さて私が英国に嫁に来て、最初のクリスマスを過ごしたのは2010年の事であった。
あれから10年・・・予定では3、4年で日本に帰るはずが、今はメドも立っていない。
歳を重ねればそれだけ日本移住が難しくなる・・・今年はいつになく重い気持ちで迎えた年末である。

さてそんな中・・うちから車で10分の所に越した義母宅で今年のクリスマスを過ごしたわけであるが、義母の息子家族は義母から膨大な「金」というクリスマスプレゼントを貰っておきながら、1分の電話もよこさない。
義父が亡くなってから夫がいる女友達を嫌煙するようになった義母は、年々孤独になって行く。
クリスマスの夜を一人で過ごさせるのは可哀想だと思った私は「今日はここに宿泊します」と義母に伝えた。
私に喜んだ顔は見せなかったが、息子である私の夫には「気にかけてくれて有難うね」と言ったらしい。

さてクリスマス当日、互いのプレゼントを開けた。
義母へ私からのプレゼントを手渡すと、義母は「あなた、やっとまともに包装できるようになったわね」とプレゼントを手にして私に言った。
何やとー!!オバハン、もう1回言うてみー!!とは言えず・・・

イギリスに来て初めてのクリスマスの事。
買ったプレゼントは日本のデパートのように綺麗に包装などしてくれないから、自分らで包装紙を買い包まねばならない。
なんちゅう、面倒な文化や・・と思いながらも、私は日本のデパート店員がやっているように包装紙の端を三角形に向けてから内容物を包装した。
綺麗に出来たと私は思っている。

がしかし・・・

私の包み方はイギリス人で言う「フィッシュ&チップス包み」(フィッシュ&チップスを買ったら、そういう包み方であるから)であり、イギリス人にとって正解なのは「キャラメル包み」である。
これは日本のデパート店員から言わせると「簡易式」なのだと聞くが、その包み方がこっちの人達には失礼なのであった。

私はそれを失礼だと言われる筋合いもなければ、「汚い」と言われたくもなかった。
気持ちを込めて探したプレゼントであり、日本ではその包み方が「失礼」ではないからである。
しかし、義母は私に「正しいやり方を教えてあげましょう」と言ったが、私はそれを拒否した。
そんな事までイギリス流に塗り替えられたくなかった、私のせめてもの抵抗だったのである。

当時、私は強烈なホームシックにかかっていた。
空を飛ぶ飛行機を見ては涙が流れ、1月に入った頃には昼でもカーテンを閉めて過ごすようになった。
義父母と夕食を共にする事が苦痛で、顔をあげられない日々が続いていた中、日本のいとこが「笑ってはいけない・・・」の録画したものを送ってくれた。
それを見て、私はイギリスに来て初めてゲラゲラと笑ったのであった。

自分で決めて来た決意と心残りの葛藤が続きながらも、薄皮をめくる如く、自分の置かれた環境に納得して行ったのであった。
それゆえ義母から言われた、たかが「包み方」、「されど包み方」を私は譲れず、今日まで日本の包み方で来た。
誰から何と言われようとも、「これが日本では失礼に当たらぬ」とし、出来上がりが綺麗にも関わらず、たかが折り目が違うだけで、イギリス人とはどれほどに見知らぬ文化を受け入れない人種なのだと思いながら10年が経過したのである。

そうして今年のクリスマス、義母からこの言葉である。
やかましわ!やかましわ!やかましわー!!黙って受け取れボケー!!とトイレに籠って用を足しながら口にする。
すると摩訶不思議・・・義母への怒りは消えるのである。

ワシかて、ほんまは家に帰りたいわ!せやけど、アンタが孤独や思うから泊まる用意もして来たがな。明日、早朝で仕事やいうのに・・・感謝の気持ちは死ぬまで見せへんのかー!!と心で唱え、笑顔でトイレを出て行く私は、まさしく女優やんか・・

私はこれからも「フィッシュ&チップス包み」で行く。
誰がなんと言おうとも・・

人気ブログランキングへ