
岸田文雄首相が昨年の10月初旬、秋の臨時国会における所信表明演説で、「リスキリング」の支援に今後5年間で1兆円の予算を投じる方針を示した。リスキリングとは、「新しいことを学び、新しいスキルを身に付け実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」らしい。日本人のくせに英語表現を使うことに抵抗感はあるが、言わんとしていることは理解できる。
「少にして学べば壮にして為すこと有り。壮にして学べば老いて衰えず。 老いて学べば死して朽ちず。」
これは、小泉純一郎元首相が平成13年春に衆議院での答弁で、佐藤一斎先生の著書より引用した言葉だ。自分の人生はこの言葉には程遠い、安きに流れる人生だったが、何回か真面目に自分を見つめ直して、リスキリングに努めた時期があった。
1つ目は浪人時期だ。高校で有名進学校に入った驕りから、散々勉強しないで高校生活を過ごした結果、1校も大学に合格せず、自動的に浪人生活に入っていった。毎日後ろ向きな気分で図書館で勉強しながらも、いつの間にか真剣に勉強に向き合う重要性を感じるようになった。その時に、しっかりとした準備のできていない人間にチャンスなどあるはずもないと思うようになった。
2つ目は社会人2年目だった。有名大学に入った驕りから、まともに経済の勉強もせず、だらだらと大学生活を過ごした結果、正しい就職活動をすることができなかった。案の定、就職した直後に、金融危機が起こり(実際はとっくに金融危機は発生していたのだが)、潰れるはずもないと思われていた金融機関が次々に破綻した。その煽りをまともにくらって、僕の会社もそこから数年後に潰れるのだが、その当時から潰れる会社ランキングの上位にあげられていた。完全に選択を誤ったと後悔し続けながら、毎日早朝に出社して、食堂で資格の勉強をした。背水の陣で資格勉強をしながら、同時に経済のことを深く学び、自分がこの先どういうキャリア形成をしていけばよいのかを考え続けた。
今、3つ目の時期が来ていると思っている。メガバンクに就職し、大企業ならでは仕事をしてきたことはとても良い経験になったし、学生の頃のようにだらだらと時間を費やしてきたわけではないが、どちらかというと、これまでの蓄積したものを吐き出しながら仕事をしてきたイメージで、新たなスキルを貪欲に蓄積してこれたかは怪しいと思っている。100年人生とか言われるようになったが、人生半分の折り返し時点で、学生時代から蓄積してきたストックはほぼ吐き出した状態にあると言える。折り返し人生を生きていくには、もう一度、ガソリンを補給してからリ・スタートする必要がある。
それが、今の僕に必要としている課題なのだと思っている。