家事のお供に…? | 追憶の骨 (bones)

追憶の骨 (bones)

音楽や映像だけでは残せない、あの時の僕たち。


あ~あ、もう夕方じゃん~。
でも、今日、掃除しなくちゃ…。

毎週、こんな感じの土曜日だ。

めんどくさいけれど、やらなくちゃならないことが
人生にはたくさんある。

いや…、めんどくさいけれど、やらなくちゃならないこと
それ自体が人生なのでは…。

と、わけの分からないループにはまりながら
とりあえず窓を開け、掃除機のスイッチを入れる。

BGMもテレビもなし。
頭の中に呪文のように流れるこの曲…。


You gatta move / Mississippi Fred McDowell 1964

元々は The Rolling Stones で知ったこの曲。
数年前にこっちを聴いてから、やっぱりこっちかな。
Aerosmith のバージョンは1回聴いて終了。

枯れ切ったスライドギター、デルタ・ブルース。
どう聴いても、歌う飲んだくれのオッサン…。

時代も場所もまるで違うこんな曲が意外にも身近にある、
僕が家事するときのテーマソングだ。

§

少し、歌詞のことを考えてみよう。

You gatta move,  You gatta move
You gatta move, child, You gatta move
But when the Load get ready
You gatta move.

始めに4回 " You gatta move "
そして " But ~ " のフレーズがあって、
また  " You gatta move " だ。

But が入っているので、始めの4回の "You gatta move " と
最後の " You gatta move " は意味が違うはずだ。

move というと「動く」、「移動する」といった意味だが、まずはどっちかというとプラス思考、「さぁ、始めよう~」みたいなイメージにする。

the Load は支配者、神様、この行を直訳すると

「しかし、神様の準備ができたとき、あなたは動かなくちゃならない」


これを超意訳して


「お迎えがきたら、おさらばさ。」 仮にこんなイメージにする。


" You gatta move " は何でもいい。
めんどくさいけど、やらなくちゃならないことを考えよう。

やらなくちゃ、やらなくちゃならない。
やらなくちゃ、やらなくちゃならない。
ま、お迎えがきたら、おさらばさ。

何ともいえない、無常感がでてきて、
ふと、僕は掃除する気になる。

 §

英語の歌詞は和訳しないほうがいい。
特にシンプルな歌詞は、イメージが重要だ。
シチュエーションに合わせてみると幅が広がる。

 §

ここから少しへヴィになる。3コーラスの歌詞。

You see that woman that walk the street
You see that policeman up on the beat
But when the Load get ready, You gatta move.

ここで Load を「支配」→「人を支配するもの」→「欲望」とする。
そしてまた超意訳する。

通りをあの女が歩いてるぜ
非番の警官がいるじゃねぇか
ヤりたくなったら、やるしかねぇだろ

 §

時は60年代、場所はアメリカ南部、人種差別問題。
夜毎、黒人嫌いの白人に追われ、殺され、木につるされた…
そういう時代の名残はまだまだあったはずである。

そして4コーラス、1コーラスとまったく同じだが
仮に move を「逃げる」にしてみる。

ただし、4コーラス目の最後は、" You gatta … " 、で終わり。
move は歌っていないように聴こえる。

逃げなくちゃ、逃げなくちゃならねぇ。
逃げなくちゃ、逃げなくちゃならねぇ。
でもその時がきたら必ず…。

最後に白人を睨みつけたりしたら、
ちょっと怖いかもしれない。

 §

この曲をカバーした Stones のセンスはすごい、とは思う。
アメリカで根強く残る人種差別問題を外部から風刺する
イギリスのロックバンド…、というところか。

だが、やっぱり歌詞の意味をいろいろ考えるにつれ
原曲を聴くべきだと思い直させる、それがしっくりくるからだ。

しかしだ…、同じようなデルタ・ブルースの中でも
" You gatta move " の認知度はケタ違いだ。

そういえば、アルバムの1曲目は " Brown Suger " じゃないか。
" Sticky Fingers " がなければ、一生知らなかったかも知れないこの曲。

…ここで最後に何か締めくくりたいところなのだが、
  うまく言葉が出てこない、何ともいえないのだ。

そんな僕はとりあえず、
掃除でもするしかない。


<おわり>