メタモルフォーゼ 2006 | 小川充オフィシャルブログ

メタモルフォーゼ 2006

今ちょうど、メタモルフォーゼが開催された伊豆の修善寺から帰ってきたところです。
今年で第7回目というメタモルフォーゼ、
元々はテクノ系の野外イヴェントというイメージでしたが、
Tortoise、Hifana、DJ Krushなどの様々なアーティストも出演し、
最近では音楽の異種格闘技戦のような様相を呈してます。


今年は自分の一番目玉的には、
やはりSleep Walker feat. Pharoah Sanders。
そして、Manuel Gottsching。
まあ、この2組を観に行ったようなものです。

ステージは全部で3つあり、ライヴはSOLAR STAGEという一番大きなところ。
ここでは
上記2組の他、
沼澤尚+勝井祐二+Marcos Suzanoユニット
The Bays
O.D.D.
Konono No.1
Sunshine Jones
Black Strobeのステージがあり。

その他、LUNAR STAGEでは
DJ Patife & Cleaveland Watkis
DJ Sneak
Mark Farina
Sebastien Legerなどが

PLANET STAGEでは
Idjut Boys
CALM
井上薫
田中フミヤ
EYEなどが回してました。

3つのステージで同時進行で行われており、
またステージ間はかなりの距離があり、
全て回るのは不可能。
僕は主にSOLAR STAGEに集中してました。


僕が会場に到着したのは、
Sleep Walkerのステージが始まる直前の19:30頃。
既にリハというか簡単な音出しの最中で、
お客さんもゾロゾロとステージに集り始めている。
ジワジワと興奮が高まってきている感じ。

そして20:00にライヴがスタート。
僕の予想を裏切って「愛の河」で始まり。
でも、ここに来ているお客さんは、
いつものジャズを聴きにくるお客さんではないので、
つかみとしてはこれで良かったのかも。
案の定、1曲目でお客さんのボルテージは全開!
「ヤベェー!」「カッケー!」という声が至るところで上がっている。


でも、慣れない野外ということもあってか、
お客さんのレイヴィーな異様なノリに圧倒されてか、
また、この後に控えるファラオとの共演のプレッシャーからか、
ややいつもと違う印象。
ちょっと固いというか、
メンバーの緊張が伝わってくるような気が。
多少、PAに不安定な部分もあるような。
そんな中、吉澤さんが上げつつも冷静に引っ張る感じです。

で、そんな雰囲気を一掃したのがベンベ・セグェ。
2曲目の「Into The Sun」で登場すると、
一気に観客の視線を奪い、
その圧倒的とも言えるパフォーマンスには、
多くのレイヴァーたちも拍手喝采。
途中でサンダルを脱ぎ捨て、
裸足でステージを掛け回り、踊ってます。
まさしく野生の女王。


3曲目の「Kaze」では、お馴染みの池田さん、藤井さんのバトルが炸裂。
メンバーも全開で、ベースが地響きを立て、
ドラムロールは天空に立ち上り、
歓声も一段と大きなものに。
開放感溢れる野外で聴くスリープ・ウォーカーっていいな、
と思った瞬間でした。

そして、ブルーの照明に変わって幻想的な中、
登場するのはユキミ・ナガノ。
この前のクアトロでは聴けなかった「Afloat」です。
ベンベとは対称的に、
ユキミの歌声はどこかアンニュイで、
ニンフのよう。
以前に比べ、随分と大人っぽくなってました。


ユキミが引っ込み、いよいよです。
待つのはただ一人、ファラオ・サンダース !
マサやんが招き入れる形でファラオ登場。
そしていきなり、マサやんとの2トップで「The Voyage」を吹き始める。
この師匠と弟子の協奏、
ほんといい絵です。
このシーンを見るだけでも、
ここに来る価値があったと思います。


思った以上にファラオが前面に出て吹いてくれて、
また彼のサックスの特徴でもあるフラジオがバリバリ出まくりで、
観客の興奮もピークに。
後で関係者から聞いた話では、
会場入りが遅れるなどのトラブルもあり、
予定ではファラオはこんなに吹くことにはなっていなかったと。

でも、何かがファラオに吹かさせてしまったのだろうか。
スリープ・ウォーカー、それとも観客?
古来、山には神々が住んでいると言われますが、
目に見えない何かの力によって、
この日の演奏は特別なものになったに違いないでしょう。

