傑作?問題作!?◇ブゾーニ:ピアノ協奏曲,アムラン(p),ヴァンスカ | youtubeで楽しむクラシックと吹奏楽

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ブゾーニ:ピアノ協奏曲

マルクアンドレ・アムラン(p)

オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団


 

このピアノ協奏曲は合唱付きの非常に珍しい作品として知られているが、ウィキペディアによると、ピアノ協奏曲に合唱が入る例としてはこれが最初ではないとのこと。ただそうではあってもほとんど例がないことには違いない。

 

この合唱の部分はもともとは別の作品として作曲されていたものの転用である。すなわち、ブゾーニがデンマークの劇作家エーレンスレーヤーの戯曲「アラジン」に付曲した際に作曲した、ドラマの最後を締めくくるアラーの神を讃える合唱だ。しかし、この試みは実現しなかったので、ピアノ協奏曲の一部として転用したというわけだ。なので、ブゾーニがイスラム教に傾倒していたわけではないし、またこの作品全体が「アラジン」の何らかのプログラムに依っているわけでもなく、いわば寄せ木細工のように出来上がっているということができる。そういうこともあってか、発表当初から統一感がないという批判をたびたび受けてきている。

 

曲はハ長調で始まる。どこか、同じ調性のシューマンの第2交響曲を聴いているような心持になる。ブラームスの同種の作品と同じく、協奏曲というよりは「ピアノ独奏付きの交響曲」という性格が強く(その割に独奏パートは滅法難しい)、華々しくピアノが活躍する音楽を期待する向きにとっては、多少がっかりするかもしれない。演奏時間にして1時間強、おまけに合唱まで用意しなければならないうえに、さらに独奏パートはやたら難しいだけで見せ場がないとなると、この曲を演奏したがるピアニストもオーケストラもなかなか現れないというのも頷ける。事実、日本で初演されたのは何と21世紀に入ってからだ。しかし、音楽そのものは決して悪いわけではなく、個人的にはむしろ好きなタイプに入る。なのでいつか実演に接する機会があることを期待したいのだが、なかなかハードルが高そうだ。

 

この動画でピアノを弾くアムランはこの作品の紹介に積極的なようで、先述の日本初演に際してもソリストを務めている。この曲の独奏を受け持つのは先述のように労多くして実り少ない作業であろうが、だからといって生半可なピアニストではこの曲の真の魅力を出し尽くすことは不可能だろう。やはりアムランほどの名手を以てしてこそなのだ。