音楽をやっているっていう行為は、生きているということ。

生きるのをやめるということになると、死ぬしかないですよね(笑)。




菊 地  プロとしてやっていらっしゃるときって、まず好奇心が増えるじゃないですか。先生みたいに成功されると、はっきりいって、飯食うためにやる必要もなくなってくる。



服 部  そんなことないですよ。音楽をやる喜びとか、音楽をつくる達成の喜びとか、いろんなインセンティブがうまくまざっているから、いま飯が食えてるんです。



菊 地  そうなると、私がいちばん知りたいのは、好奇心と創造する感性をどうやって保っているのか。そこが聞きたい。




服 部  好奇心を持つことが、ま、そういうものを生み出す素になるのかもしれませんけどね。




菊 地  それって、だんだん減っていかないのですか。



服 部  音楽をやっているっていう行為は、生きているということ。だから、生きるのをやめるということになると、死ぬしかないですよね(笑)。




菊 地  音楽は、生きている証!




服 部  そんな大げさなことはいわない(笑)。ふつうに生きているという意味です。ところが、音楽っていうのはある程度書けるようになると、自分が書いたものに飽きてくるんですよ。




菊 地  そうなんですか。




服 部  僕が『音楽畑』を第20作でやめると言っているのは、もう同じようなものは書かなくてもいいと自分で思っているから。今度は、こう何か違うものをつくって、たくさんの人に聴いてほしいと思いましてね。




菊 地  音楽家のロマンですね。




服 部  おもしろい話なんだけど、仕事をパッと頼まれるでしょう。そのときに打ち合わせして、「あ、この曲はアレでいいな」ってなると、アレというのを引き出して、パッと脳にすぐ血が入るような道があるらしい。



菊 地  すごい~。




服 部  そうすると、あくせく書けちゃうんですよ。みなさんは良かったと誉めてくださるけれども、それは自分のそんなに新しい部分じゃなくて、自分にある皮膚を少し削ってあげたくらいの感覚なんですね。




菊 地  それでも、苦労するときはあるんですか。




服 部  CDをつくるときは17曲ぐらいですが、かならず1箇所、1個だけ苦労するんですよ。大体はスルスルとできるんだけど、1、2曲はメチャクチャ苦労して、どろどろになっちゃうことがある。




菊 地  そこをクリアしてつくるのも、楽しさのひとつですよね。



服 部  そのときは、たぶん、いままで脳に行っていない血が行っているんじゃないかと思うんですけど。いつも、そういうことを言って、つくっていたいですね。




菊 地  もう、仕事という感覚じゃない。




服 部  仕事と思ったことはないです。




菊 地  やっぱり。



服 部  もちろん、たまに「あっ、仕事だ!」と思う仕事もありますが、最近は年1回もないです。自分が、楽しかったり、やりたいことをやらせていただいている、という思いはあります。




菊 地  愚問ですけど、楽しいですか?



服 部  もちろん、楽しいですけど、いちばん、つらいのは書いているときですね。楽しさが待っているけど、つらいことってあるでしょう。



菊 地  結局、ものの考え方、見方ですよね。



服 部  昔スキーに行くと、山を登っていったじゃないですか。ずっーと登って行って、もうつらいけど、ここからサァーッと滑っていく快感が待っているから、登っている。あんな感じですね。ずっーと滑っていると、下へ落っこちてしまいますもんね。



菊 地  先ほど、うちの子の絵を見てもらいましたが、いま先生がおっしゃったように、出来上がったとたんに興味がないんですよ。見もしない。



服 部  わかります。だって、自分の曲をずっーと聴く人がよくいますけど、僕はダメですねえ~。なんか聴いちゃうと、「なんだ、あそこはこうすればよかった。発表しちゃった後だしなぁ」と思ったり、「なんか、おもしろいことやっているなぁ、おまえは」と思ったりします。




菊 地  なるほどねえ~。



服 部  なんで『音楽畑』をやめるんですかって、みんな言うんだけど、ちょっと飽きたからねって。そういうふうな言い回ししかできない。




菊 地  言葉をかえると、音楽にたいして、純一無垢の時間を持ちつづけたいということなんでしょうね。『音楽畑』って、先生のライフワークなのかなぁって聞こうと思ったんですけど、ちょっとピンときて、そうじゃないと思いました。




服 部  ワン・オブ・ゼムです。



菊 地  次々と生まれてくるんだ。




服 部  生まれるというか、生まれたいんですけどね。『音楽畑』は、自分がやりたかったことの一つで、けっこう大事な部分を占めていますけど、ライフワークかといわれれば、いつ死ぬかわからないけど、まだいろいろやりたいよ、ということですよね。




菊 地  そういう意味合いを含めまして、福山雅治さん、山下達郎さん、女子十二楽坊といった、多彩なアーティストたちの音楽も手がけ、いまもジャンルや年代を超えて音楽を楽しんでいる。本懐ですね(笑)。




服 部  まだまだですよ。本懐に至ればいいなぁと思っているだけです(笑)。