前回の記事に引き続き、なぜ体罰や行き過ぎた指導が起こるのかについて
脳科学や発達神経科学をもとに説明していきたいと思います。
なかなか衝撃的なタイトルにしましたが
自分が小学校教員時代に感じ、実際に体験したことをもとに
お伝えできればと思います。
体罰や行き過ぎた指導になる原因は
実は脳の機能的な問題だけではありません。
それは「学級」という環境にもあると私は考えています。
学級担任は30人以上の命を預かる、いわば経営者。
関わり方次第で、その子供たちの未来を左右しかねない
そう言われても過言ではないほど
子供たちの発達や人生に大きく関わる存在です。
その分、のしかかる責任の重さはとてつもない。
ましてや大学を卒業したての新人には
とてもじゃないですが、抱えきれないほどの重圧です。
「学級崩壊」という言葉があります。
担任としては、常に追われる言葉のひとつでもあります。
「学級を崩壊させてはいけない」「崩壊させるとまわりに迷惑がかかる」
「保護者からレッテルを貼られる」「問題先生扱いされる」など
現場の先生からすると、その言葉の威力はとてつもないプレッシャーがあります。
このプレッシャーが
実は先生たちの「判断」と「行動」を狂わせる原因のひとつです。
さらにここに拍車をかけるのが、私が学級地獄と呼んでいる
1対多数かつ閉鎖空間です。
助けはそう簡単に呼べない。
何かあれば自己責任。
学級崩壊はさせられない。
もし助けを呼んだり、学級崩壊してしまうと
「できない先生」とレッテルを貼られる。
授業を進めながら、支援が必要な児童へ対応し
あっちでケンカが起きれば声をかけ
こっちで質問があれば耳を傾け
1対多数かつ閉鎖空間の
その多数はまだ未熟な子供たち。
その表現や行動も、やはり未熟です。
こうして
先生たちの制御や思考を司る「前頭前野」は
ついにパンクを迎えることになります。
このパンク状態は
脳にとっては「危険」であり
回避しなければならない状態です。
そのため、扁桃体が優位となり
脳が自分自身を守るための行動を選択するようになります。
以前にもお話したように
このパンク状態だけに限らず
「思う通りにいかない」状況でも
同じように、扁桃体が「脅威」として認知し
「警戒モード」となります。
子供が自分のいう事を聞かない時
先生自身の脳は自分の立場が脅かされると捉えてしまいます。
いわゆる不安と焦りです。
ここで脳は「闘争」か「逃走」を選択します。
多くの場合、扁桃体が発火し「闘争」することになります。
この時、前頭前野の働きは低下しているため
冷静な判断はおろか、場合によっては人格が変わったように
叱責するか、手をあげてしまうという行為に繋がるわけです。
実際には、目の前に困難をかかえてSOSを発信している子供がいて
その状況と手一杯な状態で限界を迎えている先生がいるという状態で
本来はどちらも助けを必要としているだけなんです。
前頭前野の働きは、時間が経ち
扁桃体の「警戒モード」が落ち着いた頃に
戻ってきます。
そのため、後から
「そんなつもりはなかった」
「自分を見失っていた」
と後悔にさいなまれることになります。
私自身も、担任をしている際
同時多発的に何かが起こると
普段はイライラすることのないちょっとしたことで
子供たちに叱責してしまうことがありました。
子供たち自身も驚きを隠せず
自分も、大きなショックを受けてしまったことを覚えています。
私にとっては、その子供たちの驚いている姿が
ストッパーとなって、我に返ることができましたが
全ての状況において、そのようなストッパーがあるとは限りません。
だからこそまず
子供たちに関わる先生たちは
脳科学や発達神経科学から、自分理解を深めていき
パニック指導や体罰などのメカニズムを理解することで
客観的な視点を常にもてるように訓練していく必要があると
私は考えています。
またそういった組織としての仕組みを作っていくことが
何よりも大事ではないでしょうか。
こうして考えてみれば
起きなくて済んだ体罰や行き過ぎた指導問題は
たくさんあったのではないかと思います。