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脳の破損等により性格や道徳心を変えてしまい
犯罪や暴力につながることさえあるとも掲載されていて
脳の特定の領域破損は犯罪を引き起こすと主張されてもいます。.
右側頭葉の脳腫瘍のため扁桃核を圧迫し暴力衝動を誘発した事例や
前頭葉の腹側正中前頭前皮質破損して犯罪を誘発した事例
前頭側頭型認知による犯罪行為になどが有名ですが
さらに今回の論文では
次に病変ではなく病変がつながる脳ネットワークの障害をしらべ
lesion network mappingという手法で
犯罪者の脳病変に共通のネットワーク障害を認めた
という結論を掲載していました。
引用開始
ほとんどが,Gageが損傷を受けたvmPFCと結合しており,さらにdmPFC(dorsomedial PFC;背側正中前頭前皮質)とも結合していた.この「犯罪関連ネットワークパターン(図E赤)」はこれまで報告された神経精神疾患のネットワークパターンとは異なるもので,認知制御や共感・感情移入の領域は含まれていなかった.その一方で,道徳,価値感に基づく意思決定,theory of Mind(他人が自分と同じように考えているという認識部位)のネットワークを含んでいた(図E緑および黄).
最後に,脳の障害時期と犯罪の時間関係が分からないため,最初の検討から除いた23例について,各自の脳ネットワーク障害が,今回特定した犯罪行為と関わるネットワークと重なることを検討し,再現性があることを確認している
引用終了
本研究の注意点と課題
引用開始
この論文を読んでまず感じたのは,注目してきたコネクトーム研究がこのような領域に役立ったという驚きである.「脳の回路や活動」を直接見ることができれば,脳や疾患の理解が変わるのではないかと考えていたが,罪を犯す心を解明しうるとは想像もつかなかった.さらに次のことを考えた.
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将来,脳の病気で自分や周囲の者が罪を犯すかもしれないと考えると非常に怖い.
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脳の病気により罪を犯した者をどのように罰すればよいのか?
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自分や周囲の者が犯罪の被害者になり,その犯罪が脳の病気によるものと診断された場合,犯罪や犯罪者をどう考えるだろうか?
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これまで脳病変が原因で罪を犯した者を正しく診断できていたのか?
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脳病変が原因で罪を犯した者の責任能力を正確に問うことができるのか?
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脳病変が原因で罪を犯した者,犯すかもしれない者を正しく治療できるのか?
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いずれも非常に難しい問題である.それだけこの論文の社会的インパクトは非常に大きい.
しかし,著者も考察で述べているように犯罪行為は脳のネットワーク障害単独で説明がつくものではないことを強調する必要がある.これまで犯罪に対して遺伝,環境因子,社会的サポート,発病前の人格的特徴等が影響することが知られている.さらに著者らの示したネットワークの障害を来す病気は非常に多いが,犯罪を来すのは一部の症例である.
この論文を出発点として,多くの領域の人々による議論を要する問題である.
引用終了