ホテル近くのレストランに入り、食べたいものがメニューに無かったので、チーズバーガーを注文した。
こんなもん、イギリスでいつも食べてんのにアホやな私…と思いながらも「チーズバーガーを」とオーダーすると、店員から「焼き方は如何されますか?」と聞かれた。
アメリカのお店では必ず聞かれるハンバーガーの焼き加減であるが、私のイギリス生活においては忘れ去られていたから、聞かれて感激してしまった。
焼き加減など聞かれる事なく、パサパサになるまで肉汁を落とすのがイギリスのシェフ流。当たり前に火は1000%通って出される。
しかし、アメリカで食べるミディアムレアのハンバーガーの美味さたるや、タマランのである。
それがフランスの何気ないお店で聞かれるとは思ってもみなかった。
今回は焼き加減をミディアムで頼んでみたが、完璧なまでのミディアムで火は通されていた。
イギリスに来た初日、義父母がレストランに連れて行ってくれた。
義父から、「イギリスではステーキを頼む祭、焼き加減はその通りに出て来ないからね。
ミディアムなら、まずミディアムじゃなく焼き過ぎ、しかしレアと言うとレア過ぎる事が多いから、それを差し引きしてオーダーすると良いよ」と教わった。
以後この12年、ミディアムがミディアムで出て来た店など無かった。
しかしそれが、たかがチーズバーガーの焼き加減が完璧に焼かれて出て来て、私はフランスの食に対するプライドを感じると共に、イギリスの食に対するプライドが、一部にしか存在しないと痛感するのであった。
こんなに近い国同士なのに、食文化の行き来は未だ耐えたまま。