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本日は「酸素同位体比年輪年代法」についてご紹介します。
酸素同位体比年輪年代法(さんそどういたいひねんりんねんだいほう。英語: Tree ring dating using oxygen isotopes)とは、樹木の主成分セルロースに含まれる酸素の同位体比を年輪毎に測定し、その変動パターンから年代を決定する自然科学的年代決定法である。
年輪年代法とは、古い木材の年輪が過去の気候変動を保存していることを利用する年代測定法であり、その成果は考古学のみならず、古美術・古建築の年代決定の他、生態学・地形学・気候学・宇宙物理学にも利用されている。
考古学において、発掘で発見された遺跡の年代決定は重要な調査目的である。日本の考古学界においては、土中などでの残存性が高く、時代による形状の変遷が鋭敏な土器の編年が重用され、そのレベルは世界でも極めて発達していると言われている。しかし、土器編年に代表されるような相対年代(相対的な前後関係による年代指標)では基本的には実年代が明らかにならず、他の年代観に依存しない独立した体系であるため離れた地域間や他の遺物との整合性を取ることが困難であった。これを克服するために遺跡の暦年代・絶対年代の決定も試みられるが、その方法として特に放射性炭素年代法と年輪年代法がよく用いられてきた。
年輪年代法は、樹木の成長速度が生育環境と同調することに注目し、年輪幅のパターンを既知のサンプルから作られた標準年輪曲線と比較することで一致する年代を探索する年代決定法である。良好な試料が得られれば低コストで1年単位で年代が決定できるため、寒冷地や乾燥地を中心に世界中で用いられてきた。日本でも奈良文化財研究所の光谷拓実の取り組みにより、2021年現在で過去3000年分のヒノキの標準年輪曲線が完成している。しかし高温多湿な地域では年輪の変動パターンは日照条件などの気候以外の外的要因の影響が大きく、また多様な樹種が利用されていた日本では多量のサンプルが必要となることや少ない年輪数では有意な結果を得ることが難しいという欠点もあった。この欠点を補完する新しい年輪年代法が酸素同位体比年輪年代法である。酸素同位体比年輪年代法は2015年頃に名古屋大学の中塚武により実用化され、その名称は従来法の年輪幅の代わりに年輪毎に含まれる酸素同位体比を測定する手法に由来している。