そして、最後の最後にまたもサプライズ。
ベンベ、ユキミの登場し、何と「You've Got To Have Freedom」を。
まさか予想はしてなかったのですが、
この組み合わせで最も聴きたい曲であることに誰も意義は唱えないでしょう。
ファラオがこの曲をやることにOKしたということは、
それはスリープ・ウォーカーを自分のファミリーと認めた、
ということなのでしょう。



スリープ・ウォーカーのライヴ・レポートで多くを使ってしまった為、
あとは手短にまとめます(スミマセン)。

O.D.D.はURのマッド・マイクがギターで参加するユニットで、
Galaxy 2 Galaxyの路線を期待してたのですが、
何とドラッグ・クイーンのシンガーや、
パンキッシュな出で立ちの女性ギター&ベースがメンバーという編成。
音もP-Funk的と言うより、プリンスやリック・ジェームズ、
いやいやもっとロック的。
ジミヘンの「Fire」やデヴィッド・ボウイの「Let's Dance」のカヴァーもやってました。
盛り上がりはしてたけど、
結構、賛否両論のステージでした。


シアター・ブルック等で活躍する沼澤尚(ドラムス)、
ROVOの勝井祐二(エレクトリック・ヴィオラ)、
ブラジル出身の世界的アーティストであるマルコス・スザーノ(パンデイロ)の3人を中心に、
更にDCPRG大儀見元(シンセ /キーボード)と、
ROVOの益子樹(パーカッション)による即興ユニットのパフォーマンス。
今回の出演者の中で最もエクスペリメンタルでスリリングなライヴであった。
全くフリーのジャム・セッションで、
ジャズっぽい出だしから、徐々に熱を帯びてトランシーになっていく展開。
サイケデリックでかつてのクラウト・ロックのようでもあり、
皆イッちゃってました。


あまり期待せずに聴いたところ、
意外にも素晴らしかったのがThe Bays。
実はこのユニット、
JimpsterのJamie Odell (シンセr)
Palm Skin Prod.のSimon Richmond (シンセ/FX.)
ジェフ・ベックのバンド・メンバーでもあるAndy Gangadeen(ドラムス)
Chris Taylor (ベース)
という編成で、Andyがリーダー。

基本的にライヴ用のユニットで、
音源もMP3のダウンロード配信のみで発表しているという変わり種。
音は、ジンプスターをよりダイナミックな生バンド化し、
ジャズ/フュージョン
デトロイト・テクノ
ブロークンビーツ
アシッド・ハウス
エレクトロ・ブギー等の様々な要素が混沌と溶け合い、
生演奏の暴力的な迫力とFXによる人工的ドラッギーさを持つものとなっているのです。

そして、完全にトランシー&レイヴィーにいくのではなく、
その一歩ギリギリ手前でクールに決める構成力もあり、
しかもムチャ踊れる。
「あれは良かった」という声が最も上がっており、
見た感じでお客さんが一番踊ってたパフォーマンスではなかったでしょうか。


そして、マニュエル・ゴッチングによる世界初「E2-E4」生ライヴ。
1時間をこの「E2-E4」の為だけに使うという豪華なライヴ。
これを逃すと、次いつ見ることが出来るか分からないライヴ。
約25年振りとなる「生」での再現ライヴ。
色々な言葉で語っても語りきることが出来ない、歴史的一幕でした。

時間も4:00-5:00で、
ちょうど夜の闇が白んできて明け方に向かう、
空気が最も澄んで、
自然が最も美しい一時。
このシチュエーションもバッチリで、
最初はラップトップをいじり、
途中でギターを弾き始める、
そんなマニュエル・ゴッチングに、
観客は心地良く体を揺らし、
そして演奏終了後には割れんばかりの拍手が。



会場には出店の屋台が数多く立ち並び、
またテントを張ってキャンプを楽しんでる人たちも。
会場全体が非常にピースフルで、
好きな時に音楽を聴き、
好きな時に踊って、
好きな時に食べて、
好きな時に眠ると、
皆が自分のペースで楽しんでる。

以前に比べて、
皆エコロジーの意識が宿ってきてるのか、
極力ゴミを持ち込まない、
ゴミを捨てない、
ゴミを持ち帰るという人が多いよう。

また、修善寺の町興し的な意味もあるのか、
町ぐるみでイヴェントを盛り上げようと、
色々なサポートが行われていました。

また機会があれば、こうした野外イヴェントは行ってみたいですね。