『痛い、と思うから痛いんだ』という、少々説教めいた話 | WillLaboのブログ

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WillLaboは、東京の両国にある、リハビリスタジオです。
運営しているのは、作業療法士の山田 稔です。
気軽に、ヒゲ先生とお呼び下さい。
靴専門の理学療法士中田 翔が「既成靴の調整」によって、戻りづらい身体を保つお手伝いも始めました。

日ごろから、WillLaboには痛みに悩んでいる方がたくさんお出でになります。


専門家として、解剖学(人体の骨関節や筋肉の配置)に照らし合わせてたり、痛み受容器(神経の痛みを感じると考えられている部分)の考慮をしたりと色々知識と技術を組み合わせて対応しています。



しかし、なかなか「痛み」ってよくならないですよね



なんでなんだろうか、という時に考えるのが、痛み心理コントロールという考え方です。


平たく言えば、

『痛い、と思うから痛いんだ』

ということなのですが、

こう書いてしまうとまるで昔の頑固おやじや運動部の鬼コーチに怒られているような錯覚を覚えますね!?



しかし、“疼痛神経生物学”という分野があり、実は『痛いと思うから痛い』は、科学的に根拠のある話なのです。(詳しくは、Butier 2000、Waddell 1998等の論文があります)

「痛みは、抹消の侵害受容器(痛み受容器に同じ)が痛みの原因であるとする単純な生体力学的なモデルでは慢性疼痛障害に対応できない」という考えから、疼痛体験の生物学的、心理学的、社会学的要素の相互作用を考慮しなければいけないんだ、という発想で始まっている学問です。



ということで

私の理解しているところをお話しします。


動物が運動を起こすときには、以下のような順序で運動・動作が行われています。


①運動のシュミレーション(どんな、運動を起こすのか、一度頭の中でおさらいをしている段階)

②運動を起こすために必要な筋活動やそれに関連した姿勢保持の準備(この段階で、筋肉が『さあ、やるぞ』、 

と身構えます)

③実際の運動開始

④運動と動作の実行(運動として、個々の関節や筋肉が働くことと、それが目に見えるような動作につながること

は区別して考えています)

⑤動作としての完成(目的の動作は終了です)

⑥動作が上手く行ったかどうかの判断(ここも非常に大切で、運動学習という段階の教師役になります)


そして、実はほとんどの段階が、意識外で起こっていると理解しています。

実際に自分で意識できるのは、③④⑤くらいのところだし、その意識できる範囲も実は限られていると思います。


で、慢性的に痛みを抱えておいでの方は、この①~⑥が、どのように作用しているか、を考慮するわけです。


つまり、

①の段階で、すでに予測として、『痛いだろうな』という、心の準備ができてしまうと、その後の段階がすべて、

《動いたら痛い》

を前提に動作を始めてしまうということです。


そして、結果的に動作は完了しても(たとえば、椅子から立つことができても)

『やっぱり痛かった』

という事実を再確認し、その体験を学習して毎日反復している、まさに悪循環に陥っているという状況だと考えます。



偉そうに言ってますが、実はこれ自分の体験でもあります。


昔、少々無理をして肩を痛めたときに、本当に数か月間、ジンジンうずくような痛みに悩まされていました。

そこで、必死に解剖の本と首っ引きで自分の痛みを分析し、ココダっという個所を強引に押さえつけ、痛みが引くまで動かし続ける、という自虐的なことを涙を流しながら数日行ったところ見事に痛みが消えました。


つまり、①の段階でつまずいており、どうしても痛みを前提に動いていた筋肉に、強制的に違う動きを体験させたのではないか、と考察しています。


勿論、WillLaboにおいでいただく方にこのような乱暴なことはできませんので、施術中何気ない会話を交わしながら(時には、愚痴を聞きながら)、穏やかに、筋肉に今までとは違う動きを体験させてあげる、という手段をとっています。


すると、黙々と施術をしていた時は少し関節を動かしただけでも『痛い、痛い』といっておられた方が、話しながら施術することで『今日は、全然痛くなかった。うれしい。』といってお帰りになります。


皆さんにも、経験がないでしょうか?


普段はとても痛みが気になるのに、何かに集中したりほかのことに気を紛らわせていると、『あら、何か今日はあんまり痛くないわね』、とかんじたことを。


このことも、上記の理屈を裏付ける結果ではないでしょうか?

つまり、痛みを意識し続けて、痛いだろうなと予感しつつ動くよりも、何か別の事象に意識を向けていることが、実は別の神経回路を使った、別の動き方になっている、という可能性です。(動きとか動作、といっていますが、動物は、一見止まっていても、呼吸しているし、心臓も動いていいるし、内臓だって目には見えませんが活発に動いています)。

ですから、痛みを意識しすぎている方には、『あまり、痛みを自分で探さないでくださいね』、とお伝えしたいのですが、実際に痛むのは本当のことなので、そんな、説教じみたことは言えません。

出来るだけ、痛みなく動けた、という実感を持ってお帰りいただくことが、私のできることだと考えております。



勿論、痛みの発生機序はまだすべて解明されているわけではありませんので、すべての方に効果があるかは、もっと症例数を経験し、データを集める必要があります。でも、その努力は怠りません。



痛みを理解し、皆様の痛みを自分のものとして感じるだけでなく、痛みを解決できるセラピストでいたいといつも願っている、WillLaboでした。