幸路縁 ~初版0号試写~

幸路縁 ~初版0号試写~

映画、音楽、エンタメなどの楽しい話題を中心に、
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10月末から

平均して約3本ペースで

コンスタントに観たい映画が

倍々ゲームで増えていく恐怖に怯えながらも

 

東京国際映画祭の

チケットを取るだけ取るという

ノープランな映画ライフを送っている今日この頃…

 

今日は

新しい視点から

「ホロコースト」を見つめた作品

ご紹介してみようと思います

 

 

 

ダルデンヌ兄弟の最新作「午後8時の訪問者」で

主演したことも記憶に新しいアデル・エネルが主演を務める

「ホロコースト」映画

 

「ブルーム・オブ・イエスタデイ」です!

 

「若者の恋愛からホロコーストを見つめ直す」という

この映画のテーマの斬新さが、とっても大好きな作品でした…

 

ただ、物語の脚本がこうなってたら

最高だったのになあ…というところもあったので

そのあたりをちょっと考えてみたいなと思っています…

 

まずは、あらすじをご紹介しましょう…

 

あらすじ以降は、ネタバレを含みますので

映画をご覧になる予定がある方は

鑑賞後にご覧いただくことをオススメ致します

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

【あらすじ】

 

「4分間のピアニスト」のクリス・クラウス監督が

ホロコーストという重い題材を

ユーモアや恋愛要素を交えて描いた恋愛映画

 

祖父がナチスの戦犯で

その罪と向き合うためにホロコースト研究に

人生を捧げる研究者のトトのもとに

 

祖母がナチスの犠牲者となったユダヤ人で

親族の無念を晴らすために、ホロコースト研究に

青春を捧げるインターンのザジが訪れる

 

2人は、ホロコーストについて考える学者の会議である

アウシュビッツ会議を企画することになったが

トラブルが続出し、会議は開催のピンチに陥る…

 

元々人付き合いが苦手なトトだったが

ザジの独特なユーモアに生きる力をもらう自分に気づいていき

次第に2人は求め合うようになる…

 

2人は、アウシュビッツ会議を無事に成功させることが出来るのか?

そして、2人の恋の行方はどうなるっていくのか!?

 

作品情報

http://eiga.com/movie/85694/

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

実は、私、この物語に

ちょっと「?」を感じる部分がありました…

 

ホロコーストの歴史については

直視すべき事実として受け止めるべきだと

思っています…

 

今回、私が、「?」を感じたのは

この映画の「物語の構造」です!

 

これを考えるために

ちょっとだけ、脚本の構造について考えてみようと思います

 

一般的に、脚本(特に映画)は

「メインプロット」と「サブプロット」という

2つの物語で出来ていることが多いです

 

例えば、こんな物語をイメージしてください

 

-----------------------------------

 

貨物列車の運転士である男には

結婚したいと思っている女性がいる

 

ある日、男が爆発物を積んだ貨物列車を運転していると

突如列車がコントロールを失ってしまう!

 

このままでは、列車が街で脱線して大惨事になってしまう…

しかも、その先にある街は、男のガールフレンドが住んでいる!

 

男は、暴走列車が街で脱線する前に

列車を止めることが出来るのか!?

 

そして、彼女に思いを伝えることが出来るのか!?

 

-----------------------------------

 

察しの良い方は、もしかしたらお気づきかもしれませんが

これは、あるハリウッド映画のあらすじを

少し変えたものです

 

この物語は…

 

・暴走する貨物列車を大惨事に発展する前に停止させられるか

 

・男はガールフレンドに告白することが出来るか

 

この2つの物語で構成されています

 

このなかで、

「主人公の感情の動きを煽るような出来事・物語」を

「メインプロット」

 

「主人公の感情の動きや成長を伴う物語」を

「サブプロット」

 

というように分けて呼ぶことがあります

 

先ほどの事例では…

「暴走する貨物列車を停止させる」が

「メインプロット」

 

「街を守って、彼女に告白することができるか」が

「サブプロット」と呼ばれます

 

なぜ、このように物語を呼び分けるかというと

この2つの物語をどのように立ち上げて

どのように回収すればいいのかという順番が

提唱されているからです

 

メインプロットとサブプロットには

立ち上げる順番と終わらせる順番の

理想的な流れが存在します

 

物語を立ち上げ方については

今回は関係ないのでカットしてしまうのですが

 

一般的な映画は

「メインプロット」が解決してから

「サブプロット」が解決するという流れをとることが多いです

 

