夫が日本で飲み友達だった女友達の一人は、いつも一人で酒場に来ていた。
化粧毛の無いショートヘアーのその人は、どことなく寂しく見えた。
ある時、夫からその女性の素性を聞いた。
女性はオーストラリア人で、日本人男性と結婚し離婚。
子供が一人いたが、親権を争う暇もなく子供を連れていかれ生き別れとなった。
会えるまで帰れない、正当な裁判で親権を勝ち取れなくとも、せめて半々で子供をみたいからと、日本にとどまっているのだった。

私は無理だろうと言った。
日本は離婚したら片方の親に行ったままのケースがほとんど。
欧米のように我が子を半々で見ながら育てるというのは、当時私の周りには一人いただけである。

夫は驚いた。
しかし日本は離婚し親権を相手に渡すと、なかなか会えないと聞く。
ましてや外国国籍なら、親権争いしても不利かも知れない。
夫は当時「これ、国際結婚してる外人は知ってんのかなあ?」と呟いた。

最近、昔のドキュメンタリー番組を見ることがあり、まさにその事がやっていた。
日本人の妻が黙って子供を日本に連れ帰り行方がわからない。
実家も引っ越していてわからない。
男性は「結婚するときに、日本がそういう国だなんて知らなかった」と言った。
私は思わず夫に「これ、あの女の人と一緒のケースやな」と言った。

あの女性はまだ日本にいるだろうか…
「夫と上手く行かなくなっただけで、私は子供に痛みも悪影響も与えた事は一度もない。どうして我が子に二度と会わせてもらえないのかわからない」そう言っていたのを今も何故だか覚えている。
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