定価1760円。
あらゆる文献を西部警察期を軸で追った本です。断片的に複数の文献で語られていた内容がまとまったドキュメント本です。

日本テレビからテレビ朝日へ移籍して同種の作品を制作することは当時、銭ゲバと言われて石原プロと日本テレビの関係は悪化したというような噂もありましたが、そういうことではなかったことがわかります。
広告代理店を介さず、スポンサーに直接番組を売ることで高いマージンを得て、製作費として注ぎ込むことでのスケールの大きな作品を実現。これは石原裕次郎というブランドと名番頭・小林専務のビジネスマンのビュー、石原裕次郎さんについて行く渡哲也さん。この3名が会社としてのそれぞれの役割を果たした結果だったのだと分かりました。
そして大都会制作時、石原プロはまだ映画の負債を抱えた状態で渡さんは刑事ドラマをやるしかなかった、というのもファンとしては嬉しいですが、俳優・渡哲也さんとしては迷われたのも当然ですね。

西部警察が普通に始まってもインパクトがない。戦車を出す、という小林専務のアイデアと実現させようと奮闘する石原プロ。マスコミを巻き込んだ戦略は功を奏して大河ドラマの裏番組とは思えない視聴率を叩き出しました。もちろん、最初の2話だけではなくその後も視聴率を取り続けなければならないわけですが、木暮課長大活躍の第3話、駅構内のロケやアクションの第4話、人質を爆死させる凶悪犯との対決の第5話と日曜20時とは思えない民放枠の数字を叩き出しました。

しかし、第88話・バスジャックで倒れた石原裕次郎さん。成功率3%の手術を経て不死鳥の如くカムバック。
第89話の俺たちの勲章では過去の木暮課長のシーンをつなぎ、撮影済みのシーンと組み合わせて編集。下記はクライマックスの大門のシーン。心中は落ち着かなかったはずですが一切それを感じさせない渡さんの演技はやはり凄いです。

カムバックを果たした裕次郎さんが全国のファンに御礼を言いたいという想いと、さらにスケールアップをする西部警察の思惑は小林専務によってPARTIIとして実現。ロケ隊は静岡県に向けて出発。

木暮課長・石原裕次郎さんのカムバックを印象付ける演出を模索した小林専務は静岡駅前にヘリコプターによる登場、というアイデアを考え、これもまた関係各所の許可を取り実現。視聴者はその予想通り歓喜しました。

また全国縦断ロケーションというスケールアップしたアクションをアピールするために浜名湖での遊覧船爆破を、これまたリステル浜名湖の廃船を入手して実現。

続く広島では同じく広島電鉄から廃車の路面電車を調達し爆破。小林専務の手腕は止まることを知らない。

石原裕次郎さんと渡哲也さん。木暮と大門に率いられた西部警察。第3の男・小林正彦さんの存在がこのテレビ映画を創り出したわけですね。この頃には石原プロは負債を完済どころかすでに資産を形成していました。

西部警察ファン、石原プロファンの方にはお勧めの本です。

余談です。この時代の作品を見ているとちょいちょい背景として登場するのは今ブームになっているレトロ自販機。
私ももう30年以上のファンで、関連本やサイトがなかった時代は地元の古びたドライブインを巡ったものです。
そんなレトロ自販機のマスコットが発売されていたので買っちゃいましたw

西部警察の劇中ですとここにはないのですが、カップラーメン自販機がフォーカスされる回がありました。
新人・リュウが翔んだ、です。

殉職したタツの後任・リュウは飲んだ帰り道、カップラーメン自販機でカップラーメンを買い、その場でお湯を入れます。しかし割り箸がなかったために着任前の西部署に侵入して木暮課長のブランデーまで呑んでしまうという流れ。
発端がカップラーメン自販機なんですねw