マーラー:ピアノ・ロールによる自作自演集
グスタフ・マーラー(p-roll)
VPOの指揮者にまで登り詰めた彼が指揮するオーケストラ演奏を、我々は残念ながら録音を通してすら聴くことができない。しかしながら、彼が弾くピアノによってその片鱗をうかがい知ることならできる。それが、彼の演奏をロール紙に記録したピアノ・ロールによるものだ。もちろん100%再現という訳にはいかないが、実際に聴いてみるとこれがなかなか興味深い。
彼は「ヴェルテ・ミニヨン」と言う当時の最先端のピアノ・ロールを用い、自作4曲を残している。この動画の演奏順に、「若き日の歌」の「緑の森を楽しく歩いた」、「さすらう若人の歌」の「朝に野辺を歩けば」、交響曲第4番ト長調の第4楽章、そして交響曲第5番嬰ハ短調の第1楽章となっている。特に後半2曲は我々が良く知る交響曲の代表的作品だけに、オリジナルのオーケストラ版との比較も容易にできることだろう。
ただ、演奏に関しては(ピアノ・ロールの機構上の限界に由来する指がもつれたように聞こえる面はさておき)、特に何か変わったことをするわけでもなく、ごくごく普通の解釈と言える。作曲者本人による演奏ということで何か特別なものを期待するとかえって肩透かしを食らうことになるだろう。しかし、逆に言えば、彼はスコアに非常に具体的かつ細かい指示を書き記していることで知られているが、オーケストラの現場を知り尽くした彼の指示通りに演奏すれば、必ず音楽として成立するようになっているということが、この演奏は間接的に証明しているとも言える。