誰しも、その味を食すと、当時を思い出すという経験があると思う。
当時住んでいた環境や関わっていた人など、遠い遠い昔の事なのに、それが今まさに再現されるという不思議な体験を。

今から16年前、私はオーストラリアに住んでいた。
ブリスベンに住み、その後アデレードに移った。
ここが私の中の最高のオーストラリアになるのであるが、アデレードには「バロッサ・バレー」というワイナリーがある。
それまで、私はワインをたしなむ事もなく、ワインの味など知らないままオーストラリアに渡ったが、一緒に暮らしていたオーストラリア人や同級生たちが、とにかく赤ワインを楽しむ人達であったため、私も必然的に飲むようになっていった。

暮らすうち、この「バロッサ・バレー」が知る人ぞ知る有名なワイナリーである事を知るのであるが、私はワインを語れる舌も知識もなく、ただ身近で手軽なワインが「バロッサ・バレー」のワインだった事から、今なお、買うワインは、あえて「バロッサ・バレー」で作られたワインをついつい手にしてしまうのである。

先日、友人宅で行われたパーティで飲んだ赤ワインを口にし、思わず「これは!!バロッサのヤツちゃうか!!」と口にしたら、主催者の彼氏が「そうや!!よう分かったな!!」と感動の握手を求めてきた。

ワイン好きには好みがある。
チリ産が美味いと言う人、カリフォルニアや、アフリカや、フランスが一番美味いでと言う人。
私にはその違いも分からないが、自分がアデレードをあまりに満喫したせいだろうか、ワインは「バロッサ・バレー」が美味いと思っていて、それを味わうと当時を思い出すのである。




もう昔むかしの事なのに、当時に得た交友関係は今なお途絶える事なく、国を超えて交わされ続けている。
これも又、赤ワインのおかげなのである。

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