今日はあえてタブーに触れてみたいと思う。
欧米で暮らした事のある人なら「ジンジャーの髪」、いわゆる赤毛の子供がからかわれる対象になりやすい、またはイジメられる側に立たされる事がある事を知っている方も多いとは思う。
この場合の赤毛は生まれつきの赤毛であるから、染めた色とは違い、眉毛やまつ毛も同じ色をしている、とても綺麗なオレンジ系色の髪を意味するのであるが、先日の日曜の事であった。

赤毛の双子の女の子を連れたお母さんが買い物にやって来た。
たまたま対応したスタッフのケリーも又、長く綺麗な色の赤毛の持ち主なのであるが、そのお母さんがケリーに「ちょっと・・プライベートな事を聞いても良いかしら?」と言って来た。
ケリーは快く「どうぞ」と答え、そのお母さんは「あなたジンジャーである事で、子供の頃や学生の頃、イジメられた経験ある?」と恐る恐る聞いて来たのである。
たまたま私は横で商品陳列と補充をしていたのであるが、ケリーの顔が急に真剣になった。

ケリーは「ええ、高校が終わるまでずっとでした」と言った。
「学校の思い出は楽しかった事もあるけど、泣きながら家に帰った記憶の方が多いです」と言った。
ケリーは「私はスコットランドとカーライルの国境地にある田舎の中高で、その地域の子供は全員が同じ幼稚園、小学校、中学校高校と変わらぬメンバーで進学して行ったので、特にキツかったです」と言った。
「髪の色がそんな色になるのは、悪魔の子、そう言われたのが小学校の頃でした」と言った。

双子のお母さんは「夫がジンジャーで幼少期にイジメにあっていた事を聞いて、生まれた子供が2人とも赤毛だったから、育っていく上でイジメられたら可哀想だなと思うようになって・・ついついアナタに聞いてしまいました。ごめんなさいね」と言った。
ケリーは「でも高校を卒業してからは、一切誰にも言われる事がありませんし、むしろ赤毛が好きだという男性にも沢山出会いました。だから、私は染めたいとも思わない」と言った。

オーストラリアに住んでいた頃、当時働いていた小学校でこの問題が取り上げられ、私は校長に許可をもらって、このイジメ会議に同席させてもらった事がある。
その時に「ジンジャー」という言葉を知り、それが時にイジメに繋がるという現実を知ったのは、もう18年も前の事である。
ケリーが高校を終えたのは2年前の事。
未だこの時代になっても、赤毛というだけでイジメが継続されている時代である事に驚いた。

その日の午後、ケリーと同じランチタイムになったため、休憩室で一緒に弁当を食べながらその話になった。
そこにいたメアリーが「私の高校もそうやった。私と同じ歳の従妹の男の子が赤毛で、それはそれは酷いイジメに合っていて、私は出来る限りで従妹を守った。でも守るには限界があって、本当に今思い出しても可哀想でならない。今は大学生になり、ジンジャーと呼ばれ罵られていた事が嘘のように誰もがその事に触れず、あのイジメが中高独自の物だったのかなと思う」と言った。

私は「ジンジャーである事で、多かれ少なかれ嫌な経験は絶対にすると思う?」と聞いてみた。
2人は「中学に上がったら絶対」と言い頷いた。

うちの職場に姉妹が働いているのであるが、姉は黒髪、妹はオレンジ色の赤毛である。
この子は非常に活発で面白く、学校でも人気者だったに違いない性格の女の子であるが、彼女曰く「私もひどくは無いけど嫌な思いはした。でも私は学校の部活でキャプテンをやっていたから、その部門で活躍したおかげでイジメの対象にはならなかったと思う。活躍していなかったら、多分、いや間違いなくイジメられていたと思う」と言った。

義母の頃も既に同じ理由のイジメがあったと聞く。
赤毛が明るい色であるために目立つという理由からだと解釈する人もいるみたいであるが、なぜそれが脈々と対象として未だに続くのか。
義母は「無い物ねだりよ。綺麗な赤毛に憧れて、特別な色を持った子供をイジメて優越感に立ちたいだけ。私は赤毛である妹にそう言って来たわ」と言った。
ケリーにも辛い学生時代があったのかと思う出来事であった。
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