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追憶の骨 (bones)

音楽や映像だけでは残せない、あの時の僕たち。


穏やかに晴れた春の休日。

僕は予定より1時間早く家を出て、ひとつ隣のターミナル駅まで歩くことにした。なんだか、歩かないともったいないような、そんな光が差している。

少し遠回りだけど、川沿いの道を歩こう…。

アスファルトだらけの東京郊外、巨大な側溝のような川沿いに、きちんと整備された歩道が続く。

… 桜も、もうすぐか・・。

歩道沿いに植樹された桜は、来週には年に一度の、美しい風景を見せてくれるだろう。



穏やかな空気を感じながら、ゆっくりと歩く。これが僕のペース、肩の力が抜けて、視界が少し広くなったような、こんな感じがいい。

こんな時、ウォークマンはナシだ。

必要なら、必ず出てくる。音の記憶が聴かせてくれる。

しばらく歩いて、聴こえてきたのは、ビートルズの「With A Little Help From My Friends」だ。

What would you think if I sang out of tune ~♪

歌詞は覚えてないので、歌の部分はテキトー、でも、鼻歌じゃない。

ドラムは…、ベースは…、ギターは…、ひとつひとつの音の記憶を組み合わせ、頭の中で再現させていく。

「Sgt. Pepper's~」から続く、イントロ。

ザザザ ザザザ ザザザ ザザザ ×2  ザ~ン、この後に入る微妙なギターのアルペジオ、ビートルズのイントロ作りは天才的だ。

そして、ぶっきらぼうなリンゴ・スターの声、この穏やかな日常感に心が満たされる、春の散歩にピッタリだ。


では、いってみよう~♪

With A Little Help From My Friends / The Beatles  1967

素晴らしいメロディこの曲、しかし音の作りはシンプルだ。

2、3コーラスに連れて音が加わって盛り上がる…、みたいなパターンがないので、出だしの割に、淡々と曲が進行していく。

なぜだろう…。

… そっか、コーラスか…。

ビートルズを「死ぬほど」まで聴いてない僕は、この曲のコーラスの構成を記憶できていない。リンゴ・スターの特徴的な声だけで、コーラスの部分の再現が曖昧な事に気づいた。

僕はウォークマンをセットして、音楽を聴きはじめる。


この曲は3つのメロディでできている。
Aメロ What would you think if I sang out of tune
Bメロ Oh I get by with a little help from my friends 
Cメロ Do you need anybody?

1コーラス
Aメロ リンゴ・スターの独唱×2
Bメロ リンゴ×2 リンゴ+コーラス×1

2コーラス
Aメロ リンゴ → コーラス×2
Bメロ リンゴ+コーラス×3
Cメロ コーラス → リンゴ×2

3コーラス
Aメロ コーラス → リンゴ×2
Bメロ リンゴ+コーラス×3
Cメロ コーラス → リンゴ×2

エンディング
Bメロ リンゴ+コーラス×3
エンド リンゴのみ

… そっか、この曲は、演奏アレンジの変化を抑えて、リンゴ・スターとコーラスの「歌い回し」を聴いてね、っていう曲なんだ・・。


そして家に帰って、こんな動画を見つけた。

Sgt. Pepper's - With A Little Help~ / The Beatles 1967

このライブ・バージョン、コーラスと「歌い回し」がポイントなのがよくわかる。

ちょっとロック調+謎のホーンの「Sgt.Pepper's~」はポール・マッカートニーの熱唱、続く「With A Little Help~」はポップでシンプル、リンゴの歌とコーラスの歌い回し、そしてジョン・レノン全開の「Lucy in the Sky With Diamond」へとつながっていく…。

… やっぱ、スゲーなこれ。

世界初?のコンセプト・アルバム「Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band」

それまで「単に曲を集めただけ」だったアルバムに、音楽の流れを持ち込んだ最初の作品だと言われている。

こうして、あらためて音を追っていくと、その奇抜さと完成度の高さに驚くばかりだ。もちろん、今まで、僕は何回も、こうして「Sgt. Peppers~」を聴いてきた。それでも、聴くたびに、「やっぱ、スゲーなこれ。」と思ってしまう。何回聴いても、その繰り返しなのだ。

先日亡くなった「5人目のビートルズ」、ジョージ・マーティン。

彼が「聴いてほしい」と思っているものを、僕は聴き続けたい。

そんなこと思う、春の散歩だった。


<おわり>