令和2年8月10日に俳優の渡哲也さんがお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。
これまで本当にありがとうございました。
大都会・西部警察に続く刑事アクションドラマです。

ゴリラ・警視庁捜査第8班』は、1989年4月2日から1990年4月8日まで、テレビ朝日系列で毎週日曜20:00 - 20:54に全46話が放送された石原プロ作品。
石原裕次郎さんが亡くなって2年。石原プロの3年半ぶりのテレビドラマ作品となった本作は、戦闘アクションとしてのカラーを強く押し出したスペクタクル作品として企画。
第8班の初期設定も警察組織から独立した傭兵部隊としての色合いが強く、コンバットスーツを多用する(テレビジョンドラマ表紙の通り)などあくまでも「刑事」とは異なる位置づけの存在でしたが作風の変化とともに警察手帳を所持しない単なる刑事という存在へ。
ショットガンで狙撃するという荒唐無稽さはなくなり、重火器はリアルになりました。これは西部警察から5年が経過する間にそれだけプロップガンが進化した証ですね!
ただスコープのないサブマシンガンで狙撃はありました。グレネードランチャー付きのM16で。荒唐無稽…ですね。すでに海外のチャールズブロンソンさんの傑作・狼よさらばシリーズの第4作・バトルガンM16やアーノルドシュワルツネッガーさん主演のプレデターでもお馴染みの銃でした。

服装もコンバットスーツを使用する頻度は減り、当時のバブル景気を背景に流行したDCブランドスーツを着用することが多くなりました。
※後期オープニングタイトルバック
あぶない刑事を彷彿とさせる2人。

古舘伊知郎による第1話、開始前冒頭の解説では西部警察の存在が前面に押し出されており、西部警察からは4年半経過しているにもかかわらず3年半ぶりと誤った解説がされていました。さらに映像は「男たちは燃えた…西部警察フィーバードキュメント」が使用されており、西部警察とゴリラを担当していた日活撮影所専属である東洋音響カモメによって効果音だけは新たにつけられていました。元々の映像は別会社によるSEが付けられていたためです。

ゴリラは『西部警察』の姉妹編的な位置付けを狙って製作されましたが、実際の視聴率は期待を大きく下回ってしまいました。また撮影中の足の負傷により渡哲也さん自身によるアクションシーンが格段に減ってしまったことから、初期のコンバット&コメディ路線から爆破シーンや地方ロケを売り物にした物量アクションへ。

・第1話 ポリス・アドベンチャー
海外ロケ篇である第1話。
みんなグレネードランチャーを装着したM16で武装。フィリピン大統領府全面協力の下、現地の住民がエキストラとして大量に参加したマニラ市街地での大規模なロケーションの他、熱帯雨林おける戦闘シーンの撮影では実銃や軍用ヘリコプターなどが貸し出され、さらに当時の大統領の義弟であるアガピト・アキノさんが倉本たちに協力する元レンジャー部隊指揮官として出演。現地では渡哲也さんらが大統領を表敬訪問するなど、国家的規模の制作体制が敷かれました。
サイレンサー付きのコルトガバメントを撃つ渡哲也さん演じる班長・倉本。レイバンと革グローブは西部警察から継続使用。

しかし視聴率の大苦戦もあり、最終クールである第36話以降は脚本監修に倉本聰さんを迎え人情路線へ。アクションドラマとしての体裁は維持しつつ、言葉を失った妻を献身的に介護する倉本と、病魔に冒された伊達刑事の姿を軸に据え、最終回スペシャルを迎える流れとなりました。

・ゴリラとは?
警視庁捜査第8班(通称:ゴリラ、G-8)は多用・凶悪化し通常の警察の捜査範疇を超えた犯罪に対処するため、第1話の秋葉グループ事件を契機に上層部が極秘裏に創設した刑事部長直属の機関です。その存在は、各所轄の署長クラス以上の警察関係者にしか周知されていません。警視庁捜査一課に属するが、ミッションは刑事部長の麻生から直接下され、いかなる事件にも介入出来る権限を持っています。
伊達刑事の後輩の中田透刑事は港署から本庁捜査一課に栄転しました。これはあぶない刑事の設定を彷彿とさせる内容で、浅野温子さんのポスターを2人が見て、顔を見合わせる演出もありました。
バイクで犯人を追う舘ひろしさん演じる伊達刑事とヘリコプターの班長・倉本。
神田正輝さん演じる風間刑事はオートマチック拳銃を使用。3代目はベレッタM92SB。しかし出来がイマイチでブローバック時の排莢機能がダメ。このカットのように度々弾詰まりを起こしています。これをわからないように演じる神田さんはやはりオートマチック拳銃を使いこなす数少ない俳優さんだと思います。
下記のシーンではベレッタM92SBを連射してますが、撃ち終わった後に撃鉄が戻ってしまっており、撃てなくなってしまってます。こういう不具合が多々ありました。本来は自分でやらない限り、撃鉄は勝手に戻りません。
すでにハリウッドではダイハードやリーサルウェポンでも主役がこのベレッタを撃ちまくってますから日本のプロップガン、特にオートマチックはまだまだ性能が良いとは言えない時代でしたね。

