Kentaro Takizawa 『Gradual Life』 | 小川充オフィシャルブログ

Kentaro Takizawa 『Gradual Life』

先日、瀧澤賢太郎君から直々にいただいた新作
『Gradual Life』のプロモを聴きました。


彼は2年前、
23才の若さで『Impressive Time』というアルバムでデビューし、
昨年はそのリミックス・アルバム+新曲集『Impressive Time Remixes』も発表しています。

25才になった今年、
レーベルをFlowerへと移籍し、
心機一転して臨んだのが『Gradual Life』なのです。

前回に引き続いてのゲスト・シンガーBwana-Kことカオル君に加え、
海外からLisa Shaw from Naked Music、
DJ Kawasakiの作品でもお馴染みのKarin、
Soul Sourceのアルバムにも参加するMedbyといった女性シンガー陣、
更にSleep Walkerの吉澤はじめ、
KJMでベースを弾くイケッチこと池田憲一(Roots Soul)、
といった面々を迎え、
かなり歌ものの比重がアップ。

DoCoMoの新携帯FOMA N902iX HIGH-SPEEDに、
着うたフルOR楽曲としてプリインストールされる
「Starship」でアルバムは幕開け。
この曲は吉澤さんがフェンダー・ローズを弾き、
ColdfeetのLoriさんが歌詞を書き、
Medbyが歌うという豪華作。

そのタイトル通り宇宙旅行に飛び立つような、
心も体もウキウキと弾むギャラクティック・ブギー・ハウス。
アナログで12インチ・カットもされます。

Lisa Shawの歌う「Make It Right」もキラー。
ダンス・クラシック的なメロディー、
軽快なカッティング・ギターやフルートに乗せて、
甘くドリーミーなLisaのヴォーカルが聴く者に微笑みをもたらす。

Bwana-Kが歌う「Future Lies Within Me」は、
Blazeあたりを彷彿とさせるNY的な王道歌ものハウス。
同じ彼のヴォーカルでも「All The Time」はかなりポップで、
音色とかメロの感じとか、
僕はバグルズの『ラジオスターの悲劇』を一瞬思い浮かべました。

インストでは師匠の福富幸宏さん譲りとも言える未来的なテック・ハウス「Undulation」、
初期シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノにちょっとディスコ・ダブっぽい要素も入った「Knuckle Dub」と、
このあたりは彼のトラック・メイカーとしての能力が
格段に進歩していることを示しているでしょう。

ハウス以外の曲もやっていて、
Medbyが歌うダブ・ミーツ・ソウルな「Close My Eyes」、
Karinが歌うラヴァーズロック調の「Floating Memory」、
フルート・ダブとでも言うべきフローティングな「Sazanami」と、
このあたりはFlowerの高宮永徹さん周辺からの影響も感じさせます。

タイトル曲はギターが美しいアンビエント作品で、
これもかなりダブっぽいテイストが効いてます。

1stは、ただもう
がむしゃらに作って、
リミックス・アルバムでは色々なリミキサーと接して勉強をし、
そして本作はそうした経験を基に、
じっくりと腰を据えて作った印象がします。
それも、とても誠実に。

賢太郎君のいいところとは、
そうした誠実さであったり
謙虚さであったり
ひたむきなところかなと思います。

変にひねたり斜に構えたところがなく、
自分の感じたこと、
思ったこと、
影響を受けたことをストレートに音に出している。

いい意味で業界に染まってないというか、
何だか今だにアマチュアらしさが漂っているのです。
でも、このアマチュアらしさって
僕はとても重要なことだと思います。

そもそも音楽家をプロ、アマと分ける基準って、
何なんでしょう?

音楽で食っていければプロ?
趣味でやってればアマチュア?
プロの作る音楽は良くて、
アマチュアのは所詮お遊び?

そんな境界線、
一体誰が決めたのでしょう?

いい音楽を作るのに、
プロもアマも関係無いと思います。

むしろ、アマの方が純粋に音楽を楽しみたいと思ってやってる分、
いいものが出来ることも少なくありません。

でも、そうしたアマがプロになっていく内に、
音楽がお仕事となり、
いつしか音楽で楽しむことを忘れてしまう。
プロになることとは、
そうした危険性も孕んでいます。

賢太郎君は
今、プロとして軌道に乗り始め、
これからが勝負というところでしょう。
プロの音楽家として
これからも色々と学ばなければならないこともあるでしょう。
でも、そういった厳しいプロの世界にあっても、
アマチュアらしさというか、
フレシュな気持ちをずっと大切にしていって欲しいと思います。
いや、彼なら出来るでしょう。