoopへ。

久々に『A New Dimention』にお邪魔したのですが、
今は3人のDJが2曲交代で次々と曲を繋ぐバック・トゥ・バックでずっとやってるそう。
遅い時間に到着したのですが、
いい感じでお客さんも踊っていて、
何だか暖かなヴァイブが。
DJも皆気持ち良く酔っ払いながら、プレイしてました。

他にもWombの大沢伸一さんのパーティーでSwitchが来日してたりと、
寄りたいところもあったのですが、
さすがにこれ以上は無理といったところ。

ワインやらシャンパンやらショットやら、
お酒も色々浴びて、
そして、家に帰って来たのは朝6時。
6時間後には起きて仕事です。
我ながらタフだな~と思った一日でした。