中学生のとき、日曜の朝、英語塾に向かっていた。
駅近くの地下道を通っていたら、向こうから薄汚い身なりのオジサンがやってきた。
地下道には自分とオジサンしかいなかった。
オジサンは、「ぼくぅ、○○×しない?そこのトイレに行こうよ」と言ってきたのだ。
「・・・・・・・・間に合ってます。」恐ろしくなって足早に逃げた。
ああ怖かった。それにしても 間に合ってます ってコメントは、なんなんだ。


大学1年のとき、入りたてのサークルで女の先輩に帰り道、「ちょっと部屋に上がって」と誘われた、何か手伝って欲しいのかなと入ると、いきなりキスしてきた。「げ?!」先輩は、同じサークルの先輩の彼女でもある。「私、どう思う?」
「いや・・ちょっと・・・キス下手かも」恐ろしくなってさっさと逃げた。好みじゃなかったのはもちろん、男先輩の顔がちらついた。危ない危ない。それにしても「キス下手かも」ってコメントは、なんだったんだ。ちなみにヘタとかどうとか言うほどじゃなく、軽く触れた程度、何とか相手を傷つけず逃げようと思ったコトバだったんだけど。的外れでした。


大学3年のとき、サークルの友達2人と部屋で飲んでいた。1人は酔いつぶれていた。
「男ばっかで味気ないよなー」というM君、体はごついがまつ毛が濃くつぶらな瞳だ。
「じゃあ、アタシがなぐさめてあ・げ・る」何気ないジョークだった・・・。
次の瞬間・・ぶちゅー、口の中に舌が入ってきた。
(あうっ!ザケンナこの野郎!!)と思いつつ出てきたコトバは、
「いやんっ。やめてぇ」M君の彼女の顔がちらついた。
こいつマジで両刀遣いか?いかんいかん。ほうほうのていで逃げ帰った。
逃げ帰るとき、部屋で酔いつぶれていた“きゃしゃで長髪のS君”のことがチラとよぎったが、そのことは思い出さないようにした。封印だ。
でも「ヤメロよ!」じゃなく「いやん」は、ないよなー。


27歳のとき、外回りの仕事をしていた俺は、喫茶店のママと仲良くなった。「いい娘がいるから、お嫁さんにどう?」彼女を紹介してくれるという。ママさんいい人だなあ。お寿司屋で待ち合わせ、紹介してくれた彼女と3人で飲み食いする。寿司もママさん紹介の安くてうまい寿司屋だ。
あー楽しかった。彼女を帰し、ママさんが「今の娘どうだった?」オレ「え、まあまあ可愛いんじゃないですか」ママさん「そお?じゃあ送っていくから車に乗りなさい」助手席でたわいも無い話を少しすると、いきなり頬にチュッ。(えー?)さらに唇を近づけてくる・・。いかん、さっきの娘はオトリか?!
頭にママさんの旦那はガテン系という情報がフラッシュバックした。
「えっと、送ってもらわなくていいです。さようなら」
暗闇に妖しく光る目は悪魔、そうサタンのしわざだ。さようなら猫顔のママさん。
そして紹介してくれるっていった娘とももう2度と会うことはなかった。


30代になり、ある団体の年末の打ち上げのとき。
1年間の役員の仕事を終えて感慨深げな、Tさん。飲むほどに酔うほどに、苦労を思い出してきたのだろう。そろそろ中締めのあいさつをお願いしようとしたそのとき。
メンバー一人ひとりに感謝を述べつつ、キスをしてきたのだー。
あーっっ こんな体験もうイヤっ(T。T)
地元では、それなりの名士だ。それが、逃げ惑うメンバーに覆いかぶさって、ありがとうありがとうって、キスをして舌まで入れちゃうのだ。勘弁してくれ。でも最初にされちゃった人たちが、Tさんの味方にまわって、全員が感謝を受け入れなきゃならない雰囲気になってきた。
こんなオッサンとイヤだぁーの声もむなしく、“感謝”がぬめっと入ってきた。
読んで気持ち悪くなった人がいることで、俺の気も少しは治まるよ、ごめん皆さん。

  

中年になり、もう襲われることも無いと思うが、懐かしくもあり、いや、でもいろんな意味で、二度とゴメンですよ。ややこしいのは。