先ほどの事例でいえば

「暴走する貨物列車を停止させる」ことに成功して

列車を無事に降りてから…

「ガールフレンドに告白、結婚へ!」という

流れになる傾向があります

 

これを、今回の作品である

「ブルーム・オブ・イエスタデイ」について考えてみると…

 

この作品のメインプロットは…

アウシュビッツ会議を無事に成功させるられるか

 

サブプロットは

ナチスの血を受け継ぐ男と

ナチに祖母を殺されたユダヤ人の女性が

恋愛を成就させることが出来るか

 

ということになります…

 

そこで、この映画がどのように

この映画の終わり方の流れをみてみようと思います…

 

-----------------------------------

 

・「実は、不感症」のトトとザジは

 ともにホロコーストの歴史に向き合うことで

 愛し合う関係に発展し、夜を共にする

 そして、トトは子供が出来たと告白される…

 

・資金や登壇者のことで揉めまくっていた

 アウシュビッツ会議はなんとか開催される

 

-----------------------------------

 

おぉ~、ハッピーエンドだ!パチパチ!

 

って思った方、ちょっとだけ冷静に観て欲しいのですが…

「メインプロット」よりも前に「サブプロット」が

回収されているのに気づきましたでしょうか?

 

実は、この物語には続きがあります…

 

-----------------------------------

 

・しかし!トトを快く思わない同僚の妨害で

 2人の関係は崩壊し、別々の道を歩むことに!

 しかも、ザジは妊娠していないと告白される!

(トトは、子供の名前まで決めていたのに…)

 

・数年後、2人は偶然再会する

 ザジは、黒人の子供を連れていた…

 その子供の名前は…トトがザジとの間に設けたとされた

 子供につけようとした名前と同じだった…

(ザジ、実はまだトトを思ってるのか…?)

 

-----------------------------------

 

ここで、映画が終わります…

 

「やったぁ~!ハッピーエンドだ!トト、良かったね!」と

エクスタシーを感じて号泣しかけたところに…

まさかの結論がひっくり返るという…

 

かなり下世話な言葉を使った例えで

申し訳ないのですが、せっかく気持ちよかったのに

途中で中折れして萎えちゃう…という感覚に

近いものを覚えました…

 

しかも、ちょっと唐突な設定をねじ込まれての

結論が真逆になる事態…

 

私にとって、サブプロットの展開がひっくり返った時が

緩みかけた涙腺がキュっと音を立てて

ガッチガチに締まってしまった瞬間でした…

 

一度、サブプロットを上手に回収していたのに…

ちょっと、回収するのが早すぎたかなあという印象が

拭えなかったのが正直な感想です…

 

そして、肝心のアウシュビッツ会議(メインプロット)はどうか?

 

ここには、この物語のカギを握るであろう

ナチによる強制収容を実際に受けたユダヤ人の女優さんが

基調講演という形で参加することになります…

 

この女優さんが、出資をゴネたり、やっぱり参加しない!と

言い出して、さんざん物語を引っ掻き回すのですが…

 

参加したからには、この映画を通じて

観客に伝えたいメッセージを語ってくれるんだろうなあと

思って構えていると…

 

冒頭で軽いジョークを入れて

さあ、ここからだ!というときに

画面がブツっ!とブラックアウトしてしまうという…

 

うぅ~ん、メインプロットの回収も

上手くいってないんじゃないかなあというのが

ちょっと強く印象付けられてしまいました…

 

物語に推進力を与えるための設定が

唐突に付け足されてしまっていることも

脚本としてもったいないなあと感じた要因になりました…

 

「ホロコースト×恋愛」という物語の着想や
「脚本構造」という固定概念に囚われないという点では
とっても面白い映画なのですが…

物語の回収のタイミングを間違えてしまったことで
感動が大きく削がれてしまったところが否めず…

今年観た作品のなかで
最も「もったいないなぁ~」という思いを感じた
作品となりました…


とはいえ、何度も書きますが
物語の着想や細かく史実を追いかける姿勢には
頭が下がるほど最大限のリスペクトを
払う価値があるのは確実な作品です!


私みたいな、偏った見方をしなければ
最高に面白い映画であることは間違いありません!

上映規模が小さめで
なかなか観賞しづらい映画なのですが
今後、上映規模が大きくなりそうなので
ぜひ、ご覧になってください!

オススメです!

長くなりましたが
今日は、ここまでにしようと思います…

次回は何について書こうか…
まだ決められていないのですが
気ままに書いてみようと思います…

お付き合いを頂きまして
誠に有難うございました!