M16を持つゴリラ軍団。
伊達刑事の愛銃はスマイソン4インチ。この作品がリボルバーを持つ最後の舘ひろしさんとなりました。この後の主演作品・刑事貴族以降はオートマチック拳銃・コルトガバメントを持つようになります。神田正輝さんがオートマチックなら舘ひろしさんはリボルバー拳銃の使い手ですね。

ゴリラのメンバーは各々“グリーンカード”と呼ばれる殺人許可証を持ち、メンバーは実行部隊4人(班長1名+メンバー3名)と女性アシスタント1名、他に専従管理官1名と専用ヘリのパイロット1名。経理は独立採算制であり、ミッション毎に麻生の個人名義で必要経費とギャランティ、特別手当が支給されます。

・スポンサー
広告代理店を介さず放送局・スポンサーとの直接契約という手法で製作されていた『西部警察』とは対照的に、本作は代理店大手の第一企画(現:ADKホールディングス)が製作に名を連ねており、当時同社が広告責任社を務めていた三菱自動車工業を筆頭に、東芝、三菱石油(現:ENEOS)による全面タイアップ体制が図られました。そのためマシンは三菱自動車となります。

・ゴリラ軍団のマシンたち
メンバーが集まるアジトは警察署や庁舎ではなく「TOKYO HILLSIDE HOUSE」と銘された施設を使用。屋上にはヘリポートが設けられており、内部には地下の会議室(作戦室)を始め、管理室、射撃練習場、取調べ室、武器庫などが存在してます。所在地は秘密とされており、関係者以外が立ち入る際は目隠しを強要される。本部外観の撮影にはかつて横浜に存在した「山手ヨットクラブ」の建物が使用されており、もっとあぶない刑事の聞き込み先としても登場しています。

三菱自動車から新車のパトカー、ギャランやミラージュが提供されました。いわゆる無傷のパトカーたち。2004年放映の西部警察SPECIALではこれらのパトカーが爆破アクションに投入されました。15年も保存していた石原プロ車輌部に感動しました。

舘ひろしさん演じる伊達刑事のガルウィングスタリオンと谷川竜さん演じる谷川刑事のパジェロ。
セスナの離陸を阻止するガルウィングスタリオン。
神田正輝さん演じる風間刑事の乗るデボネアAMG。

渡哲也さん演じる倉本班長のギャランVR-4。西部警察の日産から一転、三菱自動車の世界。

・西部警察の名残

第2話。アクションは型落ちギャランパトカーとニッサンシビリアン護送車。この白バイと護送車は西部警察の名残ですね。バーパトランプも西部警察からお馴染みの旧式。他にもアルミホイールを装着した430セドリックのパトカーやDR30スカイラインパトカーもこのバーパトランプを付けて登場する回(兄妹の叫び)もありました。
第3話。ここでもシビリアンが登場。これって渡哲也さん専用のキッチンカーでは?と思います。石原裕次郎さん号は現存していたはずなのでこのキャンピング仕様は渡哲也さん号だと思うのですが。

そして倉本班長は最終的には団長・大門になりましたw
当初、大都会PARTIIIの黒岩との差別化のために西部警察の大門は角刈りではなく七三に髪型を変更する話がありましたが、そのまま角刈りとなりました。このゴリラの倉本が本来の西部警察の大門のイメージだったと思います。

コメディリリーフはこのゴリラのぬいぐるみ。


作品としては大激闘マッドポリス'80を彷彿とさせる世界観とアクションでした。

次回は12時間後。テレビジョンドラマ・大都会について書きます。