日曜日、午後の憂鬱。 ⑥ | 追憶の骨 (bones)

追憶の骨 (bones)

音楽や映像だけでは残せない、あの時の僕たち。




彼女たちの輪に向かって歩く僕、頭の中は真っ白だ。

「あっ、すいません、失礼しま~す。」

僕にスイッチが入る、「営業モード」、身に着いた職性か…。


少し窮屈そうに人の輪の一部が開いて、座席が持ち込まれる。「どうぞ~」、そんな流れにまかせて、僕は輪のひとりひとりに一度は視線が行くように会釈をしながら、いつもより膝をすぼめて、そっと座席に腰掛けた。

両隣の女性との、過度な接近感がないことを何気に配慮する。

「あら、だいじょぶかしら。」

右隣の40代後半と思しき女性が、「気持ち」、ずれようとする。
少し太めの体型を気にしてのことかもしれない。

いや…、もう気付かれたのか…?




「営業モード」には2種類ある。

ひとつは、「僕は営業モードをしていますよ」という態度を明確に表すパターン。演出、いやこれは演技と言ってもいい。顧客先の役職者に、「立場的優越感」を感じてもらうためのサービス、まぁ、「スマイル0円」と発想は同じだ。


もうひとつ、それは「営業モードが、相手に悟られないことを最上とする」というパターン。これは最終的に「所作」とか「品性」になってくる。自分の気遣い、それ自体が相手を気遣わせ、溝を作ってしまいかねない、そういう配慮だ。

状況を考慮して、二つのパターンを織り交ぜながら仕事を進める。

相手が何を言って、自分は何を返すか…、いつ本題に切り込むか、反応は?いいのか?イマイチか?否定はしない、要望は何か?お茶に手を付けるか…。

営業モード、身に着いた職性…。




やっぱり、女性は気付くのか…。

自分のこんな配慮が、この場に伝わらないよう絶妙に行動して、「この輪の中に入る」という状況を、少しでもスムーズに、印象よく遂行するのだ…。

僕のそんな行動は、あっさりと気付かれたのだろうか…。

右隣の女性、若干まとまりを欠いた髪のウェーブ、スーパーでカートを押しながら、後ろに気付かず突然止まってしまう…、そんな感じがする。


ここは女性10人の話の輪の中。

… 見られている・ ・ ・。

適当な笑顔、体に若干の緊張が走る。


<⑦につづく>