彼女のONE NIGHT STAND ⑪ | 追憶の骨 (bones)

追憶の骨 (bones)

音楽や映像だけでは残せない、あの時の僕たち。


のつづき>

朝まで飲むのは好きではない。
できれば夜のうちに、どこかにたどり着いて
眠りについてしまいたいからだ。

 §

深呼吸をすると、夜の空気が体の中に入ってきた。
すっかりご機嫌になってしまった課長を駅まで送りタクシーに乗せた。

居酒屋で、胸のうちを一通り話し終えた課長は、店員の女の子が
近くを通るたびにくだらない冗談を連発していた。女の子も
それが楽しかったらしく、ヒマを見つけては話をしに来ていた。

女性の魅力は様々だ、この子が天使に見えるよ…、
そう思う僕も、そろそろ酔いがまわってきていた。

 §

駅前で一人になった僕は、再び繁華街へと足を向けた。
幸いにも、朝まで少し時間がある、もう少し今日を続けたかった。

通りに面したラーメン屋は学生であろう男たちで騒がしそうだった。
これじゃダメか…、僕は少し奥にある別のラーメン屋に入った。

ラーメン屋にしては少し広いその店は、家族で入れる店として、
できた当時は賑わっていたのかもしれない。が、今ではそれが仇となって
すっかり時代遅れの感があり、当然客も僕一人だった。

店主には申し訳ないが、大人にはこういう店も必要だ。

ビールと簡単なつまみを運び終えると、無愛想な店員は
店の奥に入ってしまった。店内には有線だろうか、ポップスが聴こえる。
これでいい。そう、こういうときは放っておいて欲しいのだ。

僕はひとりで小さな乾杯をして、グラスのビールを一気に飲んだ。

 §

ひょっとして…、と思い携帯のメールを開く。
やっぱり来てない。予想通り…といえば、その通りだ。

お礼のメールとかないの???
僕はカウンターに座りながら、可笑しくなってしまった。
小声で少し笑ってしまったかもしれない。

「今日は大成功だったよ、ありがとう。」

とメールをしてみると、意外にも、すぐに返事が返ってきた。

「もう寝ちゃいました~。」

なんだそれ~???、と思いながらも、それまで僕の体を
形作っていた緊張感が、一瞬にしてほどけてしまった。

甘美な思いが溢れてくる。

「またね、おやすみ。」、とだけ返事をした。

 §

無愛想な店員を呼ぶと、もう1本ビールを注文した。
余韻も手伝ってか、もう自覚できるほど酔っていた。

有線で流れていた中島美嘉の「STARS」が頭の中を
ぐるぐるしている、いい曲だ。

僕は彼女から来たメールをもう一度見ていた。
ふと気がつく、メールの終わりを示す -END-の文字がない。

カーソルを下へと送る。













「やったね!」


僕は飲みかけのビールもそこそこに勘定を済ませ、
足早に駅に向かうとタクシーに乗り込んだ。

一刻も早く、そう、朝が来る前に
今日を夢に封じ込めてしまいたかった。


<第1部 終わり>

  - 休 憩 -