音楽の自然食なんてコピーをつけて、

「やぁ、いい発想だなぁ」なんてやっていました(笑)。



菊 地  表紙の絵は 当時 7歳の息子が描いた絵なんです。偶然、息子の個展に来ていた記者の方がとても気に入ってくれて、表紙を飾ることになってしまいました。



服 部  綺麗じゃないですか。本当にカラフルで綺麗だなぁ。みんなで見上げて、花火を見ているところですよね。すごくいい。色使いがおもしろい。絵柄とかはいろいろ勉強なさると覚えるだろうけど、色使いは天性のものがありますよね。


菊 地  先生は絵もお描きになるのですか。


服 部  ぜんぜんダメです。だけど、絵は好きだからよく観ます。


菊 地  音楽家の方って、楽器はいろいろやるけど、絵はあまり描かないという人が多いみたいですね。


服 部  観ていて、結果的に何かを得る人はいるでしょうけれど、絵とか習字とかは、苦手な人が多いですよ。


菊 地  (音楽という)一つのことに打ち込んでいることによって、ほかの世界に存在している作品のエネルギーが自然な形で見えてくるんでしょうね。私事になりますが、私は生まれて1歳で小児マヒにかかっちゃって右足が動かなかったんです。小児マヒのポリオ・ウィルスが大流行していて、それに感染したためです。


服 部  大変でしたね。


菊 地  小さい頃は三輪車にも乗れず、足が変形して靴もうまく履くことができなかった。20歳過ぎてからも、どうして僕はびっこ引いているのかと、くやしくて…!それから25歳くらいまで、動かしたくて、動かしたくて、どうしても動かしたかったんですね。それがある日、強い思いをもったときに足が動き始めたんです。


服 部   うーん、すごいね。


菊 地  それ以来、どんどん回復して、それどころか人のオーラが見えるっていうか、波動が見えるようになったんです。音楽は趣味でずっときていたけど、そういうのが見えるようになってから、波動の一部が欠けた具合の悪い人を音楽で直してあげたいと思った。だから、私の音楽の接し方っていうのは、人のエネルギーを充足させるための接し方なんです。


服 部  音楽は、そういう効果があるかもしれませんね。


菊 地  私は先生のピアノコレクションがきっかけで『音楽畑』と出会いましたが、第20作目を迎えた『音楽畑』からは、人の心を癒す生体エネルギーの波動の音が聴こえてきます。その20年間にはずいぶんいろいろなことがあったと思いますが、ネーミングの所以がすごく気になりました。音楽の自然農園とか、自然食っていう発想から手がけてきたようですね。


服 部  『音楽畑』を発表する前は、郷ひろみさんや山口百恵さんの音楽監督をやっていて、まあ、それなりに仕事はありましたけれども、自分の音楽の仕事というよりは、その人の編曲とかして音楽を盛り立ててあげる仕事、お手伝いみたいなものでした。ちょうどそのころ、サントリーのコマーシャルの仕事も手がけていたんですね、レッドとオールドを。その音楽をふくらませていっぺん出してみないかということになって、発売したんです。コマーシャルって短いでしょう、30秒とか長くても1分とかね。それをふくらませたんです。


菊 地  そのアルバムが好評を得て、第20作までの長い道のりを歩むことになったんですか。


服 部  そうです。それを作ったときのデザイナーが浅葉克己さん。へんな帽子をかぶった卓球の好きなオジサン(日本の広告デザインの第一線で活躍しているアートディレクター)です。彼とタイトル何にしようかと。作曲や編曲もするし、ピアノも弾くし、司会もやる。いろんなことをするからねえ~。しいていえば、音楽畑の人間だねぇということで、その名前でいいじゃない!となって、『音楽畑』に決まったんですね。そこから逆に発想して、畑ということだから、音楽の自然食なんてコピーをつけて、「やあ、いい発想だなぁ」なんてやっていました(笑)。


菊 地  音楽の自然食という響きって、ものすごくいいなぁ。


服 部  当時は、シンセサイザーやエレクトリック・ギターがすごく盛んな頃で、そういうものが氾濫していた。そういうものを使わないと新しい音楽家じゃないというような雰囲気があったんです。だから、ラブサウンズという言葉は当時なかったんですが、あえて反抗してアコースティックギターとか使って、それでいこうと。脳に沁みるときに農薬を使わないとかね、いろんなコピーをレコード会社が考えてくれました(笑)。


菊 地  まさに音楽って、人のエネルギーを補足するためにつくっているという意識からみると、すごく生命にかかわるものという気がしますね。


服 部  家でバットを振り回しているようなお子さんっていますよね。そんな子に困っていたお母さんから、お手紙を頂いたことがあります。


菊 地  暴力少年というか、お子さんの家庭内暴力に悩んでいた方ですか。


服 部  そうです。その子は、小さい頃からピアノを習っていて弾けたんだけど、お母さんが僕のピアノの譜面を大切に持っていたんです。ある日、子どもの部屋から久しぶりにピアノの音が聴こえてきたと思ったら、そのうち部屋から出てきて、「ババァ、もっと譜面ねえのかよ」といわれたそうです(笑)。


菊 地  先生の譜面と出会って、好奇心が芽生えた。好奇心は生命力の栄養素として最高のものですから、お母さんはすごく嬉しかったでしょうね。


服 部  家庭内の悩みが解消するきっかけになったということで、「本当にありがとうございます」という、とても丁重なお手紙を頂いて驚きました。こっちは、そんなつもりで書いているわけではないし、とくにそんな効果があるとは思っていませんから。


菊 地  そういうお手紙は多いんですか?


服 部  そういうふうな手紙も来れば、服部さんの曲を聴いたら自殺したくなったという人もいますし、いろいろな人がいます(笑)。菊地先生がおっしゃったように、音楽は人のエネルギーを補足する効果があるけど、プラスもありますし、マイナスもあります。怖いですよね。自分では無心で書いていますけど、怖い効果もあるんだなぁということはわかりますよ。