夫の実家で過ごすクリスマスはイギリス一般家庭のとは、ちょっと違う。
通常クリスマスを祝う家庭では、昼過ぎからローストターキーやら何やらを食べるのが主流であるが、夫の家庭ではそれを食すのは26日と決まっている。

これが始まったのは2006年、つまり私が嫁に来た年のクリスマスから始まった。
今は既に高校生になっているが、義母の長男夫婦の子供がクリスマスに生まれたため、いつもクリスマスと誕生日を一緒にしてきた。
長男夫婦は我が子の誕生日会を「あんたはクリスマスに生まれてきたから、誕生会をやっても誰も来ない上、クリスマスという大イベントに負けてしまうだけ。だからやっても無駄」とし、生まれてから一度もお友達を呼ぶ誕生会をやった事がなかったまま来ている。

私がイギリスに嫁いで初めてのクリスマスの事。
当時の私はホームシックの最高潮であり、1人で泣く日も多かったのであるが、義父から「クリスマスの食料品を買いに行くのに手伝ってくれないか?」と言われ、2人でスーパーに行った事があった。

買い物の後、義父が自宅から車で1時間ほど離れた場所にあるクリスピークリームドーナツに連れて行ってくれ、そこのカフェでお茶したのであった。
当時の私は今と比にならないほど英語が話せなかったが、義父が私のホームシックを和らげるため、義父なりに考えてくれたドーナツ屋でのお茶なのであった。

その時、義父から「孫はクリスマスに生まれたばっかりに、一度も誕生日会をやってもらった事がなくてね。気の毒なんだよ。小学校になり、物心が付いた時、きっと彼は傷つくと思うから、クリスマスの数日前にやってやれば済む話なんだけども、長男夫婦が何せ何も子供の為にやらない夫婦でね。情けないんだけど・・」と聞かされたのであった。

私はその時、「だったらクリスマス当日は彼の為だけの日として誕生日会に徹し、翌日26日(こちらでは26日をボクシングデイと呼ぶ)にクリスマスディナーを食べる事にしてみては?」と何気に言ったのであった。

亡き義父は目を丸くし、「クリスマスにクリスマスディナーを食べない・・・」と独り言のように考え込んだ。
私は「もう4歳(当時、長男夫婦の子供は4歳)やから、本人に誕生日にどんなものが食べたいか聞いてみては?」と提案した。

義父は違和感がある様子であったものの、その話を義母に相談。
そない、クリスマスへの伝統概念が崩されへんか・・
義母も「クリスマスに誕生日会・・」と黙った。

がしかし、孫を気の毒に思う義父母が電話で孫に「誕生日にどうしたい?」と聞いた時、「ビュッフェ(バイキング)を食べたい」と言った為、この年から12月25日はビュッフェ、26日にクリスマス料理を食べる事になり、今現在に至るのである。

高校生になった今も、彼の為の日として祝う。
相変わらず今も長男夫婦は我が子の誕生日を前倒しでやってやる事もないが、しかし義父亡き今、義母と私の夫、私や子供達で出来る限りの料理を作ってビュッフェを作るのである。

あの年、私が心の底から日本を恋しく思い、義父が心の底から私を心配した事により、クリスピークリームドーナツにおいて、この提案が生まれたのであった。
長男夫婦など、こんな話を聞いも「食べ物にありつけるなら、何でもエエけど」であるが、亡き義父と私の絆が最初に生まれた年なのである。

そんなわけで、今年も私がデザート担当。
日本ではあまり馴染みはないが、ベイリーズ(アイルランド原産のリキュール)のチーズケーキ。


こちらは「ブラックフォレストトライフル」

今年もビュッフェで過ごす25日であった。

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