頭の中にある棚から、「北斗の拳」の制作秘話を引っぱりだしてみた。


当時ジャンプの編集者だった堀江さんが採った原作者を決める方法は、凄いの一言に尽きる。


最終的には、ドーベルマン刑事の原作者である岡村さんに決まったが、堀江さんが応募してきた原作者たちに求めたのは、なんと有無も言わせずの書き直しであった。


応募してきたのは岡村さんをはじめ、ゴルゴ13などで持ち回りの原作を経験してきたプロフェッショナルたちばかりだったというから、堀江さんの「北斗の拳」連載にかける意気込みは相当なものだったのだろう。


とは言え、有無も言わせずの書き直しなんて…。プロフェッショナルを自認する原作者たちにしてみれば癇に障るというか、たまったもんじゃなかったはずだ。


で、ひとり…、ふたり…、と脱落し、けっきょく残ったのは岡村さんだけだった。


当時聞いた話では、脱落していった原作者たちの原稿はワープロで丁寧に書かれ、映画のシナリオ見本のように情景も丁寧に書かれていたようだ。それにたいして、岡村さんの原稿は手書きで情景は大雑把だったが、なんといってもセリフが力強く、絵を担当する原さんが創造力を発揮しやすいものだった。


ここだよ、これだよな。


ひとつずつ経験を積み上げていって、少なからずプロフェッショナルを自覚するようになれば、一度完成させた作品を破棄して白紙から作り直すのはむずかしい。さらに上質なものが創造される確立が高いことを頭で理解していてもむずかしい。


しかも、岡村さんのばあいは相当な回数書き直しを受け入れたらしいから、凄ごい。


これって、名作を創りだしていくために原作者⇔編集者⇔漫画家が一体となる理想のパターンなんだろうな。


やっぱり、絵筆を握る漫画家の感性に訴えかけるセリフ回し、これは大切だよな…。