産経ニュース海自、新春の荒れる太平洋上で急患救出劇 「日本の守り神」豪華客船乗客から拍手SANKEI DIGITAL INC. 年末年始を太平洋上で楽しむ乗客を乗せた豪華客船で2日、急患が発生し、救助要請を受けた海上自衛隊のヘリコプターによる救出劇が繰り広げられた。強い風と波に見舞われる中、救急搬送が必要な2人をヘリに引き上げるという難しい作業だったが、無事に成功。海自の高い救難技術に、乗客からは大きな拍手が湧いた。 救出劇の舞台となったのは郵船クルーズ(横浜市西区)が運航する客船「飛鳥Ⅱ」。昨年12月26日に横浜港を出港し、グアムとサイパンに寄港後、横浜港に戻るところだった。 飛鳥Ⅱからの救助要請は2日昼ごろ、硫黄島(東京都)の西約350キロ付近を航行中のことだった。防衛省によると、海上保安庁側から、ぜんそくの症状が出た乗客と、右足大腿骨(だいたいこつ)を骨折した乗客の計2人について救助要請があり、海自73航空隊硫黄島航空分遣隊のヘリ「UH-60J」が出動した。 飛鳥Ⅱも硫黄島に向け針路を変更、午後4時15分ごろに硫黄島の西240キロ付近の海上で救助作業が始まった。しかし、付近の海上は風速9メートルに加え3~4メートルのうねりが続く天候不良。作業は容易ではなかった。2ページ 「硫黄島に近づくにつれて船内の揺れがひどくなり、真っすぐに歩けないほどだった」 家族旅行で飛鳥Ⅱに乗り合わせていた長野市の男性(67)は、当時の様子をこう振り返る。男性によると海自ヘリは船尾側から近づき、救助のタイミングを計るため、下降と上昇を何度も繰り返したという。 「ヘリが船に接触することはないのだろうか。もしヘリが墜落したら誰が救助するのか、硫黄島から飛んできて燃料は持つのか…」 作業開始から約1時間。デッキ上で男性ら数十人が固唾をのんで見守る中、2人の急患が無事、ヘリに引き上げられた。乗客は硫黄島へ引き返すヘリを拍手で見送ったという。 硫黄島に搬送された乗客2人は海保の航空機を経由して病院に搬送され、いずれも命に別条はない。飛鳥Ⅱも定刻通り4日に横浜港へ帰港したという。 「改めて自衛隊は、日本の守り神だと思った」
